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オロチクラン

「ハァ、ハァ、ハァ」


「ゼェ、ゼェ、ゼェ」


息は上り、汗だくとなり、手頃な木を見つけ、それを杖代わりにしながら、狭く薄気味悪い山道をただひたすら登っていた。

二人は既に憔悴しょうすいしきり、喋る事も億劫おっくうで無言となり、歩く足もフラフラとしながら、一歩、また一歩となんとか歩みを進めていた。


僕はモンスターと遥を間違えて、攻撃した時に残っていた体力の殆どを奪われていた。

随分と歩いて来たようだが、その間に何回休憩を挟んだだろうか?


ちょっと歩く度に休憩をとっていたので、休憩する回数すら分からなくなっていた。


遥は遥で目先の欲に負け、肉の為に兎を追いかけた所為で残りの体力を消耗していた。

お陰で肉をゲットしたのは良いが、森の中で火をつけるのは山火事の原因にもなるので危険だと判断し、クランに着いてから食べようと言う事になった。


挨拶代わりのお土産にもなるし。


だけどクランの拠点までが遠い…、遠すぎる。

あと残り2キロという所で山道は更に険しい急勾配になってきた。


お互い体力の限界なのか、疲れて過ぎて話す気にもなれず、一人が休憩すると、もう一人も自然に休憩する。

お互いがお互い、相手の事など、かまっていられないほど消耗しきっていた。

足は棒のようになり、歩いているのか止まっているのか自分でも分からなかった。

既に僕は限界を超えていた。

今まで、こんなに歩いた事などあっただろうか?

…ないだろう。

フルマラソンでも無いのに、普通に考えればこの距離ならば移動手段を考えるだろう。

例え、身体を鍛える為と言っても最初から飛ばし過ぎだろう。


疲れが明日に残らなければ良いのだけど、というかこのまま横になって眠りたい。

だけどここで寝てしまったら、見張りなんてお互い無理だから、眠ったまま肉食動物やモンスターに襲われ、目覚める事はないかも知れない。

それは、お互い理解しているから、大の字になり眠る事をせずに地べたに座り休憩するだけにしている。


休憩中もお互い話す事は無かった。

ただ単に遥が、胸を触った事に対してまだ怒っているだけかも知れない。

今はそんな事どうでもいい。

早くオロチクランの拠点に着いて、ゆっくり休みたい。

ただそれだけだった。


辺りは既に暗闇の中、暗視スキルのお陰なのか、暗闇に慣れた所為なのかは分からなかったが、暗闇でも道や木々の形がかろうじて見えていたので、迷わず進む事が出来た。


そして、ついに暫く歩くと道の先に明かりが見えた。

山の頂上にはオロチクランの拠点しか無かったので、あれが間違いなくゴールだと確信した。

急ぎたい気持ちはあったが、上手く足が動かずもつれそうになりながら、二人ともフラフラの状態で最後の力を振り絞った。


段々と近づき、その建物にも驚かせれた。

あの建物は天文台?

建物は円柱、屋根は半球の形をしていた。

よく見る山の頂上にある天文台と同じような形をしていた。

ここがオロチクランの拠点…。


夜遅いと言う事もあったが、そんな事、言っていられない。

早く安全な所で休みたい。


建物の入口まで来ると呼び鈴を探す。

しかし、入口のドアの周りを探すが、それらしき物はなかった。

夜も更け、遅い時間。

普通なら明日の冒険の為、眠っている時間だろう。


だが電気がまだついているという事は、誰かまだ起きているのだろう。

もしかすると、万が一の為、当番で見張り役を行なっているのかもしれない。


第一印象も大切だし、なるべく静かにドアをノックしようとした時、隣の遥が、


『ドォン、ドォン、ドォン』


ドアを思いっきり叩いていた。


「おい、遥」


僕は小声で止めようとしたが、更にドアを叩きながら、


『ドォン、ドォン、ドォン』

「頼もう!!」


遥、いつの時代の人間かとツッコミたくなるが、それどころじゃない。

こんな夜更けに失礼過ぎではないのか?

