ハロウィンレストラン(前)
「たったこんだけで、お客さん増えるんだねー」
僕は満席の店内を見渡す。
「そりゃ、そうよ。今日からハロウィン仮装。うちの自慢の女の子たちがみんな仮装して出勤するんだから」
僕に答えてくれたのは、獣人のケイ。いつもより楽しそうだ。まあ、なんかぼくも少し浮かれてるけどね。
ここは『みみずくの横ばい亭』。昼はレストラン、夜はバーの僕たちの家であり職場だ。この変な名前は、先代の店主さんが、『みみずく』のように夜更かしする人がお酒や料理で満足して寝っ転がるようなお店にしたいという思いが込められている。けど、ここに来る人たちはお酒に強く、横ばいしてるのは隣に住む下戸のザップくらいだ。その酔って横ばい状態になったザップはドラゴンの化身のアンちゃんに引きずられて帰って行くのが常だ。
僕の名前はラパン・グロー。元々は東方諸国連合の都市国家のうちの1つ、魔道都市アウフのいわゆるお姫様だったけど、今は家を出てここで働いている。
お店では今月のイベントとして、今日から従業員みんなで仮装する事になった。今日早番の僕は吸血鬼。気合入れて顔を真っ白に塗って紫の口紅に尖った牙、黒のストラップレスのボールガウンに裏地が赤のマントを羽織っている。それに肘まであるオペラグローブ。どっからどう見ても吸血鬼のはずだ。あと同じく早番のケイは魔女。とんがり帽子に黒いドクロ柄ワンピースにマント。首にはドクロのネックレス。うん、どこからどう見ても可愛い邪悪な魔女だ。僕もケイもお客さんにはウケてるが、露出が高くてプロポーションがいいケイの方が視線を集めている気がする。まあ、僕はまだ成長期だからな。
今日はまだ店内にはハロウィン仮装のお客さんは居ない。このイベント中は、仮装してきたお客さんにはエール1杯サービスだからこれから増えていくだろう。
店の厨房の方を見ると、調理長や厨房のアルバイトはキッチン帽子の代わりに耳や角や頭に剣や斧が刺さったように見えるヘアバンドをしている。本当は料理する人たちも仮装させたいって店主のマリーさんは言ってたけど、仕事の邪魔になるって事でこれに落ち着いた。仮装の服って意外に高いからキッチンでは汚れたり燃えたりするからしょうが無い。
マリアさんは狼女になっている。耳付きのヘアバンドに作りものの狼の口と尻尾を装備している。なんだかんだで、接客しててもよく動くし、マリアさんは一般人なので、僕たち冒険者みたいに身体能力がお化けじゃないから地味目ではある。
「「おはようごさいます!」」
元気な挨拶と共に現れたのは、忍者2人。ピオンとパイだ。今は昼過ぎだけど、飲食店での挨拶は常に『おはようごさいます』だ。何故かはしらないけど、そうなのだ。2人の格好は腕と足を出した忍者服。戦闘時に見慣れた格好だけど、露出度が高く、いつもの鎖帷子の代わりにメッシュ生地だ。頭は鉢がねで髪は後ろにまとめている。2人の登場で店内にどよめきが起きる。う、やっぱり露出度が高い方が目立つのか?
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