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 バッティング


「おめぇ、何してるんだ?」


 頬に傷が入った戦士が僕を見る。使い古されているけど手入れがしっかりしてあるハードレザーアーマーに片手剣。迷宮じゃなくて、フィールドメインの冒険者だろう。王都のギルドじゃ見ない顔だ。王都の冒険者なら、だいたい僕の顔を知ってるはずだ。その後ろには彼のパーティーメンバーだと思われる3人。僕たちは今、林に隠れてオークの一団を眺めている。彼らがオークを観察している所に出会わしたからとりあえず声をかけてみた。かなり距離があるから、喋ってても、オーク共は僕らに気付かないだろう。


「オークハンティングだよ」


「嘘つけ、なんももってねーじゃねーか」


「収納持ちだ」


「じゃ、武器は収納の中なのか?」


「そうだ」


 戦士は僕の全身をなめ回すかのように見る。


「それにしても軽装だな」


 まあ、僕は普段着だからな。


「オークの攻撃なら全部かわす自信がある」


「そうかよ、けど、おめぇはとっとと帰りな」


「俺はギルドの依頼を受けて来たんだが?」


 もしかしたら、たまたま通りがかった冒険者かもしれない。それならば討伐の優先権は僕にある。


「俺だってそうだよ」


 ぼくは戦士とすりあわせしてみる。彼のパーティーは僕から距離を取っている。多分後衛職で、危険な交渉は戦士が受け持っているのだろう。話を聞くと、どうも、王都とそばの町で同じオークの討伐依頼が重なったみたいだ。どうするか? 話し合うしかないよな。


 天高くオーク肥ゆる秋。秋の山オークはドングリとかキノコとかばっかり食べているからその肉は臭みが少なく上質だ。当然高く取引される。まあ、僕は二足歩行の生き物を食べるのはなんか嫌だから食べないが。

 せっかく山くんだりまで来たから空手で帰るのは勿体ない。


「オークは十頭以上いる。ソロのおめぇじゃ無理だ。俺たちに譲れ」


「嫌だね。そうだな。共闘しないか? 分け前は等分でどうだ」


「それはいただけないな。俺はおめぇの強さを知らない。寄生されちゃ、たまったもんじゃない。俺たちは生活がかかっている。無駄な金は出したくねー」


「そうだな。なら、ここは冒険者らしく、早いもん勝ちでどうだ?」


「いいだろう。だが、ファーストアタックだけは譲れねぇ。うちもらしが出たら勿体ねーからな」


「いいだろう」


 そして、話し合いの結果、まずは冒険者たちが突撃して、その後に僕が参戦する事になった。


 冒険者たちは4人。戦士、神官、魔法使い、レンジャーだと思われる。僕を蚊帳の外に打ち合わせをしている。なんかたまに僕をチラチラ見る。まあ、知らない人間がいたら警戒もするよな。



「じゃ、先手は俺たちがいただく」


 僕に呟くと、冒険者たちは駆け出す。


「チェイン・ライトニング!」


 魔法使いが飛び出し、その杖の先から広範囲の雷がほとばしる。オークの半数以上が動かなくなる。そこに戦士と神官が飛び込み、痺れているオークにとどめを刺し、レンジャーも弓を打ちまくる。めっちゃ必死だな。魔法使いなんか魔力切れか知らんが倒れてるし。やたら刹那的な戦いだけど、コイツら強い。その気迫につい目を奪われてしまった。

 いかん出遅れた。けど、時既に遅く。僕はボウズだった。


 戦い終えた戦士がふらふらと近づいて来る。


「フー、じゃ、後は頼みます」


 え、戦士の口調が変わった。


「え?」


「ちゃんとお金は払いますから。それにしても生きた心地がしなかったです。まさかこんな大物に遭遇するとはおもわなかったです」


「え、大物? アンタたちオークに楽勝だったじゃないか?」


「オーク? 何言ってるんですか。まさかこんな所で『最強の荷物持ち』に会うなんて夢にも思わないですよ。逃げ出したかった所ですが、俺ら最近稼いで無かったんで」


「え、ばれてたの? 何で?」


「こんな山奥をそんな格好でうろついてる収納スキル持ちって言ったら、ザップさんしか居ないですよ。よかった先手を譲って貰って。オーク全部持ってかれる所でした」 


 マジか……普段着で冒険してたらなめられるだけでデメリット無いと思ってたのに、それが僕の素性をさらしていたとは……


 それから、運搬費を貰ってまるっとオークを運んでやった。戦士の僕との交渉は演技だったのか。やっぱ熟練の冒険者はしたたかだな。けど、騙された訳ではないから悪い気はしない。




 読んでいただきありがとうございます。


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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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