番外編SS 荷物持ち山椒を求めて意外な人物に会う【後編】
「お前はっ!」
僕は目を見張る。ぼさぼさの金色の髪、無精髭の生えた整った顔。
見知った顔だ。
大陸有数の冒険者パーティー『ゴールデンウィンド』のリーダーにして、勇者の名を冠した者、アレフがそこにはいた。
「ザ、ザップ!!」
アレフの顔は驚愕に見開かれる。
こいつ落ちに落ちて盗賊の用心棒をしているのか。
「ご主人様、こいつ最弱ドーピング、パンツ勇者のアレフじゃないですか?装備の強さを自分の強さと勘違いしてご主人様に雑魚のくせに生意気にも刃向かった」
アレフは硬直している。もしかしてアレフのくせに傷ついたのか?
「先生、知り合いなんですか?知り合いでもやっつけて貰わないと困りますよ」
スキンヘッドはアレフの後ろに隠れる。
「知り合いと言うよりも、むしろ仇だ。首領安心しろ、全員まとめて地獄へおくってやる」
アレフはゆっくりと剣を構える。
「ディバイン・サンダー!」
アレフの振るった剣から雷が発生する。これって麻痺する雷だったよな。僕は全てを収納にいただく。ゴチです。
「フッ、相変わらず、ばかのいっちょ覚えの収納魔法か……」
アレフは失笑する。なんだその自信は?
「お前に負けてから、悲惨な日々だった。どこに行っても仕事は無く、仲間もどっかに行って、俺は途方にくれた。金もなく、あるのはお前への復讐心のみ。やっとたどり着いた先が盗賊の用心棒。笑いたいなら笑うがよい」
アレフは剣を投げ捨てる。
「キャハハハハハハッ。笑いたいなら笑うがよいって、言われなくても笑っちゃうわよ。勇者が盗賊の用心棒って、転落人生の見本みたいね」
アンが口に手をあてて笑う。腐っても、もとは皆の希望を一手に背負ってていた勇者。あんまり虐めないで欲しい。
「フフッ。俺が何もせずに生きてたと思うか?」
アレフはアンの事をシカトする事にしたみたいだ
「俺は考えた。どうすればお前の収納のスキルを封じられるか」
アレフは不敵な笑み浮かべると、大きく後ろに飛びすさる。
「俺の新魔法。攻防一体。焼き尽くせバーニング・ボディ」
アレフの服が燃え尽きる。
全裸に炎を纏ったアレフが僕の前に立ち塞がる。
「どうだ!凄いだろう。これでお前は俺から何も奪えない!」
「キャアアアッ!変態!」
マイが悲鳴を上げる。
「うわっ!汚っ!」
アンは勇者の勇者をガン見している。
とうとうアレフは勇者を止めて、ただの変態に成り下がったのか……
「うわっ!何も奪えない!凄い!さすが勇者」
せっかく頑張ってるので一応驚いてやる。
「ハーッハッハッハッ。勇者と荷物持ちの違い見せてやる!」
確かに違う。僕は人前であんなに堂々と裸になれない。ある意味真の勇者だ。
ゴツッ!
面倒くさいので、とりあえず死なない程度に拳骨をくれてやる。少しだけ熱かった。死なないように、めっちゃめちゃ手加減した。アレフは一撃で動かなくなる。
ついでにスキンヘッドも軽くどついて意識を刈り取ってやった。
そして、アレフとスキンヘッドをぐるぐるの簀巻きにして荷馬車に放り込こむ。最初に倒した雑魚どもついでに荷馬車に積む。良かった、スペース的にぎりぎりだ。
そうこうしてるうちに、町に着き、めでたく山椒を大量に手に入れる。盗賊共を官憲に引き渡すと結構な額になった。
惜しむらくはいつの間にかアレフには逃げられた。他の盗賊たちと同じように縄で縛って猿ぐつわをしてたのだが、移動してる最中の目を離した隙に居なくなっていた。おそらく何らかのスキルだろう。勇者を舐めていた。もっと警戒しておくべきだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「うん。うまい」
僕はスープまで飲み干す。
「やっぱり、ここの担々麺は最高ね!」
マイは幸せそうだ。ゆっくり蓮華ですすってる。
「ご主人様、おかわり!」
儲けたので、好きなだけ食べろとアンに言ったら、もう20杯目だ。いつもながら食費がかさむドラゴンだ。
こうして無事にまた担々麺を収納に100食キープすることが出来た。これで一安心。いつでもどこでも心置きなく食する事ができる。ごちそうさまでした!
みやびからのお願いです。
「面白かった!」「続きが気になる!」などと思っていただけたら、
広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、
ブックマークの登録お願いします。
執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。