第十話 荷物持ち食事する
沢山の『いいね』ありがとうございます。この話がラストと同一で二位です。2022,5,7
「待って下さい! あなた、言葉がわかるんでしょ?」
猫耳少女は、僕の数歩あとを歩いてついて来ている。
僕は完全に無視する事にした。彼女はいないものとして扱おう。いつかついてくる事にも飽きていなくなる事だろう。
しばらく歩き、下る階段の部屋に着く。小腹が空いた。ここは安全地帯なので、食事にする事にする。収納から肉を出す。臭くて固いヘルハウンドのだ。これであと肉は残り11か。早く戻らないと心許ない。
「え、あなたどこからお肉を出したの?」
答えず、肉を頬張る。うん、くそ不味い!
「あなた、お腹が空いてるのね、待ってて、せめて助けて貰ったお礼に食事をごちそうするわ」
少女は大きなリュックを降ろすと、金属製と思われる水筒、小鍋と五徳と固形燃料、それと紙袋に入ったパンを出した。
「着火」
生活魔法で固形燃料に火をつけ、三脚に小鍋を置いて水筒を振って中の液体を小鍋に注いだ。僕はその動きから目が離せなくなった。
しばらくして、辺りに美味しそうな香りが漂い始める。
スープだ!
「ゴクリッ!」
僕は無意識のうちに喉を鳴らした。
そこには、僕の求めて止まなかった、人間の食事がある。
ほどなくしてスープは沸いて、それを少女は金属のカップに注ぐ。ナイフを出してパンを切って小皿にのせ、スープと一緒に僕の前に置いた。
えもいわれぬ、素晴らしい香りが辺りを包み込む。
駄目だ!
ここでこれをもらったら、彼女の面倒を見る事になるだろう。自分一人で生きていくのにやっとの状態でこれ以上厄介事を抱え込む訳にはいかない。
僕は断腸の思いで、スープから目を離す。
僕は自分自身の事で手一杯だ。人助けなんかしている余裕は無い!
ただ、己自身のために強くなることだけを考えて生きていく!
「これだけしかないけど、冷める前にどうぞ」
僕はスープを凝視する。
これは飲まないといけない。
これは最後の一杯なんだ。
迷宮に一人で放り出された、彼女の最後の食事だったんだ。
僕は震える手で受け取ってそれを口にする。
美味い!
美味いなんてもんじゃない!
まさに天に昇る気分だ。
薄味で具材はほとんど入っていないけど、僕は今までの人生で一番美味しいと感じた。カチカチのパンをスープに浸して飲み込む。ああ、食事だ人間の食事だ!
僕は気づいたら止めどなく涙を流していた。
「ごぢそうさま。ありがどう」
久しぶりに話したので、滑舌がおかしい。
食べ終わり、食器を渡すと彼女はそれを布で拭いて片付けた。
片付けるのを待って、僕は階段を降り始めた。後ろには少女がついてきた。
2023.9.4 久しぶりに口を開いたザップの言葉を変更しました。
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なんとこの話が4番目に「いいね」100突破!! ありがとうございますっm(_ _)m
2023.4.20