重戦士ロマン
「馬鹿だ!」
「馬鹿が迷宮に来たぞ」
遠巻きに迷宮に潜る冒険者たちが僕の悪口を言っている。言いたいヤツは言えばいい。
迷宮にプレートメイルを着て入る者はいない。その着脱の面倒くささ、脱いだ時にかさむ事、戦闘での機動力の無さ。その理由は枚挙に暇がない。
僕はその常識を破壊してやる!
今僕は最高の鎧を身に纏っている。フルプレートメイルの性能を凌駕する名づけてヘビープレートメイルだ。導師ジブルを通じて金属都市ガガロンに発注して作った特製鎧。全身金属盾と言っても過言じゃないまさに歩く要塞。かなりの腕の剣士の一撃でもびくともしない。普通の人間では動く事もままならないので、魔道都市の最新のゴーレム理論に基づいて作られた特殊制御の魔道具による、重力制御と精神感応動作補助によって、ある程度以上の筋力があればなんとか動けるようになっている。見た目はまるでカブトムシのようだ。鎧の名前はゴリアテ1号。戦場で無類の強さを誇る重戦士。それを迷宮にも普及させる事で少しでも冒険者の生存率を上げようという試みだ。決して趣味じゃない。今日から冒険者の歴史に新たな1頁が加わる。
とりあえず階段を下りて迷宮に入る。僕の後には数人の検証スタッフがついて来ている。そこそこに腕が立つ冒険者だ。その結果を冒険者ギルドに張り出す予定だ。
階段では足を踏み外して、激しく転がった。当然ノーダメだが結構目が回った。下に人が居たら酷い事になってただろう。
気を取り直し武装する。武装は槍と盾。鎧にチェーンで繋げるようになってるので取り落とす心配は無い。
スライム、大型昆虫、ゴブリンなどを蹂躙していく。正直気持ちいい。奴らの攻撃を全て受けて来たけど全くダメ無し。ゴブリンに囲まれてボコられたけど、キーンとかコンとか言うだけで、そのあと槍でぶっ刺してやった。気分はサイコーだ。もしかして、この装備なら素人でもかなりの強さの冒険者に成れるのでは?
そして僕の蹂躙劇は続く。オーク、オーガ、そしてトロールさえも、キーンしてブスッだ。この分厚い板金の鎧の前に、奴らの必殺の攻撃ですら若干衝撃を感じるくらいだ。沢山盛って良かった。まあ、何度か階段ではまた転がったし、水分、食料補給の時には面倒くさいけど、それを補って余りある成果だろう。
そして、最高の結果を残して僕たちは迷宮を後にした。重戦士サイコーだ。
そして、その性能と結果のレポートが冒険者ギルドに張り出されたが、悲しいことに未だ冒険者ギルドには重戦士は発生していない。
「そりゃ、そうよ。さすがに鎧の金額が大金貨10枚って、下手したらそこそこの腕の戦士を1年雇えるわ」
確かにマイが言うとおりだ。重戦士になるにはお金がいる。お金があるなら冒険者にはならないな……
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