全裸タクシー(前)
「あの、よかったらこれ差し上げますよ」
30代くらいの年だと思われる黒いボブカットの胸が大きい女性が僕にケープを差し出す。その顔は赤らみ、僕から出来るだけ目を逸らしている。そのケープ透け透けだよね。役に立たないよ。ボケてるのか? 天然なのか?
「ありがとうございます。お気持ちだけ有り難くいただきます」
「そうですか……」
女性は怖ず怖ずと手を引っ込めケープを再び纏う。
「あたしのガウン貸しましょうか?」
ウェイビーな茶髪の目がクリッとした十代後半だと思われる女の子も、また赤ら顔で僕に話しかけてくる。
「お気持ちだけで十分ですよ。お嬢さん。今日は寒い。そんな事したらお嬢さんが風邪引いてしまいます」
いかん、ちょっと可愛いから、ついつい格好つけてしまう。裸で右手に宝珠左手で自分の宝珠を隠している状態では何を言っても只の変態だ。なんつーか、僕って全裸率高いな。多分、全裸の神に愛されてるのだろう。いや、全裸の神は神は神でも間違いなく邪神だろう。
僕は今、乗り合いタクシーで王城にむかっている。乗り合いタクシーとは、馬車にお客さんを数人乗せて各々の目的地に運ぶもので、運賃を乗客と折半する形でリーズナブルだ。しかも運転手側も普通に一組運ぶより若干儲かるから、ここ王都では結構見かける。それで、僕が同乗しているのは運悪く女性2人。しかも美人さんだ……
何故こんな辱めにあってるかと言うと、この国の国王のポルトの依頼だ。そばにあるものの、スキルや魔法を打ち消すという強力な古代の魔道具を手に入れたけど、その事がいろんな所に漏れて屋敷から王城に運ぶ術が無いという。
即断ったが、金の力とマイのお願いの前に折れてしまった。
それで、コソコソとポルトの屋敷を出た瞬間に魔導師軍団の総攻撃を受けて僕の衣服は全て消失してしまった。当然、魔導師軍団は壊滅させた。この魔道具を持ってたらスキルは全く使えない。もし僕がそれを奪われたらそれを手にした者もスキル等を使えない。捨てちまおうか? なんかババ抜きのババみたいな魔道具だな。質が悪い呪いみたいだ。
それで裸で困ってる時に通り合わせたタクシーに乗り込んだ訳だ。運ちゃんが僕の顔を知ってたみたいでなんとか王城まで送って貰える事になった。
「あのー、ザップさんって、あのザップさんですよね?」
黒髪女性が恥ずかしそうに話しかけてくる。けど若干嬉しそうだ。チラチラ視線が僕に向いてる。
「はい、そのザップです」
「あのう、やっぱり、物語みたいにいつもそう言う格好してるのですか?」
なんだ、その物語みたいにって。あいつのせいだな。
「いやー、たまたまです」
つい、左手を上げて横に振る。ノーノーのジェスチャーだ。
「たまたま……」
僕の宝珠に視線が一瞬流れる。いかん、裸の事忘れていた……
「いつもはちゃんと服着てます。事故でこうなってるだけで、そんないつも裸だったら捕まりますよ」
僕は一通り今までの事のあらましを説明する。
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