第十一話 荷物持ち歌う
気持ち悪いと言われてショックを受けて削除しようかと悩んだのもいい思い出です。2022/1/17
「ねえ、あなた、どこに行くの?」
猫耳少女は小走りで僕の横に並ぶ。
これから、あなたと呼ばれ続けるのは何か抵抗があるな。
「ザップだ……」
「じゃあ、ザップ、どこに行くの?」
「ついてくれば解る」
「助けてくれてありがとう」
「ああ……」
別に成り行きだ。助けるつもりは無かった。
「あたしの名前はマイよ。マイマイって呼んで」
よく喋る奴だ。面倒くさい。あと、歩くのが遅すぎる。大きなリュックのせいか?
「リュックを貸せ」
「え、何で? マイは荷物持ちだよ」
「遅すぎる。持ってやる」
マイは渋るが、強引に荷物を奪い収納に入れる。
「え、荷物が消えた? あの中には着替えやお水が入っていたのに……」
「必要な時は言え。出してやる」
「え、もしかして、ザップって魔法の収納持ってるの? いいなぁ……」
マイは深いため息をつく。
「あたしもそれがあればもっと稼げたのに……」
もっと稼げた? そうだよな、僕がもっとしっかりしていれば、今までも上手くやれたはずだ。
僕は元来た道を戻って行く。ここまでモンスターを殲滅しながら来たので、何とも遭遇しない。
地下31、32、33層と下っていく。マイが疲れてきたみたいなので、34層へと下る階段の部屋でしばらく休む事にした。ここで問題が起こった。
「お花を摘みに行きたいわ……」
マイが唐突に訳の解らん事を言う。
「花などないが?」
「………」
マイは押し黙る。僕は気にせず立ち上がる。そろそろ行くか。
「お花を摘みに行くって……ト、トイレに行きたいって事なの……」
マイがたどたどしく言葉を紡ぐ。そうなのか?
【ゴールデンウィンド】の魔女ポポロと聖女マリアは1度もそんな言葉を使った事がなかった。いつもストレートにトイレにとか、酷いときはおしっこに行くとか言ってたし。
「そうか、階段の途中で待ってる。終わったら来い」
僕は立ち上がり、下に行こうとする。
「待って、置いてかないで!」
マイは僕の手を掴む。暖かくて柔らかい。女の子の手を触ったのは何時ぶりだろうか。
「待っている」
僕は手を振り放す。
「一人にしないで! また置いていくつもりでしょ!」
マイは再び両手で僕の手を強く握る。見ると涙ぐんでる。
「どうすればいい……そんな趣味はない」
「そこにいて、後ろ向いてて」
涙目で僕を見ている。猫耳が力無く垂れている。困ったものだが、そんな顔で見られたらどうしようも無い。
「わかった……」
僕は後ろを向く。衣ずれの音がする。
しばらく静寂が辺りを支配する。
「まだか、階段でまってるぞ」
「お願い! 行かないで!」
面倒くさい奴だな!
「やっぱり恥ずかしい……」
僕は階段に向かって歩きだす。
「待って! 歌って! 大声でなんか歌って!」
何で歌わないといけないのだ。時間がもったいないからやむなしか……
「進め! 進め! 勇気をもった冒険者! いつかその夢その手に掴むまで!」
僕は昔吟遊詩人に教えて貰った冒険者の歌を大声で歌った。
僕は今、何をしているのだろうか?
ちなみに、ザップの歌はヒゲ○ンのイエスタ○イのような曲です。脳内変換お願いします。
みやびからのお願いです。
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