番外編SS 荷物持ちの朝の日課
今日は仕事はしない!
冒険者は体が資本。最近は週に一日はしっかり休む事にはしている。当然迷宮攻略や、長期拘束される依頼を受けた時には無理だけど。
起きて外の井戸に行き水を汲んで顔を洗い口をゆすぐ。持ってきたタオルで顔を拭き、まずは朝の日課のハンマーの素振りをすることにする。
「おはよう。ザップ」
中庭には先客がいた。マイだ。寒いのにチューブトップとショートパンツという服装だ。前はシャツだったのに最近はチューブトップばかりだ。何でだろう。
「おはよう」
マイにこたえる。マイは今日も巨大なミノタウロスの斧を素振りしている。周りを見るといろんなとこから視線を感じる。朝の日課の素振りにはギャラリーがいつの間にか定着している。少女が巨大な斧を振るう様は圧巻だからな。
僕は収納から愛用のミノタウロスのハンマーを出し素振りを始める。
素振りしながら辺りを見るが、見てるのは男ばっかりだ。最近マイは外に出るとき以外はミノタウロスの腰巻きをマント代わりにしてないので、肩もお腹も丸出しだ。なんか、マイが好色な目で見られてるような気がして嫌な感じがする。
「なぁ、マイ、何て言うか最近露出が高いんじゃないか」
「そうかな?暑くなるからこれくらいがちょうどいいわ。急にどうしたの」
「何て言うかな、周りからいやらしい目で見られているような気が……」
「ザップは、あたしがいやらしい目で見られるのが嫌なのね。ふーん。クスクス」
マイは耳をぴこぴこしながらいたずらっぽく笑う。
「解ったわ」
マイは素振りを止めると中庭から出ていった。
「おはようございます。ザップ兄様」
中庭に元気のいい声が響く。赤毛にショートヘアの少女アンジュだ最近仕事が無いときは素振りにやってくる。
「いつもの借りていいっすか?」
僕は巨大ミノタウロスの斧アンジュ用を二つ出す。アンジュは最近二刀流に目覚めたらしく、巨大な斧二本で素振りをしてる。
アンジュはマントを脱いで畳んで置く。こいつも今日はチューブトップとショートパンツだ。強弱のしっかりした体型がよく分かる。咄嗟に目を逸らしてしまう。
アンジュは斧を受け取ると素振りを始めた。
「おはようございます」
次は神官戦士のミカだ。小柄で黒髪をポニーテールにしてる。斧を一本出して渡す。マントを脱ぐとこいつもチューブトップにショートパンツ。でっかい胸がはみ出しそうだ。その格好流行ってるのか?
「おはようございます。ザップ兄様」
エルフのレンジャーのデルだ。金髪のロングヘアだ。こいつも同じ服装。明らかにみんなで示し合わせているのだろう。こいつはあんまり胸が大っきくないので、激しく動くとずれそうだ。斧を渡す。
庭の隅の大地が光り魔方陣が現れる。そこには自称北の魔王のリナが現れた。幼さが残る顔で髪は白金でツインテールだ。
「ザップ。いつものだ」
こいつは金のビキニアーマーだ。こいつはでっかい剣を持ってるが、それより僕のミノタウロスのハンマーの方が重いそうだ。
『せいっ』
『せいっ』
『せいっ』
僕たちは一心不乱に素振りをする。気が付くと、窓という窓から屋上に至るまでギャラリーが詰めかけている。そりゃそうだな。美少女が薄着で素振りをしてるって聞いたら僕でも見に行くな。
「ザップーお待たせ」
マイがやって来る。恰好が長袖長ズボンに変わっている。
「マイ姉様、皆で合わせたのになんで今日はそんな格好なんすか?」
アンジュが素振りを止めて、マイに近寄る。
「えっとね……ザップが……他の男性の前で余り肌をさらさないでほしいって……キャッ」
マイは顔を覆う。
「マイ姉様、それについてもっと聞かせてほしいっす!」
アンジュが食い気味にマイに詰め寄る。
「あ、ザップ兄様、顔真っ赤です!」
デルが僕の顔を指差す。
少女達は素振りを止めてしばらく会話に花を咲かせた。
僕はそのよこで無心にハンマーを振るう。このように、朝の日課の素振りは心も鍛えてくれる……
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