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番外編SS 荷物持ち迷宮へ行く


「強い奴と戦いたい!」


 僕は炬燵こたつでお茶を飲み干し宣言する。


「ご主人様、私でよければトレーニングのお手伝いするのですが」


 角にピンクと黄色のストライプの靴下のようなものをつけたドラゴンの化身のアンが答える。しょうがない。こいつで我慢するか。


「頼む。では外に行こうか」


「やっぱり、冗談です。寒いから嫌です。春まで待って下さい」


 ヘタレか……


「待てるかっ」


「じゃ、ザップ、あたしと戦ってみない?」


 マイが身を乗り出してくる。チューブトップとショートパンツで炬燵に入っている。なんかおかしい。寒いなら着込めばいいのに。


「それは、遠慮しとくよ。マイとは本気で戦えないし、本気で戦わないと勝てないくらい強くなってるからな」


「え、あたしそんなに強くなってたの? 嬉しい」


 強くなって嬉しいのは女性としてどうかと思うけど、確かにマイは強い。スキルなしで戦ったら数回に一回は負けるだろう。


「あのー、いいでしょうか?」


 また、魔法使いのルルが口を挟んできた。ルルは四人組の少女冒険者パーティーのうちの一人だ。炬燵が気に入ったようで、仕事以外ではほぼここにいる。見ると凶悪な物体が二つ炬燵に乗っている。わざとなのか?


「ここから少し離れた所に『石巨人の迷宮』という所があるそうで、そこの多分最深層と思われる所にいるボスはまだ倒した者がいないらしいのですよ。誰も倒したことのまだない巨人。ザップ兄さんが魔王としての初仕事には恰好の獲物だと思いませんか?」


「魔王は置いとくとして、それは魅力的だな」


「では、一緒に行ってくれるのですね。みんなを呼んで来ます」



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「いただきます!」


 僕は石というよりは岩で出来た巨大な巨人に手を合わせる。やった!やっと強い者と戦える。


 ここは『石巨人の迷宮』の地下50層。いままでの敵は全て僕以外が秒殺してきた。

 少女冒険者四人とマイは僕よりも素早く、早い者勝ちルールだったので全て出遅れた。

 岩石を生み出して投げる奴とか、火を噴く奴とか、あとめっちゃでっかい奴や手がいっぱいついた奴とか、美味しそうなのが沢山いたけど、全部もってかれた。

 ドロップ品は倒した者の物という事で、みんなほくほくだ。当然僕はぼうずだ。ただ散歩してたのと同じだ。


 そんな可哀想な僕に優しい少女たちは碑文から多分ラスボスと思われる巨人さんを譲ってくれた。


 彼の名は『タイタン』と言うらしく、大地に足をついてる限り無限に再生するらしい。なんて素晴らしいのだろう。これで本気で戦える。


「ヒャッホー!」


 僕は最高の気分で跳びあがり久しぶり全力でハンマーを巨人さんに叩き込む。


 ドゴッ!


 衝撃波を纏った僕のハンマーは、巨人を容易く貫通し爆発四散させた。大地に巨大な穴が空く。


 こい! 無限再生!


 巨人は粉になって舞い散り、あとには1つの金色のポーション。


「え、なぜだ?」


「ご主人様、駄目ですよ、地面に穴あけたら。巨人が大地からエネルギー吸えないじゃないですか。もっと優しくしてあげないと巨人は繊細な生き物なんですから」


「そうか……」


 巨人は繊細。また一ついいことを学んだ。これで次はもっといい戦いができるはずだ。けど、全力で戦うのとは違う気がする。


「ザップー、唐揚げセット出して」


 呆然とする僕の横で、少女たちの唐揚げパーティーが繰り広げられ始めた。


 やけ飲みしたスキルポーションは剛力だった。嫌味かよ……


 

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