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番外編SS 荷物持ち立ち上がる【二】


「私の名前はアイローンボー、逃げる事はありません。なぜなら、この町はこれから未だかつてない未曾有みぞうの好景気に包まれるでしょう!私はこの町が、特に宿の炬燵こたつが大好きです。邪魔する者はみーんなまとめてぶっ潰します!」


 アンは奪ったメガホンを口にあて大声を出す。


「小娘、何を言っている」


 領主が鋭い目つきでアンの肩を掴む。


 さすがに大人数の前は恥ずかしいので僕は収納から目元を覆うマスクをつけると、飛び上がりアンの横に着地する。領主の手を払い、アンのメガホンを受け取る。


「すまんな、こいつは口下手で。言いたい事はシンプルだ!」


 僕は息を吸い込む。


「なにが来ても、ぶっ倒す!!」


 出せる限りの大声をだす。


「なにが来ても、俺達がこの町を守る。町には指一本触れさせねぇ。全てぶっ倒す。お前たちには魔物の素材、魔石を集めて貰う。来る魔物が多ければ多い程この町は潤う。喜べ、魔物を狩って狩って狩りまくってうまいものを食うぞ!」


 やっぱり群衆は呆気にとられている。これじゃ僕はただの変な奴にしか見えないしな。


「アン!戻れ!」


「はいご主人様!」


「一つ頼みがある。前のドラゴン騒ぎ済まなかった。今回の事で帳消しにしてくれ」


 アンは僕達の後ろに走っていき、人がいない所に行きドラゴンに戻った。その巨体を見て人々は恐慌状態に陥る。


「ウオオオオオオオン!」


 アンは咆哮する。少しだけ威嚇効果つきのやつだ。辺りが静寂に包まれる。群衆は恐怖で動けなくなったのだろう。


「安心しろ!俺はこいつの主人だ。こいつより俺の方が強い。魔物が数百万こようがぶっ倒す!」


 僕はハンマーを出して天を突く。出来るだけ分かりやすい言葉で、ドラゴンの視覚的効果。これで町から逃げ出す者はほとんどいないだろう。便利な町だからこのままでいて欲しい。


「きゃー!ザップー!」


 マイが声援を送ってくれる。ダメだって、せっかく仮面して名前を伏せたのに……


「ザップー!」


 誰かが叫ぶ。これも聞いた声みたいな……


「ザップー…」


「ザップー…」


 ボソボソと僕の名前が聞こえてくる。


「あれは最強の荷物持ち、モンキーマンザップだ!」


 誰かが大きな声で叫ぶ。これも聞いた事がある声。


「そうか、ザップなんだな!」


 群集の誰かが叫ぶ。


 領主が僕と肩を組む。そして僕からメガホンを奪う。


「我らも戦う!自分たちの町を守る!騎士たちよ、私に命を捧げよ!例えこの身が朽ちようとも町を守る!魔物などにはこの町を指一本触れさせん!」


 領主も手を突き上げる。


「町を守るぞおおおおおおおおおおーっ!」


『オオオオオオオオオオーッ!』


 この場にいた騎士たちが天をつき猛る。


「ザップーーーーッ!」


 領主が叫ぶ。


『ザップー!ザップー!ザップー!ザップー』


 全ての者が僕の名前を叫び拳を天に突き上げる。僕もそのコールにのってハンマーで天を突く。群衆の視線が僕の後ろにも注がれてるのに気付き振り返る。


 ドラゴンのアンも後ろ足で立ち上がりコールに会わせて右手を突き上げている。


『ザップー!ザップー!ザップー!ザップー』


 僕を讃えるシュプレヒコールは終わりなく続いた。



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