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 初めてのプレゼント


 あたしの名前はマイ最強の荷物持ち『ザップ・グッドフェロー』の自称右腕だ。あたしは今、ザップから貰った初めてのプレゼントを眺めている。ボロ布にしか見えないけど、これはあたしの宝物だ。つい抱きしめてしまう。これを貰った時の事は今でも鮮明に思い出す事が出来る。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「ねぇ、ザップ?」


 あたしは目の前の野人さんに声をかける。彼は地べたにあぐらをかいて、彼の武器の巨大な鉄球を何で出来ているかわからない汚い布で磨いている。パンツもはかないで、地面にじかで座って気持ち悪くないのだろうか? あたしは無理だ。


 それにしても凄まじかった。野人さんは早歩きで進みながら、たまに遭遇したトロールをその武器で一撃で叩き潰していった。トロールと言えば、その再生能力でかなり強い冒険者パーティーじゃないと歯が立たないって言われているけど、それが嘘のようだった。


 頭を一撃。


 物語を含めてあたしの知る限りではそんな事が出来る人は知らない。野人さんは間違いなく英雄と呼ばれる存在だと思う。


 けど、それにしても魔物との遭遇は少なかった。降りて来る時にはかなり戦ったのに。

 それに、道が分かれていても野人さんはノータイムで進んできた。なんかのスキルなのかな?


 ここまで、ずっと早歩きで、あたしは付いていくだけでやっとだった。けど、あたしは気付いている。あたしのペースが落ちると、それに野人さんが合わせてくれていたのを。


 んー、野人さん、いや、ザップは一心不乱に鉄球を磨いている。聞こえなかったのかなー? 


「…………ッ」


 つい、声を上げそうになるのを飲み込んで、あたしはザップから目を逸らす。だって腰巻きがめくれて見えちゃいけないモノが顔を出している。それを見ないようにしながら、気を取り直して話しかける。


「ザップのスキルって、魔物よけと階段探知なの? そういうレアスキルがあるって聞いた事があるわ」


 あたしは、ザップの言う事を聞き漏らさないように耳をそばだてる。ザップって、くぐもった声で呟くように話すから聞き取れない事があるから。


「……違う」


「え、じゃ、どうして敵がいないの? あと、ここって39層よね、ここ数年での最深記録ってここよね。フロアボスがボストロルで強すぎて誰も進めないって聞いたわ」


 ザップは不快そうな顔をして、磨いていま手を止める。もしかして、なんか嫌な事言った?

 ザップはあたしの方を見ているけど、あたしをを見てないみたい。なんか考え事してるのかなぁ?


「武器は使えるか?」


短剣ダガーを一応もってるわ」


 あたしは即答する。機嫌が悪い訳じゃないみたい。


 ザップは眉間にしわを寄せ、立ち上がると、空中から武器を出して並べ始めた。魔法の収納を持ってるっていうのは知ってたけど、すごいわ、どれだけ物が入るのだろう?


 巨大な斧、巨大な金槌、トゲがついた鉄球に鎖がついた武器などがある。ザップが武器を指差す。持ってみろって事?


 あたしはその中で1番軽そうな斧に手を伸ばす。あたしは荷物持ちをしてたので力には自信がある。痩せてるからそうは見えないけど、大人の男の人より力は強い。獣人っていう種族の特性だと思う。詳しい事は知らないけど。


「ううんっ!」


 つい声が出る。ナニコレ。重い。重いなんてもんじゃない。こんなの普通持ち上げられないわ。けど、少しでもいいとこ見せとかないとザップに愛想尽かされるかもしれない。そして置いてかれたら、あたしは生きていける自信がない。あたしは、大げさじゃなく、命がけで力を入れて持ち上げる。


「あたしは、荷物持ちで力持ちなのに……」 


 ザップはあたしを見つめている。軽く頷くと、その手には何か握られていた。


「十分だ。これを羽織れ」


 それはボロボロな皮か布かわからないものだった。つい鼻で息をするけど、臭くはない。見た目は汚いけど、洗ってはあるみたいだ。あたしはソレを広げてみる。羽織れって言ったって事はマントなのかなぁ? ちょうどいい感じに布? の隅が伸びていて満足みたいに纏う事が出来た。


「お揃いね!」


 あたしは頬が緩むのを感じる。昔聞いた事がある。未開の部族とかでは、自分の持ってる物と同じものを贈り物をするって事は家族の一員として迎えるって事らしい。つい耳がピコピコしてしまう。

 けど、相変わらずザップは憮然とした表情だ。


「行くぞ」


 収納に武器をしまい、ザップは歩き始める。隣の部屋には降りる階段が!


「え、階段? フロアボスは?」


「倒した」


「エエエエッ!」


 本当なの? と言う事は、誰もたおせなかったボストロルを倒したって事は、ザップって王都で1番強いの……


 けど、それよりもザップからマントを貰った事であたしの頬は緩みっぱなしだった。

 


 読んでいただきありがとうございます。


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最強の荷物持ちの追放からはじまるハーレムライフ ~
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