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番外編SS 荷物持ち立ち上がる【一】


「領民の皆には悪いが、我々だけでは持ちこたえる事すら出来ない。町は捨てて王都に向かう!」


 広場の中央には仮設の演説台が作られていてその上には、派手な格好のカイゼル髭のおっさんがメガホンで叫んでいる。周りにはフル装備の騎士たちが控えている。


 確か名前は忘れたけど、この町の領主さんだ。


 その周りを十重二十重と町の住民達が囲んでいる。僕達一行はそれを押しのけて領主の方に向かう。


「時間が余り無い。急いで、町を出る準備をしてくれ!」


 領主は悲痛の面持ちで声を張る。


「なんで、町を出るの?」


 今日は白にピンクの水玉の角当てが可愛いドラゴンの化身アンが領主に問いかける。最近はデフォルトで着膨れだ。


「可愛いお嬢ちゃん、魔物の軍勢数万とも数十万とも言われてるものがここに近づいているんだよ」


「で、どうして町をでるの?」


「え、どうしてって魔物だよ、食われちゃうよね?」


「戦えばいいじゃん」


「あのね、私だって戦いたいのだが、この町の戦力では食い止めることさえできないんだよ。この私の愛する町を捨てるのは忍びないが、王都に避難したら、王国軍と共にいつになろうとも、この地を必ず奪還する!」


 アンへの返答だったものがいつの間にか演説に変わっている。領主の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。


「私が愛する領民達よ、逃げるのでは無い!ただ一時的に魔物共に町を貸してやるだけだ!しっかり奴らの命という利子をつけて取り立ててやる!私について来てくれ!」


『ウオオオオオオオオオオオオオオッ!』


 群衆から割れんばかりの歓声が上がる。感極まって涙してる者もいる。


 こいつはいかんな。住民がいなくなるのは困る。やっぱり僕が出るしかないのか?


「で、ザップどうするの?」


 マイが人混みに隠れて手をきゅっと握ってくる。なんか最近タッチが多い。正直心臓に悪い。


「言うまでもないだろう」


「ご主人様、前にですね私のせいで町の人達が避難したって事ありましたよね、ここでその事を帳消しにしたいので、ちょっと話してきますね。あと、ドラゴンになろうと思いますので、服をお願いします」


 僕はアンの服を収納に入れる。アンは緑色のドラゴンワンピース姿になる。軽く跳躍すると、領主の隣に着地し、メガホンを奪う。少しスカートがめくれたが、また、下着つけてなかったような?


「皆様、逃げる逃げないは自由ですが、判断するのは私の話を聞いてからにしてください」


 アンの適度に高く心地よい声があたりに響く。



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