番外編SS 荷物持ち唐揚げ食べる
「なんだこれは、外はサクサクしてるのに、中はジュワーッとしてる。どうやったらこうなるんだ?」
僕は感動してつい饒舌になる。マイになにかうまいものがないかって話をしていた時にでた、『鶏の唐揚げ』と言うものを、はるばる王都まで走って、地図を頼りに買ってきた。そのまま収納に入れたので、熱々のままだ。
「ご主人様、これは美味しいですっ!」
ドラゴンの化身の着膨れたアンがぱくぱく食べる。このままだとこいつに全部もってかれてしまうので、僕とマイの分を確保する。
「多分、この唐揚げが王都で一番美味しいわ」
マイもぱくぱく食べる。マイがここまでハイペースで食べるのは珍しい。好物なのだろう。
「マイ、マイはこれを作れないのか?」
「一応作り方は解るけど、作るのがめんどくさいのよ。特にこの唐揚げはね」
「めんどくさいってどういう事なんだ?」
「唐揚げは大量の油の中に鶏を入れて揚げるんだけど、ここは温度の違う二種類の油の中に鶏を入れて揚げてるのよ。ただでさえ油は高いし、大量の油を温めて唐揚げ1回作るのに使った後の処理がめんどくさいから、専門店でしか普通作らないわ」
「それなら、俺の収納に入れとけばどうだ」
「あ、それいいわね。それならこの町でもいろんな揚げ物食べれるわね。じゃ、買い物にいきましょ!」
マイの顔がぱっと明るくなる。揚げ物がそんなに好きなのか?
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2口の携帯用の魔道調理コンロ、大きめの鍋2つにそれ用の油と油の予備と魔道調理秤。それに鶏肉を大量。いつのまに溜めてたのだろうか? マイは家一軒軽く買える程のお金を惜しげもなくポンポン使った。
「では揚げるわよ。この鶏肉は醤油という東方の調味料に昆布という海草で取った出汁とお酒とニンニクの微塵切りを混ぜたものに漬け込んだものよ。いつもだったら一晩漬け込むんだけど、すぐに食べたいから揉んで味を染みこませてるわ」
マイがいつになく饒舌だ。まあ、だけど、唐揚げは美味しかったからそれも頷ける。
「片栗粉という、芋から作ったでんぷんの粉にしっかりつけてしっかりはたいて揚げます」
マイはまず、少し低めの温度の方に肉を入れる。そしてしばらく揚げて、肉が揚がってきたときに一回油から引き上げた。そしてしばらく待ち、次は温度の高い方の油にいれた。
パチパチパチパチ!
油から音がする。油の匂いが充満し、食欲をそそられる。
「出来たわ。けど、あと1分位油がきれるのをまつのよ、これが重要よ」
すぐに食べようとするアンを制する。
「もう、おっけーよ」
マイから許可が出て、僕達は唐揚げを食べる。
「「「おいしい!」」」
3人ともハモる。嬉しい事に、僕達の食事は今後更に豊かになりそうだ。