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第8話 フォレスの街



俺はひとまず、街へと帰ることにした。


念願の魔導士ライフを堪能したいところだが、

まずは師匠との義理を通す必要がある。


ゼメウスとの約束を果たすためには、

東の大陸に渡らなくてはならない。


だがそれには色々と準備が必要だ。

具体的に言えば金だ。



「忘れ人の磐宿」から街へは歩いて数時間。

だが若さを取り戻した俺の足では、

その半分の時間で行程をいくことが出来た。


しかもまったく疲れていない。

うん、若いって素晴らしい。

俺はそんな事をしみじみと思った。





俺が感動しながら森の街道を進んでいると、

やがて街の入り口が見えてくる。



わずかな時間しか経っていないはずだが、

なんだかとても懐かしく思えた。



森の街フォレス。

それがこの街の名前だ。


「おーい、止まってくれ」


街に入ろうとしたところ、

入り口の衛兵に声を掛けられる。


兜に隠れた顔をよく見ると知った顔だった。


彼の名前はエリック。

何度も挨拶したことがある、若い兵士だ。


エリックに声を掛けようとした瞬間、

彼の方が先に口を開く。


「あんた、この街は初めてか?悪いが身分証を提示してくれるか?」


「え?」


エリックの他人行儀な物言いに俺は驚く。


思わずなんの冗談だと口にしようとしたが、思い止まった。


考えてみれば当然だ。

彼が知っているのは老人だった頃の俺なのだ。


「なんだ?身分証が無いのか?それなら街に入れるわけにはいかないぞ?」


躊躇する俺にエリックが言う。


「えっと・・・いやそれがだな・・・」


まずい、このままじゃ完全に不審者だ。


どうしたものかと思案していると、

不意に後ろから声をかけられた。


「あの、どうかされましたか?」


俺とエリックが同時に振り向くと、

そこにはやはり見覚えのある顔。


魔導士ギルドの受付嬢、ラミアさんだった。


「ラミアさん!おかえりなさい。早かったですね」


エリックが背筋を伸ばし、叫ぶ。



「ただいま、エリックさん。はい、思いのほかすんなりと要件が済みまして。・・・ところでそちらの方は?」


ラミアさんは俺の方を見て、エリックに尋ねる。


「あ、はい。この男が街に入りたいそうなのですが身分証を持っておらず。残念ながらお引き取りいただこうかと思っていたところです」


エリックは敬礼をしながら言う。

エリックの言葉に、

ラミアさんは視線を俺に移した。



「・・・身分証を?あなた、失礼ですが何かあったんですか?身なりも、その、ボロボロのようですし・・・」


ラミアさんにそう言われ、

俺は自分の格好を見る。


たしかにダンジョンの探索や、

水竜との戦闘により俺の服はズタボロだ。

これでは不審者と思われてもおかしくはない。


ラミアさんに言われ、

なんとも恥ずかしい気分になった。



「・・・実はダンジョンで迷ってしまい、命からがら脱出したばかりなのです。荷物もそこで無くしました」


俺はラミアさんに正直に話す。

これは嘘ではない。


「ダンジョンに?と言うことは貴方は魔導士なのですか?それなら魔導士ギルドで仮の身分証が発行出来ますよ」


ラミアさんが言う。

その言葉に俺はドキリとする。


「おぉ、あんた魔導士だったのか!それなら早く言ってくれ。ラミアさん、すまないが彼を魔導士ギルドまで連れて行ってやってくれないか?仮の身分証が出来たら戻ってきて見せてくれればいいから!」