遥に常識というものはないのだろうか?

いや、そんな事を考えている場合じゃない。


また遥がドアを叩こうとしている。

僕は身体を張って止めにかかった。


「止めろ!遥」


「だってノックしないと出てこないじゃない」


「それにしてもやり過ぎだ。相手が寝ていたらどうするんだ」


「寝ていたら、尚更、聞こえるくらい大きく叩かないといけないでしょう」


思わず確かにその通り。

そう思ってしまったが、よくよく考えれば、それは違うだろう。

騙されそうになったが、それは屁理屈だろう。


普通に考えれば、夜中に訪れるのは失礼だろう。

次の日に出直すのが当たり前ではないのか?

だがここまで来て出直すことは出来ない。

ゴールに着いた瞬間、緊張の糸が切れて、もう一歩も動きたくない。


いっそ、ここで野宿するか?

ここなら森の中よりかは安全だし、何かあってもオロチクランの人が助けてくれるかも知れない。

そんな事を考えていたら、家の中から声がした。


「は〜い、今、開けますから待ってくださいね」


『ガチャ』


ドアが開いてながらから出てきたのは…、熊!?熊人間か!?

いや、違った。

熊の着ぐるみを着た人間だ。

一瞬、分からなかったが、着ぐるみに顔だけが出ている状態、顔はモテそうなカワイイ系の男性。

なのに、何故、着ぐるみ?と思ってしまった。

ドアが開いた瞬間、熊が出てきたので少し驚いて二人とも後退りしまった。

まさかのドッキリなのか?


「やあ、こんばんは。

えらく遅かったね、ギルドから今日来ると連絡が来てから、なかなか来ないから道に迷ったのかと心配していたんだよ。

ん?どうしたんだ?」


僕と遥は着ぐるみ男に驚いて、固まっていた。


「あ、その〜、ほら、見た目が…」


「あ〜あ、この格好かい。

僕は、子供頃からぬいぐるみ大好きでね。

将来ぬいぐるみになる事を夢見てきたら、着ぐるみを着ていないと落ち着かない性格になってしまってね。

まあ、僕はぬいぐるみが好きだからどうでもいい事なんだけど、周りがね」


子供を喜ばせる為に着ているのなら分かるけど、だいの大人が着ぐるみを、それも男が着ていなんて趣味がマニアックすぎる。

まさか、メンバーは全員、着ぐるみを着ないといけないとかいう規則は無いよね。

ギルドから貰った書類にはそんな事書いていなかったが、全員着ぐるみなんて恥ずかしくて外へは出られないだろう。


そんなクランなら直ぐに辞めようと心の中で誓った。



「今日はもう遅いし、皆への紹介は明日にしようか?

ここまで来るのに随分と疲れているようだから、取り敢えず部屋に案内するよ」


「はい、助かります」


僕達の表情を察してくれたのか、僕達はそれぞれ部屋に案内された。

4帖ほどの狭い部屋だが個室。

窓、ベッド、机が1つずつ付いていた。

トイレとお風呂は共同のようだ。


電気は発電池のお陰で、こんな辺境地でも困る事はないらしいが、水は別問題で普段使う水は雨水を濾過して使っており、飲み水は近くの川から汲んで来て、それを濾過して使っているらしい。

水の確保がかなり大変そうだ。


なので、今日はお風呂に入れなかったので、着ぐるみ男さんが洗面器に入れたお湯とタオルを差し入れしてくれた。

それでも有りがたかった。

僕の身体は既にピークを迎えており、一刻も早く疲れを癒やす為に睡魔が襲ってくる。

でも身体は拭かないと汗でベタベタだし…、ウトウトしながら身体を拭き、何とかベッドまで行くと倒れ込むように横になり、そのまま爆睡していた。


そして次に目が覚めたのは日も高く上がった昼間だった。




短くなりましたが投稿させて頂きました。


次回2月5日投稿予定です(•‿•)

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