番外編SS 荷物持ち立ち上がる【三】
「今回は未だかつて無い激しい戦いになると思う。大風呂敷を広げたが、もしかしたらも有り得る。それを考えた上で行動して欲しい」
ここは宿の食堂。この町この宿、そして炬燵をを愛する者たちが集まっている。
「あたしはザップと戦うわ!」
マイが立ち上がる。
「当然私も炬燵のために戦います」
アンも立ち上がる。
「「「「「私達も戦う!」」」」
アンジュたち冒険者四人も立ち上がる。
「妾もこの町は気に入ったからな」
自称魔王のリナも立ち上がる。
「あたしも戦うよ」
妖精のミネアも立ち上がる。ありがたい。やはり全員か。
「チームは大きく二つに分ける予定だ。この町は平地の真ん中にある。俺とアンは打って出て出来るだけ食い止める。あと、領主の軍と義勇軍は町の周りで討ちもらしたものを退治してもらう予定だ」
僕は皆を見渡す。不謹慎だけど、みんな可愛い。出来れば誰も傷ついて欲しくない。
「あたしはザップと行くわ」
僕はマイをじっと見つめる。今回は持久戦になるだろう。しかも無謀極まりない戦いだ。出来ればマイは巻き込みたくない。
「いや、出来ればマイには町の防衛をして欲しい」
「嫌よ!ザップ、置いてかないで!」
なんか懐かしいセリフだが、勘弁して欲しい。
「いや、今回は危険だ。頼むから町にいてくれ」
「危険ならなおさらよ、この世の中で一番安全なのはザップのそばだと思うわ」
マイは僕を見つめる。キラキラした目はまるで宝石のようだ。
「私もそう思います。一番安全なのはご主人様のそばでしょう」
アンの言葉にマイも頷く。そしてアンは再び口を開く。
「それにここにいるメンバーは全員攻撃力が高いです。ですから戦力を最大限に使う方法は突撃あるのみだと思います。待って近づくものを倒すより、飛び込んで手当たり次第倒した方がより多く敵を倒せると思います。それに、多分このメンバーだと、討ちもらしはほぼないと思われるので、町の防衛にまわった者はなにもすることがなくなると思われます」
アンの話を聞いて全員僕を見る。
「防衛戦に参加したい者は手を上げろ」
誰もいない……
「俺と突撃する者手を上げろ」
「「「はいっ!」」」
全員挙手だ。みんな女の子なのに血の気が多いな。
「しょうがないな、わかったよ」
結局、僕達は全員突撃することにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「凄い大軍だな」
僕達は高台からせまりくる魔物たちを見る。地平線の果てまで続いている。何故、何処から湧いて来たのだろうか?
領主には今回の作戦を説明し、騎士団と町の住民と冒険者からなる義勇軍を率いて町の防衛を頼んだ。領主と僕はしっかりと握手して、再会を約束した。
僕は今から戦う仲間一人一人をしっかり目に焼き付ける。命を賭けても全員絶対に守る。
「全員無事に生還する。行くぞ突撃!」
「「「オオオオオーッ!」」」
僕達九人はそれぞれの武器を手に走り始めた。
九人対数十万の魔物の戦いが口火を切った。