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第107話 図書館迷宮



翌日、血の文字が気になった俺は、

朝早くにギルドを訪れる。


うん。

正直に言うと、

怖すぎてよく眠れなかった。



海を隔てても同じ慣習なのか、

朝一番のギルドは人も疎らだ。




俺はとりあえず昨日のシスターの姿を探す。

特に意味は無いが知ってる顔の方が聞きやすい。



だがそれより先に、

一人のギルド職員の男性の姿が目に入った。

それは俺の登録証を更新してくれた、

あの軽い男だった。



「あの、すみません」


俺は彼に話しかける。


「あ~、おはようございます。お兄ィサン、朝早いッスネ」



男は俺を見ると挨拶をする。

見れば彼はギルド内の掃除をしているようだった

言葉遣いはあれだが意外ときちんとしているようだ。



「お、おはようございます。ちょ、ちょっと聞きたい事があるんですが」


礼を失しない様に俺も挨拶をし、尋ねる。


「聞きたい事?ナンスか」


男は不思議そうに尋ねる。


「・・・その、俺の登録証。昨日更新して貰ったんだけど変、

なんです。何か知らないですか?」


俺は尋ねる。


「・・・お兄ィサンの登録証ッスカ?知らないッスネ。昨日更新した時も、特に異常は無かったスヨ」


彼は答える。



「・・・中身を見ましたか?」


俺は尋ねる。


「ちょっと!そんなワケ無いっすよ!俺らギルド職員はマジ仕事に誇り持ってるんで。魔導士さんの登録証の中見るのは、絶対しないっす」



彼は少し大きな声で答えた。

どうやら失礼な事を聞いてしまったようだ。



「・・・そ、そうですよね。すみません」


俺は頷いた。


どうやらあの血文字に、

ギルド職員たちは関係ないようだ。



「・・・俺もギルド職員歴長い訳じゃないすけど、登録証に異常なんて聞いた事ないっスよ」


彼は言う。


そこで俺はふと考えた。



登録証。

銀色の金属で出来た、小さな長方形。

その中心には魔導士ギルドの証である、

双頭の竜が描かれている。



フォレスの街で登録をしてから、

なんとなく使ってるが、

そもそもこれは一体なんなんだろう。



どうして、俺の名前が浮かび上がる?

どうして俺の能力が分かる?

そしてどうして、

俺がゴブリンを大量に倒したことが分かる?




今まで気にもしてなかった事。

だが一つの疑問をきっかけに、

俺の中で疑問が次々と生まれる。


俺には目の前の金属の塊が、

とても異質なものに思えてきた。



「あの・・・教えていただけますか?。登録証ってなんですか?どうして、俺の情報が勝手に書かれるんです?」



俺は彼に尋ねる。


「・・・お、お兄サン。大丈夫っすか?そんな事聞かないでくださいよ。登録証は魔導士だけが持つことを許された魔道具。分かってるのはその作り方だけで、原理なんて誰も知らないのが常識じゃないッスか・・・」


彼は困ったように言う。

その言葉に俺は狼狽える。



「誰も・・・知らない・・・?」


俺は呟いた。


「そうっスヨ。登録証はずっとずっと昔からあったっす。魔力測定器(ラクリマ)に魔力を通すと、情報が更新される。分かってるのはそれだけっす」



彼は言う。


「そんな・・・そんな話・・・」


知らなかった。


登録証こそが、魔導士である証。

俺の理解の登録証に関する理解はそれくらいだったのだ。




「あ、でもこれはギルド職員の祖母ちゃんに聞いたんすけど・・・」


彼は続けて話し出した。



「昔から登録証が更新されるのは、魔力の神が見てるからだって言ってました。マジ魔力の神凄いっス」



彼はそう言って笑った。



俺は彼に礼を言って、

ふらふらとギルドを後にする。

結局それ以上登録証の事は分からず、

ブルゴーに帰ってからゆっくり調べることにした。


ロロに相談すれば、

何か分かるかも知れない。

俺はそんな事を考えていた。




・・・

・・




「・・・出鼻をすっかり挫かれたけど・・・集中しないとな」


俺がそう言って顔を叩く。

俺が今から向かうのは、

最高レベルの難度を誇るダンジョンだ。



テジョンの街から三十分程。

いくつか丘を越えた先に、それはあった。


龍の姿を象ったと思われる大きな石像が二体。

内側を向いて、

向かい合わせになるように置かれていた。


その間には歴史を感じる古い石畳が敷かれており、

道の様にまっすぐと伸びている。


そしてその先には、

塔の様な建物が聳えていた。


あれがダンジョン、

図書館迷宮。



地上に出ている姿は図書館迷宮のごく一部。

地下へと深く伸びた地下書庫が、

図書館迷宮の本体だ。



俺は本で読んだ、

あの図書館迷宮の前に立っていることに感動する。



登録証で沈んでいた心は幾分か緩和され、

俺は塔へと歩を進めた。




「・・・こんにちは、魔力の使徒よ。許可証はお持ちですか?」


入り口のところで、

ギルド職員と思われる女性に話しかけられる。



「あ、はい・・・」


俺は昨日ギルドでもらった許可証を渡す。

ギルド職員の女性はそれに目を通した後、

俺を見て頷いた。


「はい、大丈夫です。図書館迷宮はご存じの通り、ダンジョンではありますが、天然のダンジョンとは少し異なる点がありますのでご注意ください」


「異なる点?」


俺は尋ねた。


「はい、まず図書館迷宮は歴史上、踏破した魔導士は存在しないと言われています。その最たる理由は、天然のダンジョンに存在する安全地帯や、魔法転送装置(ゲート)が存在しないためだと言われています」


ギルド職員の女性が言う。


「なるほど・・・それは厳しそうですね」


俺は答えた。


「ええ、ですから。行きだけでなく帰りの事についてもよく考えて探索をしてください」


ギルド職員の女性は言った。

俺はそれに頷く。


「それから中の本については図書館迷宮の保護の観点から、持ち出しが禁止となっております。こちらを破りますと、二度と図書館迷宮に入ることが許可されなくなりますので、本の持ち出しは絶対にやめてください」


「分かりました」


俺は答える。

なるほど厳しめの申請と許可が必要なのはその為か。


通常のダンジョンであれば中の物はほぼ取り放題だが、

図書館迷宮の蔵書は、それ自体は有限のもの。

取りつくせばダンジョンそのものが存在出来なくなる。



それから幾つかの諸注意を説明し、

ギルド職員の女性は俺に尋ねた。


「・・・説明は以上です。何か質問はありますか?」


俺は気になっていたことを尋ねる。


「『永遠の挑戦者』、と言う本をご存じですか?」


それはゼメウスに探すように言われた本の名前だ。


「『永遠の挑戦者』・・・ですか。すみません。中には数えきれないほどの蔵書がありますので・・・」


彼女は答える。


「そうですよね。ありがとうございます」


俺は彼女に礼を言った。




「では、こちらが図書館迷宮への入り口です」


そう言ってギルド職員の女性に案内されたのは、

何の変哲もない地下室への階段だった。


「・・・これが・・・」


俺は呟く。


「図書館迷宮ですからね、ダンジョン特有の扉もありません」


彼女は答えた。


俺はゆっくりとその階段に足を掛け、

一段ずつ降りていった。



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