俺が魔導士だと分かった瞬間、エリックは態度を軟化させた。


いやラミアさんの前だからと言う可能性もあるが。

とにかく俺は無事にフォレスに入ることが出来た。

ラミアさんのおかげだ。


しかし、魔導士か。

魔法の力を手に入れたとはいえそう名乗ってしまって良いのだろうか。

俺はうんうんと頭を悩ませた。



俺とラミアさんはエリックに見送られ街の中へと入る。

あまり時間は経っていないハズなのに街の様子に違和感を感じる。


俺はキョロキョロと辺りを見渡した。



「ふふ。外からの方からすると珍しい街並みですか?フォレスの街は、初めてですよね?」


ラミアさんは尋ねた。


どうやら物珍しく見ていたのが、

そういう風に見えたらしい。


たしかにフォレスの街は自然が多く、

木造の建築物が多い。



「あ、はい。すみません、つい珍しくて」


俺は話を合わせる。


「ふふふ、自然しかありませんが良い街ですよ。私はこの街の生まれですが、この街が大好きです。ぜひゆっくりなさってください。申し遅れましたが、私はラミア・リンドです。みんなにはラミアって呼ばれています」


ラミアさんは俺に頭を下げた。


「あ、こちらこそ。俺はグレイです。家名はない、ただのグレイ。」


おれの自己紹介に、ラミアさんは笑顔で答える。

俺はその笑顔にドキッとした。


「はい!よろしくお願いします!グレイさん」


ラミアさんは、そのまま俺に街の大まかな地図を教えてくれた。


武器屋、道具屋、薬屋、市場に、宿場が集まる通りなど。

やがて歩き続けると、

大通りの正面に、一際大きな建物が見えてきた。



「ここが魔導士ギルドです。実は私はここの職員なんですよ」


ラミアさんが笑う。

俺は再びその笑顔に見とれてしまう。

うーん、可愛いな。


老人であったときは何も感じなかったが、

こうして見るラミアさんは非常に魅力的だ。


年相応の男であればこれは間違いなく惚れる。

エリックの態度も納得と言うものだ。


だが長らくそう言ったことから遠ざかっていた俺は、

なんとも不思議な感覚に戸惑うばかりだった。

どうやらこういった感情の方にはまだまだ老人だった頃の名残がある様だ。





「お入り下さい。ここが魔導士ギルドです!」


ラミアさんが胸を張っていう。


「ありがとうございます。」


俺はラミアさんに促され、

ギルドの中へと入った。



・・・

・・



ラミアさんに案内されたのは、

受付の奥にある、

間仕切りのされているスペースだった。


先ほどから彼女は書類を読みながらうんうん唸っている。


「・・・あの、私考えたんですけど」


ラミアさんが言う。


「・・・なんでしょうか?」


俺は尋ねる。


「・・・グレイさん、どうせならうちの魔導士ギルドに魔導士として登録しませんか。そうすれば仮の身分証ではなく、魔導士の登録証が交付できます。あの、すぐにこの街から旅立ってしまうのであれば別ですが」


「登録・・・ですか・・・」


登録証。

それは魔導士だけに発行される身分証だ。

魔導士であることを示す唯一の公的な証。


魔導士はギルドを通して様々な優遇を受けることが多く、

登録証一枚あれば出来ることはかなり増える。


危険地域への立ち入り、

秘匿情報の開示。

それからギルドと通じて手紙なども無料で出せる。


無論、仮の身分証なんかよりそちらの方が良いのは山々だが・・・

俺には一つだけ懸念点があった。


「それは魔導士試験を受け・・受け直すってってことですか?」


俺は一番の懸念点を確認する。

大陸の最も大きな街で受けられる魔導士試験。


『僕』であったころは散々あの魔導士試験に落ち続けたのだ。

半ばトラウマにもなっている。


「いえいえ、そんな!グレイさんが既に魔導士なのであれば、今回の分は再発行の上、うちのギルドの所属に書き換えと言うことになりますので。魔導士試験ほど手間のかかることをしていただくなくとも結構です!」


