秋きのこ
「マイ知ってるか? きのこは生でも食べられるんだぞ」
僕はマイが切っているエリンギをひょいとつまんで口に入れる。なんかカビのような味がしてあんまり美味しくないけど、人は体を張らないといけない時もある。
「何やってるのよザップ! ダメだって。きのこが生で食べられるっていうのはほぼ迷信だから」
マイが声を張る。そんなに怒んなくてもいいじゃないか。けど、それはおかしい。今まで僕は好んでは食べないが食べられるきのこは生焼けでも食べてきた。
「何を騒いでいるのかしら」
珍しくキッチンに導師ジブルがやってくる。多分、生とかきのことか言う言葉につられてきたのだろう。
「ジブル、ザップが生できのこを食べたのよ」
「え、ザップが? マイが生きのこを口にしたんじゃないの?」
「ザップよ。ザップ」
「普通、口にきのこを含むのは女性のはずだけど」
ジブルは見た目幼女のくせにえげつない事を言う。まだギリギリ、マイには通じてないけど時間の問題だろう。
「ジブル、そろそろ冗談は止めようか。そもそも、俺は冒険者の先輩からきのこは表面をしっかり綺麗にすれば生で食べられるって教えられて、今まで何度か口にしたけど、なんとも無かったぞ」
「ザップ、それはたまたま運がよかったのと、元々ザップのお腹が強いからよ」
「そうね、ザップ。そもそも生できのこを食べさせよう、いや食べようという考えが間違ってるわ」
ジブル、今、素で間違ったな。
「例えばマイが『わぁ、美味しそうなきのこー』とか言って、そこら辺の地面に生えてるきのこを拾って食べたら、ザップもドン引きするでしょ?」
「そもそも、あたしはもしきのこが生で食べられるとしても、そんな事しません」
僕もそう思う。けど、アンやジブルならやりそうだ。
「マイ、例え話よ、例え話。そうね、今日は魔道都市のきのこに関する最新の知識をあなたたちに披露してあげるわ」
そう言うと、ジブルは収納から『きのこ大辞典』と書かれた本を出す。
「ちょっと待っててね。食用きのこ、食用きのこ」
「ジブルが探してる間に、確かに生で安全に食べられるきのこもあるわ。マッシュルームとトリュフよ。この2種類は新鮮だったら生で食べられるわ。あと幾つかはあるけど、表面とかは汚いからやっぱり火を通した方が安全よね」
「有名どころのきのこの結果だけ言うと、なめこは表面に雑菌がついているから、洗っても取れにくいから熱湯をくぐらせたり軽く茹でたりしないと中るそうよ。
エリンギと舞茸はシアンという体に良くない物質が入っていてしっかり加熱すれば大丈夫で、舞茸とシメジはたんぱく質を分解する酵素があるから生で食べると口の中がイガイガするらしいわ。シイタケは生だと皮膚炎を起こす事があるらしく、えのきは貧血や嘔吐下痢になる事もあるらしいわ。要はさっきマイが言ったようにマッシュルームとトリュフ以外は生で食べない方が無難ね」
そうなのか……
僕は今まできのこは生オッケーだと思ってたし、人にもそう言ってきた。これからはしっかりきのこに火を入れて食べる事を決意した。あ、これ当たり前の言葉か……
私、知らないでウケ狙いでよく食べてました(T_T)
読んでいただきありがとうございます。
みやびからのお願いです。「面白かった」「続きが気になる」などと思っていただけたら、広告の下の☆☆☆☆☆の評価や、ブックマークの登録をお願いします。
とっても執筆の励みになりますので、よろしくお願いします。