デスサイズ
月明かりを背に佇む少女。その手には、今辺りを弱々しく照らしている三日月のように反った刃物。鎌、いわゆるデスサイズと呼ばれている大鎌だ。絵画とかで、命を刈り取ると言われる死神が手にしているものだ。
「なぁ、最近そればっかり使ってるけど、なんかメリットあるのか?」
デスサイズを手にしている少女、マイに問いかける。なんか格好いいから僕もそのデスサイズを借りて使った事があるけど、正直使いにくかった。
「ん、メリット?」
「だってさ、絶対それより斧やハンマーの方が使い易いだろ」
不器用な僕は、斧でさえ振り方次第では力がブレるからあんまり使わない。全ての力を込めるなら、ただぶん殴るだけのハンマーこそが最高だ。
「まあ、確かにそうだけど、なんて言うか、斧やハンマー振り回していたら女の子っぽくないじゃない」
え、何言ってるんだろう。でっかいデスサイズを片手で軽々と振り回すのは女の子っぽい行為なのだろうか? けど、マイの機嫌を損ないたくないから口にはしない。
「まあ、確かに、斧やハンマーよりはスマートじゃあるな」
「そうでしょ、それに間合いは狭いし、攻撃方法は単調で最初は使いにくかったけど、戦ってみるとかなり防御しにくいのよ」
そうだな。頭の中でシミュレートしてみる。マイが鎌を振るうのを防御するとする。ん、鎌のどこを受ければいいんだ? 鎌の柄を押さえようとしたら、間違いなく先は刺さってるし、受けるなら鎌の先を点で受けるしかない。それって難易度高すぎだろ。
「そろそろ来るわ」
僕たちの目の前には角が生えた巨大な人影が数体。2メートルを超える巨躯にあり得ない程の力。オーガと呼ばれている人を食らう魔物だ。
「グゥワオオオオオオーーーーッ!」
先頭の1体が駆け出してくる。マイは前に出る。ここからみても、オーガの身長はマイの倍くらいある。まあ、マイだから問題ないとは思うがどういう攻撃するのだろうか? デスサイズはオーガの首に届かないぞ。
マイは前に出てデスサイズをふるう。
ズザザザザーッ。
走って来たオーガが転倒して滑る。
ザシュッ!
風切る音と共にオーガの首が舞う。あ、そっか、足を刈ったのか。そうだな、鎌なら刈りやすい。そう言えば、元々デスサイズのルーツは草刈り鎌だったって聞いたことがあるな。
「ザップ、デスサイズは使いにくいってデメリットあるけど」
マイはそう言うと、次に近づいてきたオーガの前に鎌を投げ出す。何してるんだ?
オーガは一瞬止まるが、すぐにマイの鎌を手にする。そして、マイに近づき鎌で薙ぐ。マイは軽いステップでそれをかわすと、オーガの手に一撃入れて、オーガがこぼしたデスサイズを手にすると、一閃二閃オーガの胴と首が別れる。
「デスサイズは敵に奪われても使いこなせる者は少ないから安全なのよ」
そうだな、使いにくいって事も裏返すとメリットになる事もあるんだな。けど、安全かどうかは置いといて、マイから武器を奪えるような敵っているのだろうか?
そして、疑問を振り払い、僕は残ったオーガに向かって駆け出す。
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