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パートナー

「何それ!酷くない!?」


遥は今日あった僕の出来事を話していると急に怒り出した。


「いや、僕が悪いから…。

ダンジョンの暗闇の中、中に入ろうとした僕が悪いから」


「でもね、団長さんがハルトの手を無理やり引いてダンジョンに入ったんでしょ。

団長さんが守れる自信があったからハルトをダンジョンに連れて行ったんでしょ。

なら、ハルトを庇って団長さんが怪我した事は、ハルトの所為じゃなく、団長さんが自分の力を自信過剰したのが原因じゃないの?

それなのに、なんでハルトが怒られるのか意味が分かんないんですけど」


「それでも…、団長に怪我をさせたのは僕の所為だから…」


同じ年齢と言う事もあり、お互いの事を話していたら、いつの間にか下の名前で呼び捨てあっていた。

打ち解けあった所為なのか、クランを辞めて宿無し金無しの同じ境遇だからなのか、お互いの状況に同情していたかも知れないけど、いつも会う友達のように感じていた。


「もしかして、それでさっきまでクヨクヨしていたの?」


「だって…」


「あ〜〜も〜〜。

男の子でしょ!しっかりしなさい!

冒険者になるなら、そんな事でクヨクヨしない。

いつまでもクヨクヨしていたら、モンスターとの戦闘時に判断を誤って命を落とすわよ!」


確かにそうだ。

モンスターとの命の駆け引きの時に迷いがあると、それだけで判断が一瞬遅れてしまう。

その一瞬の遅れで倒すか倒されるか分れてしまう状況もあり得るだろう。

舞香さんの事は気になるけどクランを抜けたんだから、シャドウクランのメンバーは垢の他人だ。

いつまでも気にかけてはいられない。

過去を引きずっていたら前には進めない。

次に進む為にも、過去は過去。

もう二度と同じ過ちを繰り返さないように肝に銘じておこう。



それにしても遥は、まだ会ったばかりなのに言いたい事をズバズバ言う。

それが本当に僕を心配して言っているのだから、その事に関して怒る気にもならない。

逆に意見を言ってくれるパートナーに頼もしく思う。


「そうだよな、いつまでも引きずっていては駄目だな」


「そうそう、前向きに考えないと。

いい経験をしたと思えばいいじゃない」


「一からやり直しだな」


「そうそうその粋だよ、元気になったじゃない」


「あ、ありがとう。

なんだか元気を貰ったみたいで」


「何言ってるの。

パートナーでしょ、お互いが庇い合いながら成長していけば良いんじゃない」


「そうだね」


「ところでハルト」


「なに?」


「今、レベルいくつ?」


頑張ろうと思った所なのに、今、聞くことなのか?

言いたくはないがパートナーとして隠していけないだろうし、それに嘘をついても後で直ぐバレるだろうし。


「レベル1…」


恥ずかしかったので小声で呟いていた。


「えっ、聞こえないわよ。

もう一度!」


「レベル1だよ!」


「えっ、まだ全然レベル上がってないの?

勝った…、私、レベル3よ」


レベル1も3も対して変わらないじゃないかと思ったが、ここはファーストレディとも言うし、遥をたてるしかないか。


「凄いね、もうレベル3なんて」


「そうでしょ、そうでしょ。

前のクランで一応、戦闘訓練は積んだから。

それでハルトは、もう固有スキル持ってる?」


「いや、まだ持ってないけど」


「もし万が一、固有スキルが出現したら、誰にも言っちゃ駄目だよ。

例え仲間であろうとも」


「え、どうして?」


「普通、固有スキルは1つか2つは持つはずなんだけど、それがありふれたスキルなら問題ないんだけど、もしユニークスキルなら狙われるかも知れないって事。」


「ユニークスキルが盗まれるって事?

