姫と筋肉 マミー
「そこまでだっ!」
僕はハンマーでその人物をぶっ飛ばす。マントの男が浮浪者に襲いかかっていたので、挨拶代わりに手加減してる。フードがめくれて包帯に包まれた頭部が露出する。ビンゴっ! 情報通りだ。目まで包帯に覆われているのに見えているのだろうか?
「ああ、ラパン。間違いないアンデッドだ」
僕の横に巨大な人影が現れる。マッスル黒エルフのレリーフだ。こいつの職業は死霊魔術士。こいつがそう言うのなら間違いないだろう。
僕たちはマントを脱ぎ捨てて、包帯に覆われたミイラ男と対峙する。『マミー』。古代の墳墓に出現するはずの魔物が何故ここに。
「お前の筋肉を見せてみろ!」
怒号とともにレリーフが駆け出す。
『王都の怪人の討伐』
掲示板に貼られている依頼書を手にする。
僕の名前はラパン・グロー。ウェイトレスと冒険者を兼任している。いつもは友人とパーティーを組んでいるんだけど、今日は休みが会わなくて1人だ。そういう時には必ず奴と遭遇するのだが、今日は完全にスルーする事で乗り切る予定だ。
依頼内容は、王都に夜な夜な出没する怪人の討伐。その姿は巨大な体にくまなく包帯が巻かれているらしい。『マミー』。ミイラ男とも言われる、全身包帯でグルグル巻きのアンデッドが頭に浮かぶが、もしかしたらただ包帯好きな中二な奴かもしれないので何とも言えない。詳しい話をギルド職員に聞くと、出没するのがスラムなので官憲はまだ動いてないそうだ。
「話は聞いた。アンデッドかもしれないのだろう? それなら私がいた方がいいだろう」
僕は無視すると決めていたのだが、確かにその通りなので、ソイツの方を見る。冒険者ギルドの中でバーベル? を上下し続けるスーパーマッスル。しかもそのバーベル? には棒の両端に黒いフルプレートメイル完全武装の騎士が体を丸めてしがみついている。ガチャガチャ煩い。
「そうだな。一緒にこの依頼を受けよう。けど、筋トレ禁止。お前そんなデカいのが3人も居るだけで邪魔だろ? 人様に迷惑かけてるのがわからないのか?」
「そうか? 別に誰も迷惑してるようには見えんがな」
改めて辺りを見渡すが、こっちを見ている者は居ない。もはや、冒険者ギルドでレリーフが筋トレするのは空気のように自然な事なのか?
「じゃ、人に迷惑かけない筋トレならいいよ」
それよりも今回はその包帯の怪人に興味が湧く。出現するのは夜らしいから今日は王都に泊まる事にしよう。明日も仕事は休みだから大丈夫だ。週休2日バンザイだ。
「ふんっ!」
レリーフがマミーと交差するたびに包帯を引きちぎっていく。黒い干からびた肌が露出し、そしてみるみるうちに全て剥ぎ取られた。
「なかなかの力だから期待したがつまらんな」
当然マミーの中身はガリガリなミイラだった。何ミイラに筋肉を期待してるんだよ。レリーフはミイラに背を向けて歩き始める。それを好機と襲いかかるミイラ。ノールックでミイラにレリーフの裏拳が突き刺さる。そして吹っ飛んでいく。
「お前のような奴には私と戦う資格などない」
そう言い残し、レリーフは去って行った。何しに来たんだ奴は?
立ち上がったミイラと僕は対峙する。やばい、ホラーだ。見た目気持ち悪すぎる。やっぱ包帯って大事だな。とりあえず魔法で燃やしてやった。なんかモヤモヤだけど、依頼は達成した。
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