ラパンとザップ（迷宮を奥へ）
あたしたちと、ザップたちの迷宮進撃はそれからは熾烈極まりなかった。ザップ、マイさん、アンちゃんが出てきた魔物を秒殺する。それをただただ見てる、あたしたち。そして、降りる階段は躊躇いなく降りる。みるみるうちに階層を下って行く。
「き、キングスライムが一撃……」
ジブルの声が聞こえるけど、驚きで遠く感じる。アンちゃんの右のパンチが巨大なスライム、キングスライムに炸裂する。
普通の冒険者ではかなり苦戦すると言うキングスライムが一撃。ドラゴン状態じゃ無いアンちゃんも十分化け物みたいだ。地下１０層のフロアボスは簡単に倒された。
「オークキングが一撃……」
ザップのハンマーがオークキングを叩き潰す。ミケは驚いて顎が外れそうだ。
空いた口が塞がらない。恐ろしい怪力を誇るというオークキングもザップには雑魚同然みたい。ザップ、こんなに強いのね……地下２０層のフロアボスのオークキングを撃破。
「ボストロルが一撃……」
マイさんの斧が地下３０層のフロアボスのボストロルの首を刈り飛ばす。ジブルもミケももう気にするのは止めたみたいだ。それにしても、恐ろしい再生能力を持つと言うボストロルも、首を刈られたらどうしようもないみたいだ。
あたしたちは途中から、ザップがミケ、マイさんがジブル、あたしはアンちゃん背負われて、ここまで駆け抜けた。ほとんどの敵は止まる事なく蹴散らされていた。ドロップアイテは妖精さんが回収している。
マイさんを先頭に、気がつくと地下４０層までたどり着いていた。フロアボスはキングミノタウロスだそうだ。
「瞬殺！」
ザップのハンマーがキングミノタウロスを吹っ飛ばした。
その勢いのままついには地下50層。あたしたちは全く何もしてないけど、ボス部屋の前で、軽く休憩した。ここをクリアしたら一端地上に戻るってザップは言っている。
「じゃ行こうか」
ザップの言葉で休憩はおわり、ザップがボス部屋の扉を開くと奥が見えない様な大部屋だった。
ザップがハンマーを構えて駆け出す。それにみんな続く。
薄暗い部屋の奥に巨大な黒い影が。見上げると赤く輝く双眸。真っ黒な鱗に覆われたドラゴン。聞いた事があるダークドラゴンだわ。
「ご主人様、あれは闇に堕ちたドラゴン。私達の宿敵。私に任せて下さい！」
アンちゃんが声を張る。アンちゃんからビリビリするような殺気が溢れる。あたしはその気配につい身がすくむ。
「いや、お前達が暴れたら、ラファ達が危ない。俺に任せろ。下がっとくんだ」
ザップはハンマー片手にドラゴンに駆けよる。
「グオオオオオオオオーン」
ドラゴンが天を仰ぎ咆哮を上げる。心臓を鷲掴みにされたかのような恐怖に包まれる。体が動かない！
「耳を塞げ！」
「大丈夫！マインドシールドをかけたわ」
妖精の声がすると、あたしの体はフッと軽くなって、心が落ち着いてくる。
「一発で決める！」
ザップは跳びハンマーを両手に握り振り下ろす。
ドゴッ！
「ギャアアアアッ」
轟音に続くのはザップの悲鳴。地上から生えた巨大な岩の槍がザップの腹に刺さり、背中まで貫通している。誰が、魔法？ もしかして、黒竜が？ そして、それからあたしに起こった事は一生忘れないと思う。
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