でもスキルって盗めないんじゃないの?」


「ところがそうでもないのよね。

スキルを盗むスキルが存在するらしいのよ。

だから、弱い内はユニークスキルを見せびらかしたり、人のいるところで不用意に使用しないように気をつけなければならないわ」


なるほど、折角、手に入れたユニークスキルを盗まれると大打撃というか、もしかすると冒険者を辞めようかと思うくらい落ち込むだろうな。

今の所は固有スキルは出現してないから、そんな心配は必要ないけど、本当に固有スキルが出現するかどうかの方が心配だ。


食事も終わり、僕達は食器を片付ける。

これは自分達で洗うのかと思ったら、それもクランメンバーがやってくれる。

至れり尽くせりだな、ここの炊き出しは…。


キチンとお礼を言って僕と遥は炊き出し場から離れた。


「公園の奥の芝生に私がテントを張ってるから、今晩はそこで寝るわよ。

付いて来て」


そう言われて僕は遥の後ろを歩いていく。

ふと思った。

テントって、まさか一緒に寝るんじゃないだろうな。

歩きながら色々な妄想が浮かんでくる。

自分のテントに誘っているという事は二人っきりになるという事になる。

そこで寝るという事は、同じ屋根の下、狭いテントの中、直ぐ触れられる場所に遥がいる。

寝相が悪い振りして、わざと遥の身体に触れる事も可能だ。

待てよ、遥が誘っているという事は、向こうの方から触って来るんじゃないのか?


もしかしてそのまま最後までいくのだろうか?

僕にとっては初めての経験だ。

心臓の鼓動が速く、大きくなったように聞こえる。

どうすれば良いんだろうか?

エッチな映像は、何度も見た事あるが実際、初めての僕に同じ事が出来るだろうか?


その前に心の準備をしとかないと、「あなた下手ね」とか「小さいわね」と言われたらショックで立ち直れないかも知れない。

避妊道具はどうしよう?

僕は持ってないけど、遥が誘っているなら持ってると思うけど。

自分のニオイは臭くないないだろうか?

こんな事なら先に風呂に入りに行けば良かったかな、せめて公園の水で水浴びでもしようかと考えてしまう。


いや、でも、僕より遥の方が汚いだろう。

一緒に水浴びに誘って、お互いの身体を擦り合って洗っている内に手から肩へ、そして背中、洗っている振りして、そのまま前もついでにといって胸を洗って行く。

遥は防護服を着ていたので身体のラインが見えにくいが、隠している防護服の胸の部分が大きく膨らんで作られていたので、胸の大きさもそれに比例して大きいと思われる。


偶然を装い胸を洗うと最初は「エッチ」と言いながら嫌がるが、何度も触る内に嫌がる事をせず、感じるようになって、甘い吐息を吐き出し始める。

お互いが触れながら感じ合い、そして二人は結ばれる。

思春期の男性、もしくはスケベな男性なら女性と二人っきりになると思うと、欲情しか浮かばなくなってしまうは何故だろう。


でも、知り合ったばかりなのに、何故、自分のテントに誘ったりしたのだろうか?

もしかして、パートナーと言いながら客を探していたのではないか?

そしてテントに連れ込み行為が終わった後に金を取られる。

娼婦みたいな事をしてるんじゃないだろうか?


いや、それにしては失礼だが遥には色気がなさ過ぎる。

もしかすると連れて行かれた先に、恐い人達がいて、「俺の彼女に何するんじゃ!」と言って金を巻き上げられる。

美人局ではないだろうな。

そう思うといつの間にか欲情は消え、周りを警戒するようになってきた。


そしてそんな事を考えている内にキャンプ場?に着いた。

かなりのテントがぎっしりと並んでいた。

さっき炊き出しに食べに来ていた人達の住居だと思うが、明らかに何ヶ月も住んでいるような生活感溢れるテントばかりだった。


その中の1つに遥が近づいて行く。


「これが私のテントよ」


周りの普通のテントと形が違い。

屋根は三角錐、丸いゲル風のおしゃれなテントだった。

中も広そうで畳6帖は有りそうだ。

周りを確認したが、恐い人達は居ないようだ。

まずは一安心。


「ここに一人で住んでいるの?」


「うん、なかなかおしゃれなテントでしょう」


「でもお金も無いのに、よくこんな大きなテントに住めるね」


僕がそう言うと遥は少し俯いて黙り込んでいた。

あれ?なにか悪いこと言ったかな。

これは謝らないと折角、築いたキズナが台無しじゃないか。

会ったばかりだから、キズナというキズナはまだないかも知れないけど。


「ゴメン、なにか悪い事、言ったみたいで」


「あ、いや、これは…」


「ん?」


「その〜、つまり…、クランで戦力外通告を受けた時、私がテント係で…、あまりの腹立たしさからテントを背中に担いだまま出て来てしまって…、今更返しに行くのもなんだから、そのまま使わせて貰っているの」


