月食
今晩は月食です。ぜひ、見ましょう!
「ねぇねぇ、マイ姉様。今日の夜は月食なんですってよ」
アンがマイに話しかける。ソファーでゴロリの僕の前にマイとアンがやって来る。なんか不自然だな?
「ええええーっ! そうなのね。月食、見てみたいわねー!」
マイが大袈裟に驚く。何の茶番だ?
「そうなんですよ。月食なんですよ。ところで月食ってなんですか? 『月』ってお月様で、『食』って食べるって意味ですよね。分かりました。月を食べるって意味なんですね」
「アンちゃん、どんなに頑張ってもお月様は食べられないわ。ドラゴンでもね。けど、いい線いってるわ。月食ってね、まるで食べられたかのようにお月様が欠けていって、見えなくなって、また膨れて戻って行くのよ」
「へー、そうなんですね。東方の国のお菓子なのかと思いました」
「アンちゃん、それは『月餅』ね。東方和国じゃなくて、東方信国で秋の月見に食べるやつね。まあ、元々月に見立てて作ってるらしいからちょっと近いわね」
「そうなんですね。そういえば、今日は満月ですよね。それが無くなってまた戻るって事は狼男さんって今日は大変ですよね」
「そうよね。狼男さんって満月の夜に人間から狼になるのよね。という事は月食の間は人間から狼になってどんどん人間にもどって、また戻ったら狼になる訳よね。そりゃ大変だわ」
「私でも、ドラゴンに戻って、人間になってドラゴンに戻ったら結構きっついですよ。めっちゃお腹空きます」
「じゃ、アンちゃん、さっきの月餅でも食べる?」
「私はあんこが苦手なんで、月餅はちょっと……」
「ええーっ、アンちゃんでも苦手な食べ物もあるのね。口に入れられるものなら何でも食べるのかと思ってたわ」
「げーっ、ショック! 月食なだけに」
「もうええわ」
「「ありがとうございました」」
2人は僕に頭を下げる。何だったんだ? もしかして漫才だったのか? 笑い所が分からなかった……
「どうだった?」
マイが僕に尋ねる。どうって言っても。よどみなさから結構練習したのだろう。
「頑張ってたと思うよ」
「ご主人様、面白かったですか?」
「お、面白かったと思う……」
「やっぱり、微妙だったのね……次は次こそはザップを爆笑させてみせるわ」
拳を握りしめるマイ。どこへ行くつもりなんだ?
「それで、急にどうしたんだ?」
「これで、ザップもすこしは月食、好きになったかな?」
ん、月食に好きも嫌いも無いと思うが? 今までの人生で月食サイコー! 月食イカスー! なんて言ってる人なんか見た事も無い。けど、マイ達が何故か頑張ってた事だし。
「まぁ、人並みにはな」
「じゃあ、今日ザップも一緒に月食見てくれる?」
あ、そうか、前に僕が月食が好きじゃないって言った事をきにしてたのか。この前は裸で宙を舞ったが、まあ楽しかったしな。
「別にいいが」
マイはどっからか紙を出す。
「『18時9分から欠け始め、19時16分に皆既食となります』、皆既食って月が隠れるって事ね。『皆既となった月は、【赤銅色】と呼ばれる、赤黒い色に見えます』赤い月って見た事無いから楽しみだわ。『皆既食は86分間続いて20時42分に終わり、徐々に満ち始め、21時49分に部分食が終わります』前回は曇って見えなかったから。今回は楽しみよね」
なんかやたら調べてるな。
「ところで、なんでそんなに正確な時間が分かるのか?」
「ジブルが調べてくれたの。魔道都市は占星術にも長けてるのよ。という訳で今日のご飯は月食をみながら屋上でとりましょ」
その赤銅色の月ってなんか興味が湧くな。今晩は月食を鑑賞する事にしよう。曇らないといいな。
マイが調べた時間は本日(11/8)の実際の月食のスケジュールです。私も見ますので、ぜひ皆様もいかがでしょうか? 仲がいい人を誘ってみて、断られたたら『げー、ショック!』ってアンちゃんのセリフをぜひ活用していただけたら、私も幸せです。
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。