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番外編SS 荷物持ち魔王にからまれる


「お前が猿人間魔王を僭称してるというザップか?」


 僕の前に少女が立ちふさがる。幼い顔にプラチナゴールドのツインテール。金色のビキニアーマーを纏っている。本当にこういう鎧を着てる人いたんだ。僕は素直に感動する。


「いえいえ、人違いでしょう。私の名前はチャップですよ」


 とても可愛い少女だが、多分関わり合わない方がいい人種だろう。僕は横をすり抜ける。


 がしっ。


 僕の手を少女は掴む。


「ザップだろうがチャップだろうが関係ない。お前がこの国で一番強い。こっちに参れ」


 少女は僕の手を引いてスタスタ歩きはじめる。こんな人の多い道で止めて欲しい。


 ああ、また変な噂が広がる事だろう…



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ここならお前も本気で戦えるだろう。妾の名はリナ・アシュガルド。またの名を金色の北の魔王!」


 少女は腰に手を当てて胸を張る。成長途中なのかあんまり大きくない。素肌に金属の鎧を着けて痛くないのだろうか?


 町を出て、荒野までやってきてやっと僕の手を離してくれた。少女の力は強く振りほどけなかった。


「その、北の魔王ちゃんがおれに何の用だ?」


「最近、新参者の魔王が現れた噂で世間は持ちきりで、妾の事がないがしろにされておる。真に強い魔王が誰かお前を倒して思い知らせてやるのだ」


「誰に?」


「世間に」


 なんて承認欲求が強いのだろう。そういう目立ちたい年頃なんだな。


「うわぁ、やられた!北の魔王は最強だザップなど足下にも及ばない」


 僕は胸をおさえてその場に倒れ込んだ。


「これで、北の魔王の強さは立証された。好きなだけ噂をふりまいてこい」


「うう、だめだ、だめだ。インチキはいかんのだ。正々堂々戦うのだ!」


 めんどくさい奴だな。子供みたいだな。


「悪いが女の子とは本気で戦えないな」


「ほう、なめた事を、妾を女だからと侮蔑するのか?その舌引っこ抜いてくれよう!」


「解った、解った。ならこうしよう。相手に武器か素手で一撃加えた方が勝ち。これなら受けてやる」


「よかろう。面白い受けてたとう。人間風情の似非魔王が妾に一撃加えられると思ってるのか?」


 自称金色の北の魔王リナは飛びすさると、どっからともなく自分の背丈の三倍くらいはある巨大な剣を取り出して構える。収納スキル持ちなのか。


「行くぞっ!」


 リナは大剣を振り下ろす。速い、多分今まで相対した誰よりも。こいつは危険だな、僕はリナの大剣を収納にしまう。リナは何もない両手を振り下ろす。少し間抜けな光景だ。


「なにっ!妾の魔剣ゴッドスレイヤーが…」


 なんか全体的に中二センスだな。


「人間風情が許さん!ゴールデンダークロードカノン!」


 リナの突き出した手が光る。その瞬間僕の全身に焼け付くような痛みが走る。これはヤバイ最高だ。収納から出したエリクサーを浴びながら、リナの手から出ているエネルギー波を収納に頂いていく。また、新しい強力な攻撃手段をいただけた。


 けど、少しなめすぎてて対応が遅れたので、服と全身の毛をもってかれてしまった。


 僕は笑顔をこぼしながら、リナに近づいていく。


「なんじゃお前は、なぜ妾の最高最強の攻撃を食らって笑ってられるのだ?」


「さてな、お前はすこしいたずらが過ぎた。さあ、お仕置きの時間だ!」


 僕は十分にエネルギー波を頂いたので、リナに走りより、鼻を人差し指で弾いてやる。


「はうっ」


 リナは鼻をおさえてうずくまる。


「俺の勝ちだな」


 リナの目をじっと見る。こいつ位の実力者だと、もし僕が本気で攻撃したらどうなってたか解るだろう。


「妾の負けじゃ、好きにしろ」


 リナは涙を浮かべ両手を地面に投げ出し大の字になる。


 ばこーん!


 何かに頭をどつかれる。何だ?何の気配もしなかった!


「ザップー!いたいけな少女になにしてるの!」


 マイだ、怒ってる目がギラギラしてる。


「何しやがる。俺は完全な被害者だ」


「ザップなの?怖っ…」


 マイは僕を見て目を見開く。ん、そうか、髪の毛眉毛睫毛全部焼け落ちてしまったのか。そりゃ人相悪いな。


 マイに一部始終を話す。


「ごめんね、ザッププププッ」


 マイは僕の顔を見て噴き出す。


「だけど、裸で『お仕置きしてやる』って言ってたり、女の子が『好きにしろ』とか言ってるのを聞いたら、普通勘違いするわよ。それで、この子どうするの?」


「お前は強い。けどもっと強くなれる。修行して出直せ。以上」


「はい……」


 剣を返してやるとリナはトボトボとどっかへ行った。


「ザップ、魔王ちゃんと手をつないで行ったんだって?」


「ああ、振りほどけなかった」


「じゃ、あたしも振りほどけないように握ろ」


 僕は町までマイに手を握られて歩いて帰った。なんなんだろうか?


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