番外編SS 荷物持ち温泉に行く
「ドラゴーン、ちよぴっとブレス♪フーッ」
ドラゴンの化身アンの、燃えさかる吐息がゴブリンをこんがり焼く。炬燵の炭火をブレスでコントロールしてるうちに編み出したらしい。
「ていやっ!これでさいごよっ♪」
マイの斧が残ったゴブリンの首を刈る。
動くものがいないことを確認し、僕たちは討伐証明になるゴブリンの右耳を集め洞窟を後にした。
流れのゴブリンでどっからか追い立てられて来たのか、10匹ほどいたが、全員痩せていてボロボロの装備で、金目な物は何一つ持ってなかった。
「はずれだったな」
「うん、はずれだったわね♪」
「ご主人様、そういう事もありますよ♪」
二人の声は弾んでいる。そんなに嬉しいのか?
なぜかと言うと、今回のゴブリン討伐はついでに近くにある天然温泉にも行く予定だからだ。さすがに全裸は厳しいので、水着を皆持ってきてる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうした、楽しみじゃなかったのか?早くこいよ」
「うう、ザップー…」
マイは真っ白のセパレートタイプの水着だ。ぎりぎり下品じゃない程度に布面積が少ない。まじまじと見ることはなかったので余り意識したことがないが、マイはかなりプロポーションもいい。形が良く少し大きめの胸が少し小さなブラジャーからこぼれ落ちそうだ。ショーツも少し小さくてくびれたウェストと白く伸びる足がよく見える。
「………ッ」
僕はつい見とれてしまった。
「ご、ご主人様ぁ……」
アンはピンクのフリフリが沢山ついたワンピースタイプだ。アンもスタイルがいい。出るところは出て、へこむべき所は引っ込んでいる。可憐な水着と相まってとっても可愛らしい。中身の残念さを知らなかったら心惹かれてしまいそうだ。
二人は怖じ気づいたのか、尻込みしてなかなか入って来ない。
「体冷えるぞ、早くこいよ」
「ザップー、何で平気なの?」
「そりゃ、天然温泉だから、動物もすこしは入ってくるさ」
僕は隣に座ってる熊の頭を撫でてやる。目を閉じて気持ちよさそうだ。可愛い奴だ。
「少しじゃないわ!動物芋洗い状態じゃないの!」
温泉には先客がいた。僕の隣には気持ちよさそうに熊とでっかい鹿が数匹浸かってる。あと、猿が10匹位と猪がまた数匹大人しく目を閉じて温泉を楽しんでいる。まあ、みんな温泉が好きと言うことだな。よきかな、よきかな。
「マイ姉様。私は行きます。所詮動物。怖くないです!」
アンは目を閉じて恐る恐る入ってくる。端の所に腰までちょこんと浸かる。こいつ、魔物は狩りまくるのにもしかして動物が怖いのか?でっかいドラゴンのくせに。
「動物と混浴……動物と混浴……」
マイは虚ろな目で、呪文のように呟いている。
「動物なんて居ない!あるのは石よ岩よ!」
マイは目を見開くと恐る恐る入ってくる。
「すみません、すみません」
マイは猿を押しのけながら僕の方に近づいてくる。マイ、猿に謝ってるよ。
猿たちはマイが気に入ったみたいで、マイを取り囲む。
「マイ姉様、猿にもてもてですね」
猿のいたスペースに入りアンは気持ちよさそうに肩までつかっている。
「あたし、なんで、猿に好かれるのよぉ、キャッ!」
おっ、猿ナイス!
一匹の猿が手に白い布をひらひらさせながら温泉から飛び出して行った。
マイは両手で胸を隠して温泉に浸かる。
「ザップー、取り返してー……」
「難しいな、山では猿に追いつけない。戻って来るのを待つしかないな」
「うううっ」
僕は収納からマイの予備の水着を出して渡した。
僕たちは動物たちと温泉をゆっくり堪能した。因みにマイの水着は帰る時に木にかけてあった。