第九話
諸注意!!
本話には一部、「Angel Beats!」の内容が含まれて居ます。
閲覧にはご注意ください。
剛志が「一緒にゲームをやろう」といった日から毎日、二人で昼休みにゲームをする事が習慣になっていた。特段、友達になったつもりはなかったが、ゲームの攻略のために剛志の存在はちょうど良かった。
いや――――そんなのは建前だな……本音とは少し違う。
現実を紛らわすために始めたはずのゲーム……。
それが今や、二人でやる事で少し楽しくなったような気がしたのだ。
正直、なぜそう思ったのかは分からない。でも、俺はそれが退屈な学校生活の中で唯一の生きがいになっていたのは間違いない。
そんな生活が続いていたある日の昼休み。
いつものように剛志とゲームをやっていると唐突に趣味の話になった。
「大輔って他に趣味あるのか?」
「いや、特にないな……剛志は……あるのかよ、他の趣味」
「ああ! 最近はアニメにハマってるんだ。ゲームじゃないから展開は弄れないけど……これが面白いんだよな~? 大輔はアニメとか興味ないのか?」
「いや……特段、興味はねぇな」
「あ……。そ、そうだよな……」
俺は、全くもってアニメには興味がなかった。
でも、あの時、俺はもし、この話に乗らないと、剛志にも「付き合いが悪い」と思われるんじゃないだろうか? そして、くだらない学校生活の中で唯一の楽しい時間が消えちまうんじゃないかと考えていた。
だから、反射的に答えちまったんだと思う。
「…………。で……どんなアニメなんだよ?」
「お? 興味出たか?」
「ま、まぁ……な? ゲーマーを喜ばせるほどのアニメなんだろ?」
「おいおい……! 俺を勝手にゲーマー認定するなよ……」
「十分、ゲーマだろうぉ……?」
この辺りから俺は剛志が”友達”かもしれないと思い始めたのだった。
その日の翌日、剛志は”あるDVD”を学校に持ってきた。
そのタイトル名は『Angel Beats!』――――
昨日、剛志に帰り際に薦められたアニメだった。
正直、言うと俺はそのDVDを渡された時……。
「アニメねぇ~……。そんなのどこが面白いんだか?」と思っていた。
そのアニメの概要を個人的にざっくり説明すれば……。
主人公、音無が死後の世界で目覚め、その世界で理不尽な人生を強いた神に復讐することを目的にしている「死んだ世界戦線」のメンバー達と出会い、人生とは何か、生きる意味、命とは何かを見つめていくストーリーだった。
俺としては「たかが、アニメ……」だと高を括ってみていた。
だけど、そのアニメを見た時から明らかに俺の心の何かが変わった。
他人が見れば「お前、単純なんだね?」といわれそうだが……俺は主人公の音無や戦線のリーダーであるユリの生前に共感したのだ。
特に主人公の音無は妹の初音が死んだ後、「誰かのためにこの命を費やせるのなら」と医者になるべく勉強をしたが、その夢は電車事故によって潰えてしまうというもので俺の心に衝撃を与えた。
そして、最終話……メインヒロインが言った言葉――――
「生きる事は素晴らしいだって」という一言で俺は涙を流した。
正直、言葉にするのは難しいが、あの時俺は「Angel Beats!」という物語を通して生きる意味を見出せたんだと思う。
もっと明確に言えば人生と言うものに向き合う機会になったのだ。
「俺の人生、命はどの方向に向かえばいいんだろう……。」
「Angel Beats!」を見終えた後、俺はそればかりをずっと考えていた――――