ガチャの迷宮(後)
「あああ……」
ショックから立ち上がれない……
まだ、次だ。
「ご主人様、どいて貰えませんか? どうも人が魔法陣にのってるとレバーが下りないみたいなんですよ」
「ああ……」
僕はとりあえず魔法陣から出る。
「では、次は私が行きます。美味いもんどんと来いっ!」
えっ、まじか本当に食料召喚を選んだのか? これでURの食べ物とか出たら、本気で発狂しそうだ。けど、URの食べ物って何が出るんだ? めっちゃ美味しい肉かなんかか?
レバーをアンが下げる。そして魔法陣が光る。青だ! ざまぁ見ろ。
「豆? ピーナッツ1個……」
ショックを受けつつもアンは豆を食べる。地面に落ちてたのを直に食べるのはやめましょう。
「では、やっと私の番ですね。格の違いを見せてやりますっ!」
ジブルは魔道具召喚のボタンを押してレバーを引く。
「来たーーーっ! シルバーーーーッ!」
なんと、魔法陣が銀色に輝く。しかも外縁部が光り、徐々に外から内に光り始める。長い、演出が長くしかもなんか格好いい!
「見て下さい! 聞いた所、シルバーはR以上確定ですよ。来ますよ、来てますよーーーっ!」
ヤバイ。ジブルのテンションがおかしい。そして、魔法陣全てが銀色に光り、眩い光に包まれて中央に何かのシルエットが! コップ、いや足つきのコップ、ゴブレットだ。そして、ゆっくりゴブレットは魔法陣の中央に着地する。銀色で金属製みたいだ。
「シルバーって事はRね。まあいいわ。マイ、鑑定、鑑定して」
「はーい。恵みのゴブレット。1日1回、美味しい水が湧き出す」
「しゃーっ! 魔道具ゲット。私は今日から毎日これで美味しい水を飲むわ」
ジブルはゴブレットに頬ずりしている。水なんか収納から出して飲み放題なのにな。
「で、幾らなんだ?」
「ザップ。ロマンが無いわね。なんでもお金で買えるとは思わないで。ザップとアンがガラクタ引いたあとに手に入れたこの魔道具。何物にも代えられない満足感があるわ」
「で、幾らだ?」
「んー、金貨2枚」
「メダル以下だな」
「うっさいわ。勝利の味がするのよ!」
なんか腹立って来た。この幼女ヤツはスキル召喚引くとか言ってたのに、僕に勝つためにそれを曲げて魔道具召喚を引いたのか。これはなんとしてもガチャでもっと良い物引いてやる。
「なんか、楽しそうね。あたしも1回だけ引こっかな」
おお、マイもガチャの魅力に気付いたか。けど、マイはドラゴンのスキルガチャで1回大当たりを引いている。これはもしかして。
「そうね、スキル召喚引こ。まだ誰も試してないからね。スキルってどんな形で魔法陣から出てくるんだろ」
そう言うと、マイはメダルを入れてレバーを引く。魔法陣が光る。あ、青……
そして、魔法陣から出た青い小さな光の球がマイに近づいて来る。咄嗟に出したその手に当たると光が弾け消え失せる。
『ノーマルスキル安眠。寝付きがよくなります』
機械化な声が部屋に響く。あ、安眠。少しいいな。
「スキル召喚ってスキルポーションが出て来たりとかしないのね。換金出来ないわね。しかも説明つきなのね。けど、安眠って結構当たりなんじゃ?」
「じゃ、俺もスキルガチャ引くぞ」
祈りを込めてレバーを引く!
『ノーマルスキルかけっこ。走れるようになる』
「元々走れるわ! ボケェ!」
ついつい謎音声にツッコんじまう。まあ、多分、ノーマルスキルって誰でも出来る事なのかもしれないな。
これで、残るメダルは、僕4枚、マイ4枚、ジブルとアンは2枚づつだ。5回引いてレアが1回。まあ確率通りだけど、このまま全部引いたとしてもレアがあと2回くらい出るのが関の山だろう。
「なあ、みんなでメダルを出し合って10連引いてみないか?」
「いいけど、多分、ガチャの種類が決まらないと思うわ。あたしはどれでもいいけど」
「俺は魔道具召喚」
「私は食料召喚」
「私はスキル召喚」
そうだな、まとまる訳が無い。そして、各々好きなのを引く事にした。
僕はスキル2回と魔道具2回で、デコピンと一気飲みのスキルとクズ魔石を2個手に入れた。
ジブルはスキル2回で、スキップと投擲のスキルを手に入れた。マイが鑑定してもスキルは増えて無いみたいなので、もしかしたらスキルガチャのノーマルはただ誰でも出来る適当な事言ってるだけなのでは?
そして、アンは食料召喚で魔法陣が銀色に光ってレアの美味しいリンゴと、ノーマルの豆を手に入れて即座に食っていた。
そして、マイはそれを見て残りのメダルは冒険者ギルドで売る事に決めた。それなら僕が相場より高く買おうかな。
「マイ、じゃ、俺にメダルを売ってくれないか?」
「ダメよ。売って生活費にするんだから。ザップに売ったら、また外れ引いたら、この3日で全く稼がなかった事になるわ。また、今度挑戦しましょ」
そうだよな。未練はあるが、また来ればいっか……
やっぱりそんな簡単に良い物当たる訳ないか……
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