全裸タクシー(後)
「そうねんですね……じゃあ、あたしたちってもしかして危険なんじゃないんですか?」
説明を聞いて茶髪の姉ちゃんが言う。
「いや、それは大丈夫だと思う。襲って来た奴らは全員返り討ちにしたし、タクシーに乗る所は誰にも見られてないはず」
「でもザップさんって、今は何のスキルも使えないんですよね? 自慢の魔法の収納も」
黒髪女性が僕に尋ねる。
「そうだな。何も使えないけど、それでも俺はかなり強いとは思う」
「それなら、その宝珠を私が受け取ってザップさんは外で私たちの護衛をしたらいいんじゃないですか?」
黒髪女性の言葉に僕は考える。そうだな。そしたら服を着れるし、安全に移動出来る。人としての尊厳を取り戻せる。けど、もし新たな襲撃があったら彼女を危険に巻き込む事になる。この宝珠を狙っているのが魔術師である以上、何が起こるのか分からない。
「申し出は有り難いんだが、あなたを危険に巻き込む訳にはいかない」
「でも、もう十分巻き込んでると思うわよ」
茶髪の姉ちゃんが少し顔をしかめる。そうだよな。彼女たちと馭者さんにはそれなりの礼をしないとな。
「それで、聞きたいんだけど、裸でタクシーに女2人と乗るってどんな気分なの?」
茶髪の姉ちゃんが目を光らせて聞いてくる。なんて、答えにくい質問なんだ……
「そりゃ、恥ずかしいさ。好き好んで裸の訳じゃない」
「その割には、なんて言いますか、普通の態度だと思いますけど」
黒髪女性もまた微妙な質問をしてくる。
「はい、そりゃ、慣れてますから……」
「やっぱり、常習犯なのね」
「違うって」
「慣れてるんでしょ? 本当は好きなんでしょ? 人に見せるの」
キラキラした目で僕を見るな。けど、なんか裸でなじられるのってなんか、何とも言えないな……
「そんな訳無いだろ。お前こそ本当は見たいんだろ」
「見たくないわよ。そんな汚いもの」
「汚いってお前見たのかよ」
「私はちょっと見てみたいです。手、どけてくれませんか?」
「嫌ですよ」
「見せたいんでしょ?」
「見たいです!」
女性2人が僕ににじり寄って来る。どうしたらいいんだ。正直、魔導師軍団より強敵だ……
「待て、待ってくれ。そんな見てもいいもんじゃないぞ。むしろ目の毒だ……」
とか言いながらも、なんかムズムズする。変なヘキに目覚めそうだ。しかも変な汗かいてきた。
「ザップさん、楽しそうな所悪いんだがもうつきましたぜ」
ナイス、馭者さん! 助かった。女性2人は残念そうに席に戻る。
そして、宝珠を納品して、その間、女性2人と馭者さんには待ってて貰ってそこそこの謝礼をした。
「うわ、こんなに貰えるのラッキー」
「貴重な体験が出来ました」
「ザップさん、有り難うございます」
3人ともとっても喜んでたが、とっても疲れた。ポルトからはしっかりむしり取ってやろう。
私の寝てる時に見た夢で、ザップさんは裸でタクシーに乗ってました。で、この話です。
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