「クックックッ、ワッハハハ」


「何が可笑しいのよ!」


「ゴメン、ゴメン、僕と同じなんだと思って、僕もダンジョンに置いて行かれた時、クランの荷物を持ったままだったから、でも僕は荷物はちゃんと返したよ」


返したというか玄関に置いて来たけどね。


「私も返そうとは思ったわよ!

でも、あまりにも腹立たしさに、あたり散らしてクランを抜けて来たのに今更荷物を返しに来ましたなんて言える訳ないじゃない。

だから、これはまあ、いわゆる解約金代わりよ。」


大胆というか図々しいというか、元いたクランが返せと言って来ていない所を見ると、テントくらい要らないと言う事だろう。


「じゃあ、私はもう寝るから、また明日ね」


「えっ」


遥は、そそくさとテントの中に入って行った。

あれ?僕は何で自分のテントまで来るように誘ったのか意味がわからなかった。

僕はその事について聞こうと思い、テントの中に入ろうとしたが、『ドン』


「アイタタタタタッ」


何か見えない壁みたいな物にぶつかり、尻もちをついてしまった。


「何やってるの?」


音に反応したのか遥がテントから出て来た。


「あっ、もしかして私の着替えを覗こうとしたわね!」


「いや、そういうわけではないんだけど」


「なら、何なのよ」


「僕がここに呼ばれた訳が分からなくて」


「それは、ここが皆のキャンプ場になっているからよ。

パートナーだから近くが良いと思って。

ほら、隣が空いているわよ」


遥のテントの隣を見ると、確かにもう一つテントを建てられるスペースが空いていた。だが…、


「僕、テント持ってないんですけど」


「はあ〜?テント持っていない?

そう言っても私のテントには入れないからね!

もしかして、そう言えば入れてもらえると思ってる?

例えパートナーでも、会ったばかりで信用してないから、か弱き乙女が一人で居るのに襲われないという保証はないから、絶対入れないからね!

無理に入ろうとしても防護魔法が働いてるから入れないでしょうけど。


天気も良いし、寒くもないから、そのまま寝ても大丈夫なはずよ。

それじゃ、私は寝るからお休み」


そう言うとテントの入口の布を下ろし、中が見えないようにしてから、中に入って行った。


おいおい、僕だけここで寝ろと言うのかよ。

自分だって、そのテント、前のギルドの所有物だろう。

テントに入れてくれたって…。


いや、入れたら最後、先程の妄想が膨らみ僕は彼女に襲いかかるかも知れない。

でも遥はレベル3、その分、力も強くなっている可能性はある。

今の僕じゃ、襲いかかっても、逆に殺られてしまうかも知れないな…。

頭を冷やす為にも、暫くは距離を置いた方が良いか。


幸いにもキャンプ場は芝生が生えており、そのまま寝転がっても、そこまで寝心地が悪くなかった。


しかし周りは知らない人ばかり、物取りとか新人狩りとかいたら、どうしようかと考えていた。

暗視スキルを発動させたままで、周りを警戒していたが、殆どの人が僕など気にかけず各々のテントへ戻って行っていた。


警戒するだけ無駄か。

大体、僕には取られる物などないじゃないか。

そして僕は次第に警戒心が無くなり、いつの間にか眠りについていた。




いつも読んで頂きありがとうございます。

今回の作品は、いつも感情が足りないとよく言われますので、感情面を課題に書いております。

まだまだ至らぬ所は有りますが、主人公と共に成長していきたいと考えてます。

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