番外編SS 荷物持ち襲われる
「おい、そこの男、この娘の命が惜しければ、あっちの広場についてこい」
白昼堂々、往来の人が多い中、黒マントに黒い覆面の4人組が僕の前に現れた。
「ご主人様、助けて下さい」
そのうちの一人が、炬燵を守るドラゴンの化身のアンにマントごしに何か尖ったものを突き付けてる。覆面の声は、高い女の子の声で何か聞き覚えがある。
何の茶番だろうか? とりあえず広場について行く。
「私たちは、悪者だ! 尋常に勝負しろ」
僕を4人は広場で囲むと、一斉にマントを脱いで投げる。マントが宙を舞う。
完全武装の戦士、神官戦士、魔法使い、多分レンジャー。ああ、あの4人組か。駆け出し冒険者だったのに、マイとアンに魔改造された。この茶番は彼女らがアンにそそのかされたものだろう。
気が付くと、僕達を遠巻きに囲んで人垣ができている。何らかのアトラクションと思われているのだろう。
アンを脅す役だったのは魔法使いの少女で異様にでかい人参を突き付けてる。不毛だけど一応つっこんでみるか……
「それで、アンに何をするつもりなのか?」
「私たちと戦わないならば、口に突っ込むわ」
魔法使いは、人参でアンの頬をうりうりする。
「ご主人様、助けて下さい。それだけは勘弁してください。生人参を食べると甘苦くてぞわぞわするのですよ」
「黙って食え。終了」
僕は立ち去ろうとするが、戦士が立ち塞がる。
「問答無用。かかれっ」
5人は僕に襲いかかってきた。おいおい、アンは人質の役じゃなかったのかよ。
「ていっ!」
神官戦士が振るったメイスを奪って軽く頭をなでてやる。
「ミカ死亡。退場だ」
「ダブルファイヤーボルト」
魔法使いが炎の剣の二刀流で斬りつけてくる。その剣?を収納にしまってデコピンしてやる。
「ルル死亡。終了」
レンジャーが跳び退ると、両手で矢を投げてくる。その矢とほぼ同時に殴りかかってくる。速い。けどこいつらクラス関係なく肉弾戦特化されてるな。矢を消して、拳をかわしながら前方捻り宙返りで彼女の後ろに着地して、背中を人差し指で軽くつつく。
「デル死亡。退場だ」
背中に殺気を感じてサイドステップでかわす。アンだ危なかった。とりあえず、死なない程度にゲンコツをくれてやる。
ドゴッ!
アンは首だけ残して地中に埋まる。
「ご主人様、わたしだけ対応ひどくないですか? 一応レディーなんですけど」
「知らん。お前は頑丈だろ」
三人は大人しく退場して残るのは戦士アンジュのみだ。
「それで、アンジュその覆面はなんなんだ?」
「マイ姉様が、ザップ兄さんは悪党としか本気で戦わないって教えてくれたっす。私は悪党っす。本気で戦って下さい!」
そりゃ無理だ。女の子相手に本気で戦える訳がない。
アンジュが繰り出した渾身の突きをバク宙でかわす。
「さすがっすね、ザップ兄さん。本気でいかせて貰います」
斬りつけてくる剣を奪うが、躊躇いなく拳で突きを放ってくる。かわしてデコピンしようとするが、更に連打で攻撃が続く。
攻撃の切れ目で、一旦距離をとる。
どうしようか、八方ふさがりだ。倒すのは難しくない。けど、間違いなく彼女に何らかの怪我を負わせてしまうだろう。衆人環視の中それはまずい。アンみたいにノーダメだったら問題ないと思われるが、そううまくいくとは思えない。しょうがない。心を攻めるか。
交錯するたびに、彼女の装備を奪っていく。みるみるうちに戦士アンジュは覆面に下着だけになる。健康的なメリハリのある体を白い清純な下着が覆っている。それに黒い覆面。なんとも言えない格好だ。
「アンジュ。お前の負けだ。次は下着をとるぞ」
「うう、やるならやればいい! たとえ裸を曝そうとも私は戦う」
「「オオオオオオオオオオッ」」
ギャラリーから歓声が上がる。
ゴン! ゴン!
鈍い音が二回響き、僕とアンジュは大地に横たわる。
「もう、ザップ、何やってるの。あと、アンジュも女の子なんだからはしたない事しない!」
マイが腰に手をあてて仁王立ちしている。今全く反応出来なかった。強くならねば……
僕は強く心に誓った!