オロチクラン 2
ヤバい!寝過ごした!
僕は慌ててベットから飛び起き着替えた。
外は既に明るく太陽も高くも昇っている。
今日から新しいクランなのに初日から寝坊してしまった。
例えお試し期間があるとはいえ、いきなり寝坊するなんて、正式に入団することになった時、「いや、お前はいつも寝坊するから駄目だな」と言って断られたら目も当てられない。
寝坊したのは今日だけなんです。
昨日、かなり歩いていたから疲れが溜まって。
言い訳をずっと考えていたが、悪いのは冒険者になろうというのに基礎体力のない僕が悪いのだから、言い訳せず謝ろう。
そう思い部屋から出た。
部屋を出ると長い廊下。
廊下の両側に幾つか扉が有り、部屋を出て右側には僕達が入って来た玄関があり、左側から笑い声が聞こえてくる。
一人じゃない。複数の笑い声が聞こえる。
皆、そこに集まっているのか?
僕は急いで声のする方へと急いだ。
ドアを開け部屋には入ると、そこは丸く広いリビングルームとなっていた。
外から見た時の円柱形の場所のようだ。
遥と昨日、玄関で迎えてくれた男性、そして見知らぬ人3人がソファーに座り、雑談をしていたようだ。
そこへ僕が部屋に入って来たので、話が中断し、一斉に僕の方を見た。
その光景に一瞬戸惑ってしまうが直ぐに、
「すいません!寝坊しました!」
頭を深々と下げ謝った。
しかし、何の返事もなかった。
怒っているのだろうか?
返事がないと、頭を上げる事も出来ない。
愚痴を言われるのだろうか?
初日から寝坊するなんて、僕の第1印象、悪すぎるだろう。
冷や汗を垂らしながら、暫く頭を下げたままでいると、
「ぷっっ、ワハッハッハッハ」
皆が笑い出した。
何が起きたのか、全く理解出来なかった。
僕は状態を少しずつ戻しながら、周りを確認したが、やはり僕を見て笑っていた。
何か僕、面白い事やったかな?
まさか、服が逆とかチャックが開いているとか…。
確認するが大丈夫そうだ。
「いや、済まない。突然、笑ってしまって」
「だから言ったでしょう」
そう遥が答えていた。
何を言ったんだ遥?
とても気になってしまう。
「実は寝坊した君が最初に何を言うかという話になってな。
僕達は、まず、おはようございますと言うだろうと予測していたんだが、遥さんが君ならまず一番に謝るだろうと、流石はパートナーだな」
「いや〜、それほどまでは」
そう言いながら遥は照れていたが、遥とはまだ出会ったばかりだ。
お互いの事など何もわからないはず、たまたま感が当たった。
それだけの事だと思う。
「それでハルト君、遥さんから聞いたよ。
ギルドからここまで歩いて来たんだって、皆、驚いていたんだよ。
僕達ならバスを乗り継いで、山の麓から歩いて登るんだけど、まだ冒険者になったばかりの君達は歩いて来るなんて考えられない」
やっぱりか…。
鍛える為と言っても、あまりにも距離が遠すぎる。
このくらいの距離、冒険者なら歩くだろうと勝手に思っていたが、そうではないらしい。
遥に騙されたか。
「そこで二人とも疲れているだろうから、今日は休みにして自己紹介でもしようと思う。
先程、遥さんにも紹介したが、もう一度、仲間を紹介しよう。
まず自分から、このオロチクランの団長をやっている佐藤 龍人だ。」
「相澤 花音です」
「望月 湊です」
「矢島 健吾です」
「宮井 香です」
「そして私が遥ちゃんだよ」
お前は言わなくてもいいだろう!
まあ、そのついでに僕も名前を言っておかないと、
「武田 ハルトです。よろしくお願いします」
「「「よろしく」」」
「皆、同じ歳だから、気楽にいこう。
明日からダンジョンでレベル上げするから、そのつもりで」
「はい」
その後、雑談が続いていた。
どうでもいい事、これまでにあった事など、いろいろ話したが実際、人とあまり接しない僕にとっては、どうでもいい事ばかり。
その所為なのか、緊張していたのかは分からないが、何を話したのか、僕の記憶には残らない物ばかりだった。
夜には、ささやかな歓迎会が行われた。
同じ年齢ということもあって、話は弾んでいた。
まるで同級生で来た修学旅行のようにも思える。
僕にとって、このクランの第1印象は合格点だ。
雰囲気もいいし、話しやすいし、ここなら続けて行けそうに感じた。
あとはダンジョン内の戦い方とか、今は優しそうに見えるが、それは最初だけなのかも知れない。
その内、本性を表しイジメられるかも知れない。
それだけは避けなくては…。
兎に角、お試し期間があるのだから、その間に、このクランでずっとやっていけるのかを見極めよう。
そして、少しでも自分のレベルが上がる事を願った。