姫と筋肉 おっぱい
「うっせーわ! おっぱいデカくしたいんじゃボケェ」
怒り心頭。僕はつい叫んでしまった。
ゲッ辺りが水を打ったかのように静かになった。ここは王都の冒険者ギルドで沢山人居るのに……
「なぁ、ラパン。こんな公衆の面前で叫ぶ事では無いと思うぞ。これでここにいる全ての人に、お前は貧乳で悩む哀れな少女だという事を印象付けてしまったと思うぞ。ここは一つ、それを打ち消すような事を叫ぶべきだと思う。『本当は筋肉が大好きでーす!』とかな」
マッスル黒エルフのレリーフがまるでお父さんが子供を諭すかのように、落ち着いた低い声でゆっくりと喋る。おかしい、これじゃ僕が変な事言ってレリーフが説教してるみたいだ。いつもは逆なのに……
「そうだな。イメージ悪いな」
「そうだ、ラパン。大きく息を吸え。そして叫べ、ほら、みんな今お前を見ている。思いのたけを叫ぶんだ『私は貧乳なんか気にしてません。筋肉、逞しく鍛えあげられた、カッチコチのサイドチェストでパンプアップされた大胸筋が何よりも大好きです!』と、叫ぶのだ!」
いつも無口なのに、コイツこんな時だけ饒舌になるな。
「誰が叫ぶかボケェ。それじゃ僕の好物がお前みたいじゃないか!」
「そんな事は無いと思うぞ。辺りを見渡してみろ。ここにいる男はほぼ全てそこそこの大胸筋を手に入れている」
そう言えば、いつの間にかこのギルドにほぼデブが居ない。みんなスタイルがいいような……
「お前もジムに入会しないか? 今なら入会特典で3ヶ月2割引だ」
「え、ジム? 何処にあるんだ?」
「何だ、お前知らなかったのか? ギルドの2階にジム出来てるんだぞ。この世の叡智を集めた最新型の器具を集めたそれは素晴らしいジムだ。すこし値は張るが筋肉のためなら問題無いだろ」
ま、まじか? なんか世界が筋肉になりつつある。まあ、冒険者は体が資本。鍛えるにこしたことはないっちゃないが……
「まあ、とりあえず座れ」
レリーフがバーカウンターの人に手を上げて指を2本立てる。
近くのテーブルにつくと、ウェイターが飲み物を2杯持ってくる。
「プロテインジュースだ飲め」
「いらんわ!」
「まあ、待て。俺なりにお前のために色々調べてやった事がある。筋トレしたからといって胸は大きくならない」
「そうだろ。いつも僕が言ってるだろ」
「相変わらずせっかちだな。話は最後まで聞け。これが今のお前の胸だ」
レリーフはテーブルに手のひらを置く。失礼な奴だな。そこまで平らじゃない。ぶっ殺すか?
「今は下にはほぼ筋肉は無い」
筋肉無いも失礼だよな!
「そして、筋肉をつけて土台で下上げしてやると」
レリーフは右手の下に左手を滑り込ませる。
「ほら見ろ。すこし盛り上がった」
そうだな。言うとおりだ。1センチ、いや5ミリでもそれで盛り上がれば僕は狂喜乱舞するだろう。
「本当は筋トレの後に飲んだ方がいいんだが、これは景気づけだ。お前の乳が少しデカくなる前祝いだ」
「あ、ありがとう」
「じゃ、飲んだら行くぞ」
「ああ……」
そして、いつの間にか僕はジムに入会して筋トレマシーンの使い方をレリーフに教えて貰っていた。アスレチックみたいで意外に楽しかった。
多分こうやって毎日筋肉信者を作ってるんだろうな。ジムにいた人達はみんなレリーフに頭下げてたし。
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