ブライダルガーディアン
「失礼します」
僕は円卓の一番上座、新郎新婦がいるテーブルを上としてテーブルの一番上の人から料理を出していく。僕が持ってる皿は3枚。お客さんの左側から料理を出す。これはだいたいの人が右利きだからよく動かすのは右手だからだそうだ。あと、料理を出される人に「失礼します」と言って、必ず料理を出すのを知らせるとの事だ。これは急にお客さんが立ち上ったりしてぶつかるのを防ぐためだ。あと、料理を決してお客さんの荷物やお客さん自身の上を通さない。もし、粗相した時にお客さんやお客さんの荷物を汚さないためだ。
なんかしち面倒くさいが、これも仕事。何事も全力でこなすのがプロフェッショナルってもんだ。
ちなみにこの手のルールは仕事前に少し時間を取ってリーダーの人から教えて貰った。常に笑顔のお姉さんで、不器用な僕に手取り足取り教えてくれた。マイとアンも一緒に来たんだが、マイは即上達、アンは即離脱した。
僕はエレガントに料理を提供する。
「おい、震えてるぞ」
料理を出された兄ちゃんが不機嫌そうに言う。明らかに僕より若造がタメ語かよ。初対面の人にそんな感じの奴の精神構造がわからない。
「よ……」
余計なお世話だ! といいそうになったのを飲み込む。
「よ? アンタ、なにか言おうとしたの?」
なんかババァがこっちを見る。スルーしろよ。お節介焼きか? イラッとする。我慢我慢だ。
「よ、よいお日取りで……」
「あ、ああ」
若造が頷く。なんか変な空気の中、料理を給仕する。ありがとう若造、お前のおかげで緊張が解けたよ。さあ、次の料理持ってこよ。
今僕が何してるかと言うと、結婚式の披露宴での警備だ。多分王国で3本の指に入る高級ホテルの宴会場兼レストランだ。この式の新郎さんは、僕の友人でこの国の国王であるポルトの友人で聞き流したから忘れたけど、なんとか侯爵か伯爵だそうだ。その貴族さんはこれまで遊びまくってたらしく、もしかしたら結婚式で襲撃されるかもって事でポルト奴から警備の依頼がきたのだが、即断ってやった。遊びまくってるってポルトみたいな奴だな。結婚式をぐちゃぐちゃにされればいいよ。むしろ僕が襲撃しようかと思ったくらいだ。けど、いつも通り金の力とマイが結婚式見たいという鶴の一声でここにいる次第だ。
ポンッ。
肩を叩かれる。運ぶ料理が出てくるのを厨房で待っている。料理人が料理を分担作業で盛り付けたりしている。
「ザップ、良くなってきたわね」
マイだ。メイド服がよく似合う。個人的にはもっとスカートが短い方がいいな。
「ああ、隣の店でやってたからな」
「ふふっ、さっきまでガッチガチだったわよ」
「気のせいだろ」
「そうかもね。ザップ、服似合ってるわよ」
そう言うとマイは料理を取りに行った。そうなんだよ。僕はオールバックにベストに蝶ネクタイ。自分で言うのもなんだが鏡の前で見惚れてしまった。僕の鍛え上げられて引き締まった肉体が良い味出している。いや、そうじゃなくても、男なら誰でもこの格好したらイケメン度30%増しだな。ちなみにマイも可愛さ50%増しくらいだしな。
そしてつまらない事に襲撃もなく、つつがなく終わった。普通の給仕の労働報酬にガーディアン料を貰ったんだが、給仕の給料の高さに驚いた。3時間くらいで駆け出し冒険者の1日の稼ぎを優に超える。
「ザップ、またこんな仕事あったら受けよう」
帰りがてら、すぐにマイはそう言う。楽しかったんだろう。
「ああ、そうだな」
けど僕は気もそぞろだった。なぜなら僕の担当したテーブルのお客さん、しかも若くて可愛い女性から住所が書いてある紙切れを貰ったからだ。
どうしよっかなー?
私の今朝見た夢で、ザップさんは一生懸命料理を結婚式で運んでました。で、この話です。寝てる時までザップにつきまとわれてる私って一体……まあ、助かりますけどね。
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