ラミアさんは、

俺の質問を面倒を忌避するような意図のものだと勘違いしてくれたようだ。



俺の目下の目標は師匠との約束を果たすことだ。

そのためには東の大陸に行く必要がある。



東の大陸に渡るためには船での移動が必要となる。


そうなると、

交易の起点である西の都から出立する必要があるだろう。


まずはそこを目指さなくてはならない。

その為にはそれなりの旅費が必要で、

俺は現在無一文だ。


となるとある程度やるべきことは限られてくる。


よし、決めた。

しばらくはこのフォレスで路銀を稼ぐことにしよう。



「では、それでお願いしても良いですか?」


俺はラミアさんに返事をする。

『僕』であった頃はなるべく正直に生きたいと願っていたが・・・

背に腹は変えられない。


これくらいの嘘であれば神様も許してくれるはずだ。



「はい!承知いたしました。任せておいてください!」


ラミアさんは元気よく答えた。








ラミアさんから渡された登録用紙に必要な事項を記入していると、

ふと正面から視線を感じた。


顔を上げると、

ラミアさんが俺の顔を凝視していた。


「わっ!」


俺は驚いて声を上げる。

はずみでペンを落としてしまう。

あまりに距離が近いので心臓が飛び出るかと思った。

 

「すみません!驚かせてしまって・・・」


ラミアさんは慌ててペンを拾い、

俺に渡してくれる。


その後、再び紙にペンを走らせる俺。

相変わらず視線を感じる。


何かを思案し、

躊躇していたラミアさんは意を決したように俺に質問した。


「・・・あ!あの、記入中にすみません。つかぬことをお伺いしますが、グレイさんはこの街にご家族か、血縁のかたはいらっしゃいますか?」


俺はその質問にギクリとする。

気が付かれないように記入したまま顔を上げずに答える。


「えっと・・・この街に来るのは初めてですが。なにかありますか?」


焦りが表情と声に出ぬよう、

努めて回答する。


「そ、そっかぁ・・・。そうですよね。すみません、知り合いの方にとても雰囲気が似ていたものですから」


俺から答えを得ると、

ラミアさんは目に見えてしょんぼりとした。


「・・・はは。その、知り合いと言うのはどういう方ですか?」


俺はラミアさんに質問する。

ラミアさんは俺の顔を見て答えた。



「その、以前こちらの魔導士ギルドで仕事をしていただいていた荷物持ち(ポーター)さんです。」


俺はその言葉にギクリとする。


「そう、なんですね・・・、すみませんそう言った方は知りませんね」


俺は動揺が表に出ないよう、努めて冷静に答える。


「そう、ですよね。すみません。本当に」


ラミアさんが答える。


うん、大丈夫。しっかり誤魔化せたようだ。

考えてみれば魔法で若返ったなんて、バレる可能性は低い。


冷静さを幾分か取り戻した俺は、

興味本位でラミアさんに尋ねてみた。


「・・・その方は、どんな方だったんですか?」


誰だって、自分の評判と言う物は気になるものだ。

俺の言葉にラミアさんが顔をあげる。



「・・・物腰は柔らかい方なのですが、なんていうか人を寄せ付けない雰囲気がありました。他人に深入りせずに自ら孤独に向かおうとしているようなそんな雰囲気。でも時々話してくれる時にはとても優しくて、お仕事も真面目で、魔導士さん達からは評判の荷物持ち(ポーター)さんでした」


