名も無きダンジョン 3
いつの間に!
今まで生き物の影さえ見えなかったのに、何処から湧いて出てきたのだろうか?
それよりも一匹でも死にかけていたのに、いきなりこの階層の残り9匹が集合するなんて死確定じゃないか。
仲間が殺されて、その仕返しに集まったのだろうか?
兎達は僕達の周囲に集まり、周りをグルグルとステップを踏みながらダンスをしている。
いや、ただ単にダンスしている訳ではないだろう。
虎視眈々とこちらの隙きを伺っているんだ。
隙きを見せたら一斉に襲ってくるに違いない。
「どうする?」
尋ねた僕の心配を余所に遥は、
「丁度良かったじゃない。
探す手間が省けて」
「えっ!兎が9匹もいるんだぞ」
「高が兎でしょ。
先手必勝!」
そう言うと遥は兎の群れに飛び込んで行った。
意外にも兎はその動きに驚き、規則正しい円行動から、それぞれ至る所に散らり兎の統制された行動は、あっという間に崩れ去った。
「ほら、チャンスよ!」
遥が声をかけるも、何がチャンスなのか僕には分からなかった。
だって、たった1匹の兎にさえ殺されかけたのに、いくら兎がバラけたからといって、どうすれば良いのか分からなかった。
参考までに遥は…。
そう思い遥の方を見ると一匹目に切りかかり倒している所だった。
凄い…、これでレベル3だなんて僕もレベル3に上がればあのくらい簡単に倒す事が出来るのだろうか?
そう思っていた時、目の片隅で黒い影が動いた。
…危なかった。
際どいタイミングだった。
ちょっとでも躱すのが遅れていたら、またさっきの二の舞となる所だった。
躱すというか、兎が襲いかかった時、僕は驚き体勢を崩してしまった。
そのお陰で兎は僕に当たる事なく通り過ぎて行った。
躱すつもりはなかったが、兎の攻撃は当たらなかったから、僕が躱したと言っても大丈夫。
そう自分自身に言い聞かせたが、納得がいかない。
それに崩れた体勢のまま尻もちをついて倒れてしまったから、ちょっと格好悪かった。
この姿を見られていないか気になり、遥の方を確認したが、こちら方など気にせず、2匹目の兎を狩っていた。
まずい。
いくらレベル差があるとはいえ、まだ僕は一匹も倒していない。
遥は既に2匹目を倒しているというのに、これじゃ僕が足手まといでしかない。
せめて一匹でも仕留めないと、遥かにも、クランメンバーにも、『コイツつかえねぇな』とか『コイツいらねぇ』とか言われそうだから、何とかしないといけない。
だけど、僕はまだモンスターと戦った事などない。
どう戦えば良いのかさえ分からない。
考える場合じゃない。
当たって砕けろだ!
砕けたら駄目だけど、まずは狙うは隙きのある兎。
周りに目を配り、兎の位置を確認する。
いた!
まずはこちらに背を向けて、遥の方にしか目がいっていない兎。
アイツだ!アイツにしよう。
よし、僕はナイフを握り締め、気付かれないように動作はゆっくり、でも、なるべく急がないと、いつこちらに気が付くか分からない。
僕の鼓動は大きく、気持ちは高ぶっていた。
殺れるのか?
段々と兎との距離が縮まり、あとは少し走ればナイフの届く位置まで来た時、兎はこちらに顔を向ける素振りをした。
こちらの気配に気がついたのか、それとも仲間の兎が何かしらの合図を送ったのかは分からなかったが、その瞬間、僕の身体は動いていた。
振り返る前に仕留める事が出来れば問題ない。
周りなど見る余裕などなかった。
目標と決めた兎。
この一匹だけでも倒しておきたかった。
だが、こんな状況でもハプニングは起きるもので、僕が駆けようとした時、緊張の所為?初めての狩り?なのか足が上手く動かす事が出来ず、足がもつれ、兎に頭からスライディングするような形でズッコケてしまった。
やってしまった。
折角のチャンスだったのに…、ドジだなとしか言いようがない。
自分でも笑えてしまう。
情けない。
そう思いながら立ち上がると、目の前には僕がさっきまで握っていたナイフが刺さった兎が息絶えていた。
偶然?実力?神様は僕を見捨てていなかった。
たまたまとはいえ、兎を倒した事には間違いない。
僕の初めての獲物、感動したというよりかは、自分の手で倒したという実感がイマイチわかなかった。
まともに倒してないからだ。
次こそは実力で倒してやる。
遥は4匹目を倒していた。
書く暇が無く短くなってしまいました。
すいません。
次回は何とか長く書きたいと思います。