番外編SS 荷物持ち聖気を求める
「とりゃーっ!」
僕のハンマーは命中するが、文字通り空をきる。朽ちかけた爺さんを見事にすり抜ける。
「だめだ!逃げるぞ」
「了解!」
僕とマイは一目散に逃げ出した。
僕とマイは、ギルドの塩漬けの依頼、カタコンベの死霊退治という依頼をうけて、その最深部に足を運んだが、悲しいことに全く手も足も出なかった。
いた魔物は死霊スペクターこっちの攻撃は全く効かず、あっちは念動力と魔法でがつがつ攻撃してくる。倒す方法は、高位の神官のターンアンデッドで昇天させるか、聖属性の攻撃でダメージを与えていくしかない。
少女四人冒険者の神官戦士のミカを連れていけば一発で退治してくれると思うが、それはなんか負けの気がする。自力で倒したい。これから冒険者として生きて行くためにも苦手な魔物は克服したい。
「あたしは、ミカに修行つけて貰うけど、ザップはどうするの?」
ミカの姿が頭に浮かぶ。小柄で黒いポニーテールで可愛らしく、胸が極端に大きい。僕もマイと一緒にミカにコーチして欲しい所だけど、つい胸に目がいってマイにからかわれたりするのは勘弁してほしい。
「僕は町にある神殿で修行するよ」
「えー、一緒にミカに教えて貰おうよ。ミカ可愛いし、神殿に行くよりは楽しいと思うよ」
可愛いからあなた、やきもち焼くでしょ。口から出かけた言葉を飲み込む。マイは最近僕に容赦ないから正直危険だ。
僕はマイと分かれて、町の神殿へ行く。
なんか瞑想したり、ありがたい話を聞かせられたり、苦痛の時間がすぎていく。神殿の教育係はおっさんおばさんばかりで地獄だ。変な見栄をはらず、ミカの下で修行すれば良かった。後悔しながらもいろいろ受講し、なんとか少し聖気を使えるようになった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「かかってこい!」
朽ちかけた爺さんの容貌のアンデッド、スペクターに僕は指を突き付ける。
修行の成果で僕は指先に聖気を集める事が出来るようになった。
「ご主人様、頑張ってください!」
アンが僕を応援してくれる。今日は僕の聖気デビュー記念日。アンとマイも連れてきた。
「ホーリー・クロウ!」
僕は10本の指先に聖気を纏わせ、それでスペクターを引っ掻き少しづつ削って行く。僕の修行の成果をみよ!
「おお、ご主人様凄いです。けど、なんか、猿が木を引っ掻いてるみたいですね」
「………」
アンの辛辣な言葉が僕の胸を抉る。
「まだるっこしいわね。ホーリーウェポン!」
マイの持ってるミノタウロスの斧が白く光り、スペクターを一撃の下に切り裂き消滅させる。
な、な、なんとっ!
僕はやっと指先に聖気を纏えるようになったのに、マイは溢れんばかりの聖気で斧を纏っていた…
資質の差か…
……………悲しい……
「ザップー、ザップも凄いわよ!」
マイの優しさが、さらに僕の心を抉った…