思いがけない評価。


うん。どうやら『僕』の事で間違いないようだ。

ラミアさんが自分のことを褒めてくれているのはとても嬉しい。


だが人を寄せ付けないなんて言われたのは初めてだ。

たしかに僕は人との関わりを積極的に持とうという気はなかったかも知れない。

一定以上の深入りも避けていた。

彼女はそんな僕を心配してくれていたのかと今更ながらに納得する。


うーん、これ以上聞いていいものか。

そういえば今、『僕』の事はどうなっているのだろうか。



「その方は、今はどうされたんですか?」


ラミアさんは再び視線を落として言った。


「一年ほど前に亡くなりました。有名な<紅の風>様の調査に同行していて、水竜に襲われたとのことです」



・・・

・・



「はい、ありがとうございます。こちらで結構です。少々お待ちいただけますか」


ラミアさんは俺に渡された記入用紙を確認し、

そのままギルドの奥へと入っていった。


記入したのは名前だけ、

【職業】と書かれた欄があったが、

そこには黒魔導士と書いておいた。


本当は荷物持ち(ポーター)だったけど、大丈夫かな。

俺は少し心配になった。

俺がそわそわしていると、

奥からラミアさんが顔を出した。


「お待たせしました!こちらへどうぞ」


ラミアさんに促され部屋に入ると、

そこは暗幕に覆われた暗がりの部屋であった。

部屋の正面で水晶が光っている。


あれは確か・・・


「すみません、ラミアさん。これはもしかして・・・」


ラミアさんは不思議そうな顔をする。


「えっと、ご存じないですか?これは魔力測定器(ラクリマ)ですけど・・・」


魔力測定器(ラクリマ)

魔導士でなかった俺には無縁のものだったが、

名前だけは聞いたことがある。


「あ、いえ。この形のものを見るのは初めてだったので。魔導士の魔力量を測定する器具・・・ですよね?」


「そうです!すみませんお恥ずかしながら古い型でして。もしかしてグレイさんは都の方からいらしたんですか?そちらの最新の魔道具と比べてしまうとあれですが、これでもきちんと測定は出来るんですよ!」


