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番外編SS 荷物持ち薬草採取に行く


「おおお、さみいー」


 ついつい口にしてしまう。何故だろうか?寒いと言ったら余計寒くなる気がする。


 僕は今何をしてるのかというと、雪山の麓の雪の下に生えてるという薬草を採りにきている。

 貴重な薬草でどうしても欲しいという人がいるのだが、山には飛龍ワイバーンが出るという噂があり誰も引き受ける者が無く、値が吊り上がっていたので、ついつい引き受けてしまった。依頼料を分けたくないので今日は一人で来ている。さすがに、マイのひもは勘弁だ。


 雪を収納に入れながら掘り進む。薬草があると教えてもらった所定の位置のはずだけど、範囲が広いのでなかなか見つからない。薬草は地表に貼り付くように生えてるらしい。


 どんどん収納に雪がたまっていく。なんか使いみちがないかと考えるが、夏までとってて涼しむ事くらいしか思いつかない。そんな事を考えてるうちに薬草の密集地を掘りあてた。


「クゥエエエエエエーッ」


 耳をつんざく不快な叫び声に顔を上げると、上空に巨大な鳥のような影。太陽から目をそらしてよく見るとトカゲにコウモリのような羽の生えた生き物、飛龍ワイバーンだ。僕の真上を旋回している。


 別に害はないので、僕は薬草採取を始める。


 ゴウッ!


 風を切る音に振り返ると、ワイバーンの吐いた火の玉が飛んでくる。とりあえずかわすと、地上に触れる前にそれは消えた。


「面倒くさいな、オラッ」


 収納からドラゴンブレスを出してワイバーンに放つ。ブレスはワイバーンを包み込む。これで骨も残さず消え去ったはずだ。よくよく考えると、薬草よりはワイバーンの素材の方が高価なのでは?後の祭り、僕は忘れる事にして、薬草採取を再開する。


「クェーーッ!」


 ん、空を見ると元気にワイバーンが飛んでいる。炎熱耐性持か。まぁ火を噴くし当然か。ワイバーンは降下してくる。


「ていっ!」


 収納からミノタウロスのハンマーを出して跳び上がりワイバーンをぶっ叩く。


 スカッ!


 ハンマーはワイバーンをすり抜ける。しばらくワイバーンの吐いた炎をかわす。ハンマーで叩くを繰り返すが、ハンマーは全てワイバーンをすり抜けた。


 物理攻撃手段無効のワイバーン?という事は幽霊かなんかなのか?攻撃が効かないのならしょうが無いか。僕はワイバーンは無かった事にして薬草採取に専念することにした。ワイバーンの攻撃をかわしたり食らったりしながら薬草を取る。ひょいひょいとって、あとは最後の一株だ。


 すぱーん!


 僕の頭を何かが叩く。


「待って待ってー!最期の一株は残して」


 声はするけど姿は見えない。


「あんた、ばかなの?普通逃げるわよ。ワイバーンよワイバーン!」


 やっと見つけた。雪の上に腰に手をあてた小さな生き物がいる。背中にはセミとかトンボみたいな薄い透明な羽がついてる。スプライトと呼ばれている妖精だ。初めて見た。


「なに呑気に薬草とってんのよ。逃げなさいよ!」


 シュッ!


 僕は力を入れすぎないようにして妖精を捕まえた。トンボを摘まむ要領で。いつの間にかワイバーンは消えていた。


「お前、何してんだ?それにワイバーンはどこ行ったんだ?」


「あたしは、雪下草を守ってんのよ、あんたらばかばっかだから、あたしが管理しないと全部むしっちゃうでしょ!ワイバーンはあたしの幻術よ、凄いでしょ、攻撃に当たったらほんとに怪我するのよ!」


 よく喋る奴だな。こいつが幻術のワイバーンで薬草を採りに来たものを追っ払ってた訳か。


「そうか、悪かった。十分とったし、それは残しとくよ」


 けど、ここは薬草の生えてる所として知れ渡っている訳でまた誰か来るだろう。僕は妖精に聞いて最期の一株を土ごと取って、この薬草が生育出来るもっと山の奥に植え直した。冒険者ギルドに薬草を全部採ったと報告したら、こいつも安寧に暮らせるだろう。


「あんた、いい奴ね。ご褒美に幻術でハーレム物語の主人公にでもしてあげようか?」


 僕の前にナイスバディの美女が現れる。よく見ると、さっきの妖精だ。


「いや、気持ちだけで十分だ。あまり、人間相手に幻術はつかうなよ。じゃ」


 僕は妖精に背を向けて立ち去った。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「で、お前なにしてるんだ?」


 町に帰るとアンの炬燵の住民が増えていた。件の妖精だ。人間サイズになってる。


「ご主人様、新しい友達です」


 着膨れドラゴンは妖精を指差す。


「あんたザップって言うのね、雪下草は大丈夫そうだからついてきたわ。ミネアよ、よろしく」


 悲しい事に、炬燵の僕の定位置が奪われた。



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