完全なる邪悪 (後)
最後らへん、かなり書き足しました。
更に先に進むと、腐臭と更に頭を割られた死骸が僕たちを出迎えた。鳩のような鳥、猪みたいな生き物。ゴブリン、オーク、更にはトロールやオーガもある。腐ってるものもあればまだ新しいものもある。気色悪いけど、その中でも新しいと思われるオーガの死骸を検分してみる。目立った大きな外傷は無いが、引きずったような跡がある。鋭利な何かで、頭蓋骨をスパンだ。そして頭の断面には何かが噛み付いたような跡がある。
『うわ、気持ち悪いわね。早く行きましょうよ』
「ちょっと待てよ。どうやら外で倒してここまで持ってきたみたいだな」
『という事は、オーガを持てるくらいの腕力があるって訳ね』
「その上、オーガを一撃で倒せる戦闘力」
『ザップ、私帰ってもいいかしら』
「何言ってやがる。お前が持ってきた依頼だろ」
僕は骨の手を掴んで前に進む。確かにジブルは役立たずだけど、さすがに1人は心細い。
『おばえら、なにじに来た……』
頭の中に直接、まるで顔を半分水につけながら喋ったようなブクブクした声がする。
「おい、ジブル、ふざけるなよ。結構びびったじゃねーか」
『何いってるのよ。ザップこそ変な声出さないでよ』
「え、という事は……」
水が腐ったような臭いが漂い、目の前に人影が現れる。足を引きずるような歩き方で、その頭から紐みたいなものが伸びている。
今、喋ったのはコイツか?
『ばあ、いい。おべ、たべる、おばえら』
濡れたような光沢がある葡萄色の丸い頭部から伸びる4本の触手、窪んだ眼窩に瞳が無い白い眼球。首から下は人間のそれで、ボロボロの服に筋骨たくましい。間違い無い、こいつがオクトパスマンだ。
僕たちを食べるって多分言ったということは敵でいいんだな。僕は収納からハンマーを出して構える。
『マインドブラスト』
タコ頭が言ったと思われる言葉が頭に響く。それと同時にタコ頭が真っ白に光り、僕らはそれを浴びる。全身にビリビリとした痛みを感じ、頭に激痛が走る。そして、頭を振りタコ頭を見つめると、僕は変な感じがした。
「おお、タコ頭じゃないか。こんな所で何してるんだ?」
『おべ、おばえのとぼだち。とぼだち会いにきた』
そうだ。僕とタコ頭は無二の親友で会いにきたんだった。僕は親愛なるタコ頭の方に向かう。
『ザップ、どうしたの?』
ジブルの囁きが耳に届く。
「どうもしてないぞ」
『早くソイツをぶっ倒しなさいよ』
「ぶっ倒す? お前をか?」
『ザップ、ふざけてないで、そこのタコヤローをよ』
「何言ってるんだ?」
ヒュン!
タコ頭が触手の1つで僕の頭を叩く。相変わらずスキンシップが激しい奴だ。
『おばえ、あだまがたすぎ。いい体、おべもらう』
「タコ頭。何言ってんだよ。体をもらうって。俺達は男同士だろ」
タコ頭の冗談に僕は笑顔で答える。
ヒュン!
次はタコ頭の触手の1つが僕の鼻に刺さる。おいおい、冗談がすぎすぎすぎ、いてーよ! 痛みで我に返る。友達? こんな物騒で気持ち悪い友達いねーよ。ん、なんだ? 鼻に何かが? 触手? やばい! 奥に入ってくる。脳ミソ掻き出される。
ずずずずずっ!
僕はタコ頭の触手を思いっきり鼻から啜って口からだす。昔、宴会芸で麺を鼻で食べるってヤツをやったのが役立った。全くウケなかったけど。僕は下らない修行の成果で、鼻からうどんを食べる事が出来る。痛いけど。
鼻から入って口から出た触手を噛み切って、吐き出し、鼻から触手を抜く。落ちた触手の先端は鋭利に尖っている。それで、頭蓋骨を切り裂いたり、鼻から触手を突き刺して脳ミソぐちゃぐちゃにしたりしてたんだろう。アブねー、あと少しで脳をやられるところだった。そしたらエリクサーでも回復出来たかわからない。恐怖を怒りで塗りつぶし、ハンマーを握りしめ最速の打撃をタコヤローに叩きこむ。
ブチュッ!
振り下ろしたハンマーは過たずタコヤローの頭に当たりそれを四散させる。そして、タコヤローは後ろに倒れる。
『危なかったわね。マインドブラスト。様々な状態異常を引き起こす魔法よ。ザップ魅了されてたみたいね。けど、よかったわ。運が悪くレジスト出来なかったら、即死や石化もあり得たわ』
「なんと、そんなヤバいやつだったのか?」
恐る恐る倒れたタコヤローを確認すると、体から気持ち悪いタコみたいなものが剥がれている。多分、コイツはタコが本体で人間とかの体を乗っ取って動いていたのではないか? 奴は体を貰う的な事を言ってたけど、それって文字通り、僕の頭を食って体を奪うって意味だったのでは? 気持ち悪い。タコ食えなくなりそうだ。
その後、辺りを探ると、小さいタコみたいなのがいっぱい居る水溜まりがあった。多分タコヤローの子供だろう。ジブルは研究したいって言ったけど、コイツらは危険すぎる。収納からアンのドラゴンブレスを出して、跡形なく焼き尽くしてやった。
タコ頭は何だったのか分からなかったけど、人間の敵だと言うのだけは分かった。邪悪で知性があり凶悪な魔法を使う生き物。未知なる者にはこれからは十分に警戒する事にしよう。
久しぶりに恐怖を感じた瞬間だった。
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