ラミアさんは自ギルドの設備を擁護するように言う。

そういうことではなかったのだが、

上手く誤解してくれたようなので良しとするか。


「では、こちらに手をかざして魔力を放出していただけますか?その波長を登録証に刻み、グレイさんのものとしますので・・・」


なるほど、そういうことか。

俺は魔力測定器(ラクリマ)に手を伸ばした。



静かに、掌に魔力を集中する。

全身から温かい何かが手の先に集束し、そこで螺旋を描く。

回転はしだいに大きくなり、だんだんと周囲の空気と溶け合って―――――



「はい、ありがとうございます!」


ラミアさんが声を上げる。

その声に俺はハッとする。

つい集中に入ってしまうところだった。


魔力測定器(ラクリマ)の測定値が出ましたら、登録証に転写して完成しておきます。お手数ですが、また明日ギルドに来ていただいてもいいですか?」


ラミアさんは申し訳なさそうに言う。


「ええ、大丈夫です。もちろん」


ラミアさんに挨拶をして、

俺は魔導士ギルドを後にした。



・・・

・・



「さて、どうしたものか」


俺は街を適当にふらついた。

夕暮れ時の街。

家路につく人々は多い。


欲しいもの、必要なものは多い。


温かい食べ物、新しい服、武器。

素材剥ぎ取り用のナイフ。

仕事用のカバン、旅用のカバン。

キャンプ道具、水筒、雨具。


だが目下必要なのはやはり――――――


「寝床、だな」


日中のフォレスは温暖だが、

夜半から明け方にかけてはかなりの冷え込みとなる。

装備なしでの野宿は危険だろう。

俺は宿場町の方へ向かった。





『夕暮れのポイズントード亭』


俺の目の前には一軒の宿屋がある。

宿場町の端っこの端っこ。

中央の通りから最も遠い場所にある宿だ。

ボロボロの建屋で、見るからに安そうでくたびれた雰囲気。

ここはかつて俺が常宿にしていた宿だ。


一泊1000ゴールド。

一文無しの俺には手の出ない金額だが、

なぜか足が向いてしまった。


俺は宿の中を覗く。

そこにはあの意地の悪い女将さんが、

いつものとおり不機嫌そうに座っていた。

なんだか懐かしい光景だ。


「なに見てんだい」


女将さんは俺に気が付き声をかけてくる。

いつもどおり不機嫌そうな声だ。


「いえ、すみません。宿を探していたもので」


「ハンッ、ウチなんかに泊まるのは貧乏人か変わり者だよ。今日はもう満室だ、他を探しな」


女将さんはそう言って、めんどくさそうに言う。


だが俺は知っている。

この宿が満室になることなどほとんどない。

彼女は仕事が面倒臭くなると、

こうやって客を断ってしまうことがあるのだ。

大丈夫なのか、

夕暮れのポイズントード亭の経営は。

そんな事を思う。




しかし、やはりここも無理か。

夕暮れのポイズントード亭でも無理と言うことは、

今晩は宿に泊まることは不可能だろう。

ここより安価な宿はこの街にはない。

覚悟を決めて野宿だな。


俺が宿屋を出ようとすると、

女将さんが俺の顔を凝視していることに気が付いた。

なんだろう。俺は彼女に尋ねる。


「あの、なにか?」


「あ、いや。・・・あんた、ここに以前泊まっていた灰色の爺さんに似てる気がしてね」


俺は彼女の言葉にドキリとする。

まさかラミアさんだけでなく、

彼女の口からも『僕』の話が出るとは思わなかったからだ。



「灰色の、お爺さんですか?すみません。この街には初めて来たものでよく分からなくて」


俺はラミアさんに答えたのと同じ文句を言う。


「・・・ああ、分かってるよ。だけど、なんか思い出しちまってね。小汚くて金の無い爺さんだったけど、ただ一人毎日あたしに挨拶してくれたんだよ。もちろんあたしが挨拶を返したことなんてなかったがね」


彼女は大きくため息をつく。

俺は彼女に質問した。


「そのお爺さんは、どうされたんですか?」


女将さんは顔を上げて答えた。


「死んじまったよ。1年前に。<紅の風>を水竜から庇ったんだってさ。・・・まったく灰色のくせになに無理してんだいって感じさね」


ラミアさんが言っていたのと同じ情報だ。


彼女の口から吐き出される、厳しい言葉。

だが俺には、女将さんが『僕』の死を悲しんでいてくれているように見えた。


まさか、そんなことが。

俺は動揺から、言葉を繋ぐことが出来なかった。



「何、阿保っぽい顔して呆けてんだい。あんた泊まるとこないんだろ?」


女将さんが俺に尋ねる。


「え、はい。そうですがお金も無くいっそのこと野宿しようかと・・・」


俺は答える。

そんな俺に女将さんは言った。


「気が変わったよ、泊まっていきな。金がないなら今日は金も要らない。・・・変な愚痴を聞かせちまった詫びだよ」


思いがけず俺は今夜の寝床を手に入れた。

だが俺は女将さんの反応に戸惑いを隠せなかった。


なぜならば俺には彼女が、

とても優しい人間かのように写ったからだ。


俺は女将さんに指定された部屋に入り、

ベッドに横たわる。

そこで今日、起きたことを思案した。


『僕』が死んでからダンジョンの外では1年も時間が経っていたようだ。

たしかにゼメウスとの修業は1年、

いやもっと長かったような気がする。



だがそれより俺を驚かせたのは、

ラミアさんや女将さん、

僅かばかりの付き合いがあった彼女たちが、

僕の事をしかと覚えていてくれた事だ。


誰も『僕』に興味を持つ人間は居ないはずだった。

灰色で老いぼれた『僕』に構う人間など一人も。


だが女将さんは『僕』は死んだことで、

恐らく悲しんでくれている。

俺の目が曇っていなければおそらくラミアさんも。


心の中に湧き上がるもやもやとした感情。

これはきっと罪悪感だろう。


俺は二人に今すぐ正体を明かし、

心配をかけた事を謝罪したい衝動に襲われた。


だがそれは出来ない。


灰色の『僕』が『ゼメウスの箱』を手に入れて、

大魔導ゼメウスの魔法で若返り、

あまつさえ彼の弟子となった。


そんな荒唐無稽な話を誰が信じると言うのだろうか。

馬鹿にするなと怒らせてしまうのが関の山だ。


今の俺は魔導士グレイ。

それ以上でもそれ以下でもない。

ただのグレイだ。


無理やりにそう納得すると、

俺は灯りを消してベッドに入った。



「<ファイア>」



俺の掌に小さな火球が生まれる。

温かく包み込むような炎。


その揺らめきだけが今の俺を魔導士だと証明してくれていた。


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