ラパンとザップ(金のパンツ)
「てえーい!」
ぶちゅ!
あたしの振るったハンマーがスライムを粉砕する。まさかこのあたしが魔物を倒す日が来るとは……
今、あたしたちが居るのは、迷宮都市の迷宮の地下2層。並びながら下に降りるのに痺れを切らしたザップの発案で、アンちゃんにドラゴンになってもらって、初心者冒険者を追っ払ったおかげで、辺りには誰も居ない。アンちゃんがドラゴンになるって言ってたのに、恐慌状態になったミケが逃亡したおかげで、それを探すのに手間取ってやっと地下2層に降りて来れた。まぁ、あたしもアンちゃんの本性を見た時には危うくチビりかけたので、何とも言えないわ。
「ファイヤーボルト!」
魔道都市の誇る導師ジブルの手から放たれた燃えさかる炎の矢がスライムに突き刺さる。さすがね、一撃でスライムは動かなくなる。
「ヘイスト!」
魔道都市のエリート、魔道騎士のミケは十八番の加速魔法で自己強化して、一気に間合いを詰めてスライムを一刀両断!
あたしはザップを見る。目を見開いてるわ。驚いてるのかしら。
「ハァハァ、どうだ、ザップ、私達もなかなかやるだろう」
ミケもザップに振り返る。
「まてぃ、どうだじゃないだろ。スライム相手に何魔法使ってやがる。アン、正しいスライムの倒し方見せてやれ」
え、正しいスライムの倒し方? もしかして一流の冒険者には特別なスライムの倒し方があるの?
「おっ、いたぞ、アン行け」
「はーい、りょーかいでーす!」
新しく出て来たスライムに向かって、アンちゃんはまるで、街中でも歩いてるかのように事もなげに歩いて行く。
ぷちゅ!
そのまま普通に歩いて、その後には潰されて息絶えたスライム。なんか可哀想……
「解ったか、これがスライムの正しい倒し方だ!」
「スライムは、虫とかと一緒で全く気にしなくてもいつの間にか死んでます」
マイさんが解説してくれる。そんな訳ないでしょ。
「「出来るかっ!」」
ジブルとミケが同時に叫ぶ。スライムがいつの間にか死んでるなんて話は聞いた事も無い。もしかして、あたしたちって本当にヤバい人達と一緒に居るのかも……
「3人ともこっちに来い」
ザップがあたし達を呼び寄せる。
「誰かこれを使え」
ザップの手には金色の布地が握られている。なんかの魔道具? 強い魔力を感じる。
「なにこれ? パンツ? 生温かい」
ジブルが手に取って広げる。パンツ。俗に言う男物のブーメランパンツ?
「俺のパンツだ。これを穿けば強くなる。しかも魔法の収納付きだ」
えっ、ザップのパンツ? 生温かいって事は脱ぎたて?
「汚っ! いるかボケッ! この変態がっ!」
ジブルが顔を真っ赤にしてパンツを投げ捨てる。それを捨てるとはとんでもないわ! あたしは全身全霊をかけて駆け出しそれを目指す。あれは魔道具、神器と言っても過言じゃ無いくらいの力を感じる。
「いただきっ!」
あたしはそれをキャッチし、即座に装備しようとする。
「姫様、それはダメです。女の子として!」
ジブルが邪魔するけど、何とか穿けたわ。あたしに力が溢れる。凄い、凄すぎるわ!
「み、みなぎるわーっ!」
ついつい、声が出てしまう。
なんかザップの目が冷たいような……
「うわ、これがザップと一緒の魔法の収納! すごーい!」
あたしは、ザップから借りたハンマーをパンツに出し入れする。入れた時にまるで何かを記憶したかのようにハンマーが頭の中に浮かぶ。それを思い出すかのようにパンツに触れると出てくる。魔法の収納ってこうやって使うのね。
「マイ、教育的指導をよろしく」
ん、教育? ザップ、何言ってるんだろう?
「わかったわ……」
あたしはマイさんに部屋の隅に連れていかれる。
えっ、大人ってそんな事するの……あたしはマイさんから教えて貰った驚愕の事実に呆然としてしまった。えーっ、なんて恥ずかしい事あたしはしてたの……
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