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 荷物持ち勇気を出す


 この話で1000話になります。なんか、我ながら凄い数だと思います。それもひとえに読んでいただいてる皆様のおかげです。こんな私の書いてるものを読んでくれてる人がいる。それだけを原動力に進んで来ました。きりがいいので、今後はしばらく更新は不定期になると思います。新作に手を出しているのですが、やはり平行進行は難しいみたいですので。

 最後に読んでいただいてる皆様、本当に本当にありがとうございます。


「マイ、ちよっといいか?」


 僕はキッチンで料理してるマイの背中に話しかける。


「んー、なあに?」


 マイは首だけ振り返る。頭の猫耳がピコピコしている。ご機嫌よさそうだな。チャンスだ。なんかの本に書いてあったけど、何かを女の子にお願いする時は、相手の機嫌がいい時に限るって。

 改めて見ると、マイは可愛い。いや、かなり可愛い。出会った時はただの厄介者だと感じたものだが、あの時の僕はどうかしてたんだろう。まあ、あの時は僕を迷宮の落とし穴に突っ込んだ、冒険者パーティー『黄金の風ゴールデン・ウィンド』に復讐する事で頭がいっぱいだったもんな。他に全く目が行ってなかった。あの時の僕に助言が出来るなら、間違いなく『もっとマイを大事にしろ』と叱る事だろう。


「ザップ、どうしたの? 変な顔して?」


「それはだな……」


 いかん、緊張して口の中がカラカラになる。言え。ただ言うだけだ。『2人で一緒に旅に出よう』と。


 前に神竜王とのゴタゴタの時に、僕はマイに一緒に旅に出ようって言った。寒くなって旅し辛くなる前に、実行しようと思って、マイが1人っきりになる機会を待っていた。


 あの時、マイはドコにでもついて来てくれるって言った。それって間違いなくマイは僕の事を、す、す、す、す、す、す、好きって、こ、こ、こ、こ、こ、ことだよな……


 い、いかん、頭がバグってきた。よく考えると、マイは旅に出るのはOKと言うだけで、好きだとは微塵も言っていない。そうだよな。僕は人並み、いや、人以下の容姿だし、それに比べてマイは、間違いなく可愛い。一緒に歩いていると、すれ違う男の十人中九人くらいは振り返って二度見する。これは、実際臨海都市シートルで、カウントした結果だ。

 それはそうと、マイとの関係はずっと、訳分からない関係。同居者? パーティーメンバー? 数度ハグした事はあるが、手を繋いだ事も数える程しか無い。僕は出来ればもう少しマイと親密になりたい。これでも僕は男だ。出来れば、僕の彼女にしたい!




「なあ、マイ……」


「んん、なーに?」


 マイは手を洗ってタオルで拭きながら振り返る。ヒヨコ柄のフリフリしたエプロンが可愛いらしい。そして、小首をかしげて微笑む。

 いかん、余計意識してしまう。マイが少し前に出る。無意識の内に一歩さがる。鼓動が早くなる。痛いくらいに心臓が脈打つ。僕自身が心臓になっちまったみたいだ。

 気合を入れろ。僕は『最強の荷物持ち』ザップ・グッドフェローだ。勇者、黒竜王、神竜王など名だたる者を倒して来た。それらと対峙したときでさえもここまで緊張しなかった。僕の中ではマイが最強だ。最強に可愛い。


「マイ姉様、今日のご飯はなんですかぁ?」


 間延びした声と共にアンがやって来た。うお、マイに夢中で全く気づかなかったぞ。けど、安堵している僕がいる。2人っきりの時に誘わないとな。


 けど、ダメだ。ここで変わらなかったら、僕はヘタレのままだ。



「マイっ。一緒にたびゅに出よう」



 ウゲ、激しく噛んじまった……


「たびゅ?」


「旅だ、旅……」



「…………いいわよ?」



 え、いいのか!


 全身が熱くなる。


 やったぞおおおおおおーっ!


 心の中でガッツポーズをする。どこに行くかはまだ考えてないが、めっちゃ綺麗な景色の所でマイに思いを告げる。第一関門突破だ!


「じゃ、みんなに準備するように言ってくるね」


 パタパタとスリッパの音を立ててマイは消える。


 え、みんなと……


「うわ、ご主人様めっちゃ面白い顔してますよ。え、もしかして、マイ姉様と2人っきりで旅行したかったんですか? ダメでーす! 私が全力で阻止しまーす!」


 なんかドラドラゴンが言ってるが、耳を通り抜けて行く。あ、2人でって言ってねーや。そういえば前に約束してから時間経ってるもんな。あのあと直ぐに旅に出とけば良かった……


 まあ、けど、しばらくは今のままでいっか……


 

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