第十二話 荷物持ちプレゼントする
「ねぇ、ザップ?」
マイが話しかけてくる。さっきまでは疲労で顔が真っ青だったが、少しは回復したみたいだな。
今は地下39層のボス部屋にいる。隣に下に降りる階段がある。ここまで最短距離で来たが、ここから先は厄介だな。
僕は地べたに座ってハンマーを磨いている。武器は血がついたままにしてたら錆びる。錆びると簡単に折れてしまう。磨き用のミノタウロスの腰巻きで丁寧に磨いていく。
「ザップのスキルって、魔物避けと階段探知なの? そういうレアスキルがあるって聞いた事があるわ」
猫耳がピクピクしてる。いつか触ってみたいものだ。
「……違う」
「え、じゃ、どうして敵がいないの? あと、ここって39層よね? ここ数年での最深到達記録ってここよね。確か、フロアボスがボストロルで強すぎて誰も進めないって聞いたわ」
よく喋る奴だな。耳がキンキンする。
え、あれが倒せない?
嘘だろ、軽く頭を一撃だったんだが?
それにボストロルだったのか。ただのデカいトロールだと思ってたんだが。
それより、これから先はモンスターが再び発生してるはずだ。最短距離で行く予定だが、何回かは戦闘する事になるだろう。
これからしばらくはリザードマンが出る。あいつらは厄介だ。飛び道具も使えば、毒も使う。マイにも少しは自衛させないと守り切る自信がない。まあ、一撃死しない限り、エリクサーがあるから大丈夫ではあるのだが。
「武器は使えるか?」
「短剣を一応もってるわ」
期待出来ないな。ダガーなんて肉を捌くのくらいにしか使えないからな。
収納から武器を出す。今までに手に入れた、ミノタウロスの斧、ミノタウロスのハンマー、ミノタウロスのモーニングスター。
「あたしは、荷物持ちで力持ちなのに……」
獣人は力が強いというのは本当だな。マイはふらふらしながらも、斧を両手で持ち上げた。これならなんとか使えそうだな。僕は昔、動かすだけでやっとだったのに。
「十分だ。これを羽織れ」
ミノタウロスの腰巻きの大きめなやつを渡す。マイは小柄なので丁度マント代わりになった。これですこしは防御力も上がっただろう。
「お揃いね!」
マイは少し嬉しそうだ、耳がピクピクしてる。こんな汚いもの貰って何が嬉しいんだ?
「行くぞ」
隣の部屋の階段に向かう。
「え、階段? フロアボスは?」
「倒した」
「エエーーッ!」
そんなに驚く事なのか?
それから僕たちは地下40層への階段を下り始めた。
2023.8.25 ザップはボストロルの名前を知らないはずなので、修正しました。