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 迷宮救出 1


「あ、いいとこに居ました。ザップさん。ぜひ、ぜひ、お願いしたい緊急の依頼があるんです」


 ギルド職員の気の弱そうな眼鏡のお兄さんがやって来て僕に頭を下げる。


「面倒くさいからいやだ!」


 コイツが持ってくる依頼は基本的にロクなもんじゃない。報酬安くてきっついか、報酬高くてあり得んほどきっついか。そういうふうなのを見繕って僕になすりつけてくる。この気が弱そうなのは演技で、実は凄腕のギルド職員だと僕は薄々感じている。


「そうですよね、報酬も雀の涙ですし……」


 出た。必殺の報酬は雀の涙! と言うことはお金にならなくて厄介なパターンか……

 けど、コイツがこのタイミングで今来たって事は……


「どうしたのザップ? なんか依頼?」


 やっぱりマイが近づいてくる。チッ、タイミング測りやがったな。


「実はですね……」


 キラーンと職員の眼鏡が光る。一瞬その目が鷹の目のように細められた。それから職員はとても卑屈にマイに依頼内容を説明した。


「ザップー、助けてあげましょうよ、困ってるみたいだしね」


「俺の名前はザップーじゃない、ザップだ」


「ザップー、最近太ってきたんじゃない? 間違いなく運動不足よ」


 むぅ、ザップーって伸ばしたらなんか犬とかペットの名前みたいで間抜けな感じになっちまうな。まぁ、最近はごろごろしてて何でもほとんどマイにやって貰ってるから、ペットのようなものになってる感は否めないが。なんかデジャヴだな。けど、マイがそう言い始めたらもう決定だ。ここで抗ったら、僕が太りがちという事を理由に飯が野菜ばっかになっちまう。しょうがない肉を食うためにこの依頼受けるしかないか。あんまり内容を聞いて無かったので、職員に詳細を確認する。


 依頼内容は迷宮の中で行方不明になった冒険者パーティーの生存確認。生存していたらその護送。報酬はギルドからは小金貨1枚。そして、それ以外に怪我して街に残っている依頼主のそのパーティーのメンバーからも幾ばくか報酬が貰えるそうだ。

 取りあえず、近くの宿にいるという、その依頼主の所に詳しい話を聞きに行く事にした。



「私を治療するために、仲間たちは迷宮へ行ったんです」


 宿のベッドに横になってる女性はそう言うと右手をベッドから出す。その手のひらがあるべき所には血が滲んだ巻かれた包帯があるだけだ。右手の手首から先が無い。顔色は悪く、怪我からあまり日がたって無いのだろう。


「この前の冒険で、私は仲間をかばってこうなってしまいました。私は私の意思でしたから気にしなくていいって言ったんですけど、仲間たちは物語くらいにしか出て来ない伝説の秘薬を求めて冒険に出て行ってしまいました」


「えーっと、伝説の秘薬って何かなー」


 うわ、どうしても白々しくなっちまう。マイがジト目で僕を見ている。


「霊薬エリクサーです」


「「霊薬エリクサー!!」」


 僕とマイは目を見開いて驚く。スーパー大根役者が2人いる。


 

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