ハロウィンスライム
「ぷるぷるっ!」
僕はブルースライム。いや、本当はザップ・グッドフェロー、大陸最強との誉れ高い冒険者パーティー『黄金の風』の荷物持ちだ。今日はハロウィンとか言う訳が分からないイベントで、青い布にくるまってブルースライムになってる。このハロウィンとか言うイベントを考えた奴氏ねばいいのに!
「オラ、ブルースライム。酒持って来いや」
戦士のダニーさんに言われて頭を上げて店の奥にお酒を取りに行く。明るい所では布が透けてうっすらと辺りの様子が分かる。匍匐前進でバーまで行って、背中にジョッキを乗せてゆっくりと這ってもどる。さっきスライムは手を使うなと怒られたからそれしか方法が無い。
「くそっ。おせーな。鈍くさい奴だ。所詮スライムだな」
ゴッ!
「ぐうっ!」
ダニーさんの蹴りが脇腹に突き刺さる。
「おい! お前、俺はぷるぷるしか言うなって言ったよな」
ヤバい勇者アレフの声だ。間違いなく怒ってる。勇者なのになんでこんな事で腹巻き立てるんだろう?
ドゴッ!
「グッハー! ゥゥぷるぷ……るっ……」
背中に激痛が走るが、僕はなんとかぷるぷるって言えた……
「アレフぅ。こんなクソ雑魚スライムほっといて踊りましょ」
魔法使いのポポロさんだ。助かった。
「ウゴッ! ぷるぷるっ!」
甘かった僕を踏みつけて行きやがった。
「オボウッ! ぷっぷるぷる……」
次はお尻に激痛。
「おい、スライム。自由時間だ。けど、ちゃんとスライムやれよ」
聖女と呼ばれているマリアさんのきっつい一撃だ。聖女とは何なんだろう? めっちゃ凶暴な女性の事なのか?
なんとか自由になってアレフ達のテーブルから逃げる。取りあえず体を冷ますか……
ビリッ!
外に向かいながら匍匐前進してると、なんかに端が引っかかった慌てて確認すると床のささくれに引っかかったみたいだ。丁寧に外すが少し穴が空いてしまった。あ、けどこれで目が見えるな。僕は視力を手に入れて外へと向かった。土下座で首を上げた体勢で通りを眺めている。いっぱい仮装した人達がいる。幸せなんだろうな……
けど、僕も幸せだ。時折通るミニスカのねーちゃん達のパンツ丸見えだ! けど、青い布を被った僕がイミフなのか誰も近くには寄って来ない。残念。
「キミ、それ何なのかなぁ?」
うわっとぉ! 隣に人が!
「ぷっぷるぷる!」
女の子がしゃがんでる。うわっほーい! パンツ丸見えだ! ピンク! 猫耳に目元だけ隠したマスク。狼女なのかな? けど、これは近すぎる。バレたら絶対どつかれる。僕は泣く泣く目穴をにぎって隠してうずくまる。これで悪いスライムでは無くなったはず?
「もしかしたらスライムさんなのかな?」
よく分かったもんだ。けど、声がなんかフワフワしている酔っ払ってるのかな?
「トリック、オア、トリート」
僕の背中に何か乗せられた。
「違うか。こういう時はお菓子をあげるんじゃなく貰うのよね。ま、いっか。スライムさんにも楽しいハロウィンを」
足音が遠のく。ぷるぷるして背中のモノを落として拾ってみるとアメ玉だった。なんとこんな高価なものを……
包みを取って口に入れる。甘い。ハロウィンも悪くないな。それよりも猫耳っていいな。
なんかみんなが浮かれて気分が少し分かった気がした。
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