ガーリックトースト
「これを混ぜるのか?」
僕はマイから泡立て器が刺さったボールを受け取る。中にはバターと刻んだパセリとかが入っている。
喉が渇いてなんか冷たい飲み物が欲しくてキッチンに来たら、晩ご飯の用意をしているマイに手伝いをたのまれた。お安い御用だ。
「うおおおおおおおおおおおおおーっ!」
僕は力の限り泡立て器を回す。
「ちょっと、ザップ、壊さないでよ」
「大丈夫、加減はしている」
僕の力もあり、一瞬にしてボールの中身はきれいに混ざる。
「ありがとう、ザップ。すご、バター溶けてる」
「まあな、多分全力でやったら火がつくな」
「そこまでしなくてもいいわよ。じゃこれ冷やさないとね」
「なんなんだソレ?」
「ブルゴーニュバターよ。バターにパセリの微塵切りとニンニクの微塵切りとあと塩と黒胡椒で味を調えたものよ。エスカルゴバターとも呼ばれてるわ」
「ん、エスカルゴ? エスカルゴってたしかかたつむりの事だろ? マイマイだろ」
「そうよマイマイよ、で、あたしはマイ」
なんか昔聞いた事があったようなネタだな。
「で、なんでかたつむりが関係あるんだ?」
「んー、確か西方のブルゴーニュって地方でエスカルゴを食べる時に使われてる調味料だからエスカルゴバターって言われてるそうよ」
そう言うと、マイはその白くて長い指で泡立て器についたバターを拭って舐める。なんかちょっとエロいと思ったのは僕の頭の中がエロいからだろう。
「うん、良い感じね。ザップお腹空いた?」
「ああ、少し」
「そう言うと思ってオーブン暖めてたのよ」
マイはバゲットを取って切り、4切れにさっきのブルゴーニュバターを塗ってオーブンに入れて砂時計をひっくり返す。確か丁度1分の奴だ。
「はい、完成」
砂が落ちてオーブンを開けるとボワッとニンニクの美味しそうな匂いがする。
「ガーリックトーストよ。ザップが3つ、あたしが1つね」
有難くいただく。うん、美味い。表面はカリカリしててパセリでバターがさっぱりしている。パセリってそのまま食べるのはあんまり好きじゃないが、刻んだらいい調味料になるな。
「ありがとう。美味しいよ」
「うわ。ご主人様たち何食べてるんですか?」
普段炬燵から出てこないアンが着膨れてキッチンに来た。さっきの匂いを嗅ぎつけたのか?
「しょうが無いな」
僕はアンに2切れあげる。まあ、ご主人様って呼ばれてるからしょうが無いな。もっと食べたかったけど。
「けど、なんで、ブルゴーニュバターを塗るのにガーリックトーストなんだ? ブルゴーニュトーストやエスカルゴトーストじゃないんだ?」
「そうよね。ガーリックトーストに塗る物とブルゴーニュバターってほぼ同じなのになんでだろうね? 分かんないわ。今日はこれを晩ご飯に使うから楽しみにまっててね」
晩ご飯は鶏モモ肉にこのバターを塗ったものだった。それもとっても美味しかった。ブルゴーニュバター、簡単に出来て有能な調味料だな。なんでそんなに広まって無いんだろ?
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