番外編SS 荷物持ちの夕方
「ザップー、晩ご飯よ」
アンの部屋にマイが入ってくる。マイの格好は長袖長ズボンだ。ガードが堅い格好になったのはいいが、なんというか、もう少し自然にしてほしかった。チューブトップと短パンから長袖長ズボンに変わったから、会う人会う人突っ込んできて、その都度マイが「ザップが余り肌をみせたら嫌らしくて」とか言うので、僕がからかわれる。勘弁して欲しい。
もうそんな時間なのか。僕は読んでた本にしおりを挟み収納にしまう。
他の炬燵の住民たちもごそごそと出てくる。
まずはドラゴンの化身アン炬燵から出る時に更に着込む。本当に寒いのが嫌なんだろうな。
次は妖精のミネア。流していた緑の髪を紐で一つにまとめて出てくる。お気に入りの僕から借りた本を、丁寧にアンの座ってた所の裏にある本棚に置く。こいつは破天荒だけど、妙に細かい所は気が利く。炬燵の上に本を置いてたら反るのが嫌って言ってた僕の言葉を覚えてるんだろな。
「ルル、ルルちゃん!」
「はいっ!お姉様!」
魔法使いのルルが炬燵から飛び出す。凶悪な胸がぶるんぶるん揺れる。見ないようにしないと、マイからのつっこみが怖い。
ルルは本に夢中で周りが全く見えて無かったみたいだ。本を本棚に入れてる出てくる。
「マイ姉様、申し訳ございませんでした」
ルルは深々と頭を下げる。アンジュたち冒険者パーティー四人はマイに絶対服従の狂信者みたいになってる。マイに対して従わないのを見た事がない。
「失礼します」
マイの後ろから掃除用具をもったメイドが出て来て、アンの部屋に入る。この晩ご飯の時間が掃除とベッドメイクの時間になっている。あと、炬燵と暖炉の掃除もこの時間に行われる。
余談だけど、僕たちが初めてこの宿に来た時には従業員は私服だったのが、何時の頃からか、女性はメイド服、男性はスーツに変わっていた。なんかどんどんサービスの質も上がっている。儲かってるのかな?
この宿に居着くようになったのは、寒がるアンのためにわざわざ主人が部屋を改造して掘り炬燵を作ってくれたからだ。料金も良心的で月払いで三部屋借りているのだが、このそばの他の宿で部屋を借りるのと余り変わらない料金だ。
正直儲かってるのか疑問だったので、主人に聞いてみると、僕たちの場合は食費でかなり儲かってるということで納得した。アンがしこたま食べるからな。
「遅いぞ、待ちくたびれたぞ」
食堂の僕たちがいつも使うテーブルには既に先客がいた。金髪ツインテールの少女、自称北の魔王リナと、冒険者の戦士アンジュ、神官戦士ミカ、野伏のデルだ。リナ以外は私服だ。
「リナ、お前寒くないのか?」
「当然、鍛えているからな!」
相変わらずの金色のビキニアーマーだ。童顔で美少女なのに、残念なことに頭のおめでたい痴女にしか見えない。
「ザップ、お前の分も特別に作ってきてやったぞ、お揃いだ」
リナが席についた僕に紙袋を差し出す。
「お前、今どっから出したんだ?」
リナの装備はビキニアーマーだけだ。多分収納スキル持ちだと思うけど、自分との違いを知りたい。
リナは立ち上がると、ビキニアーマーのパンツの方に手を突っ込んでハンカチを出した。
「妾のパンツには収納能力を付与してあって手を入れると収納から物をとりだせるのだ」
『…………』
結構物怖じしないここのメンバーが何も言わない。僕を皆が見てる。
「あのね、リナちゃん、パンツから物を出したら、かっこ悪いとおもうよ」
「何を言ってる。ブラジャーからだったら取り出しにくいだろうが。それにパンツだったらおしっ、ムグッ」
僕はリナの口をふさぐ。これ以上は人としてだめだ。
「ザップ、おぬし妾の事を……初めて殿方の手に…」
リナはぱあっと赤くなる。だめだどつぼだ。
「マイ、助けてくれ」
「知らない」
マイはそっぽを向く。
「パンツから物を出して何が悪いのだ?部下たちは褒めてくれるぞ?」
リナは腰に手をあててどやってる。裸の王様か、実力社会の弊害だな。誰が何を考えて収納スキル持ちのパンツを作ったのであろうか?あ、もしかして介護用?
協議の結果、スカートをはいたらまだましだろうということで落ち着いた。あと、リナはマイの下で良識を学ぶ事になった。
「なんじゃこりゃあ」
僕は紙袋の中を見てつい叫んでしまう。金のブーメランパンツだ。お尻は紐だ。
「これで妾とお揃いだ。オリハルコン製だ」
「いるかこんなもん!」
突き返そうとするのをマイが制止する。
「全属性耐性、精神攻撃無効、全能力上昇、取得経験値10%上昇、自動回復、収納小、金剛不壊、固定化?やばいわね、神器?あり得ない能力よ」
「なに?そんなに凄いのかこのパンツ?」
「多分、世界一のパンツよ、固定化って何?」
「自分の意思でしか着脱できないスキルだ」
「おお、それは便利だなすごいな」
「当たり前だ。魔王が戦いの度に裸になったらかっこ悪いだろう。それをつければどんな攻撃を食らっても威厳を保てるぞ」
ある意味、金のブーメランパンツは裸より威厳は無いような気がしたが、それは口にしなかった。
その後食事が運ばれて来たが、僕たちのテーブルはずっと騒がしいままだった。
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