出会い
僕は公園のベンチに腰掛け物思いにふけっていた。
辺りは夜の帳が下り、すっかり暗くなっていた。
小鳥達のさえずりも聞こえなくなり、僕は独り自分の世界の中へ入り込んでいた。
自分しか居ない。何もかもが僕の存在を否定し誰も居ない世界。何も見えない。何も聞こえない。辺りはシーンと静まりかえっていた。
「はぁ〜」
何度目の溜息を吐いたのだろうか?
シャドウクランの家から、何処をどう来たのか分からないが、目の前に公園が有ったので公園に入り、そのベンチに座り込んでいた。
実際、何時間ここに居るのだろうか?
公園に座り込んだ時は、まだ太陽は真上にあったが、今は暗くなり公園の電灯が薄っすらと辺りを照らしていた。
今日1日でいろいろ有り過ぎて自分自身、整理が出来ない状態だった。
シャドウクランの伸一さん、亮二さんはともかく、団長の舞香さんは面倒見の良い人だった。
それなのに僕の所為で怪我をさせてしまい、直接謝りたかったがそれも叶わなかった。
無理やりにでも押し掛ければ良かったかな?
多分、押し掛けたら間違いなく伸一さんに…、いや亮二さんと二人に殺されるだろう。
でも殺されても仕方ないくらいの事を僕はやらかしてしまったのかも知れない。
僕を庇わなければ、舞香さんが怪我をする事もなかったし、僕がもっと気を効かせていれば…、大体、見えないのにダンジョンに潜るなんて端から見れば自殺行為である。
今、冷静に考えればそう思える。
何故、あの時にこの考えが浮かばなかったのか?
そうすればダンジョンに潜らず待合室で待っているという手もあったはずだ。
それ以前に暗視スキルを早く買ってレベルを上げているべきだったのではないのか?
もっとダンジョンについて調べておくべきではなかったのか?と後悔していた。
今更、何を言っても手遅れである。
「はぁ〜」
済んだ事は仕方がない。
次を考えなければならない。
レベルもダンジョンの入口辺りしか入ってなかったし、自分でモンスターを倒した訳でもなかったので、全く上がっていなかった。
暗視スキルくらいは上がっているのではないかと期待したが、レベル1のまま。
辺りも暗くなってきた事だし、暗視スキルのレベルを上げる為に、暗視スキルを発動させていたが、レベル1だから発動させてもさせなくても見える景色はあまり変わらなかった。
今日はギルドに泊まろうかとも思ったが、持ち金も少ないし、早くダンジョンに潜る為にも暗視スキルのレベル上げをしようと考え、公園に居座っていた。
どうせ、この怪我だし直ぐには動けないだろう。
現在の医療はかなり進んでいた。
回復魔法を使えば直ぐに治るのだろうけど、回復魔法が使える知り合いや仲間がいる訳じゃないし、回復魔法が使える人に頼んだらそれなりにお金を取られるだろうし、手持ちが少ない僕には頼む事は出来ない。
応急処置用のロボットでも重症度の火傷なら2〜3日で治る。暫く安静にするしかないか。
今の時代、死なない限り、手足が千切れても、魔法でトカゲの尻尾のように、また同じように再生する事も可能だ。
だが、それが出来るのは一部の高位聖職者だけなので、御布施といって金額もそれなりに高額に請求される。
だからそれよりも低額な義手の重要が広まっていた。
義手と言っても見た目は変わらず、外皮は人間の皮膚と見た目も触り心地も変わらず、中身は機械で動かしている。
マイクロチップで制御して、神経が通っているように見せているので、普通の身体のように動かす事も出来るし、触った感触や痛みも感じる事が出来る。
機械なので力を強くする事も可能なので、モンスターの頭くらいなら素手で潰す事も可能だろう。
冒険者達の為なのか、それともダンジョンで発見された物なのかは分からないが医療は日々進化していた。
今日は、このベンチがベットかな。
僕はベンチに横になり、周りをぼ〜っとしながら見ていた。
動かず身体を休めれば、その分、火傷の治りも早いだろう。
もう二度と同じ過ちを繰り返さないようにしないと…。
『ぐぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
突然、お腹の虫が鳴き出した。
そういえば、今日は昼から何も食べてなかったな。
さっきから美味しそうな匂いがしているんだけど、近くの家で晩御飯でも作っているのだろうか?
ああ、腹減った。
こんな事なら、先にコンビニでも探しに行けば良かったと後悔していた。
すると、突然、
「わっ!!」
ベンチの後ろから僕を驚かす声が聞こえた。
全く警戒してなかったこともあったが、突然の事に僕は驚きベンチから転げ落ちてしまった。
「アイタタタタタッ」
「あっ、ゴメンゴメン。
そこまで驚くとは思ってなくて…」
みすぼらしい格好をした人が立っていた。
声からして女性のようだけど、見た目は男性か女性か分からない。
ショートカットだけど髪はボサボサ、身体も服も汚れたまま、防具を身に着けている所から冒険者だと思われるが、まるでホームレスのように見える。
僕もこのままいけば、ダンジョンにも潜れず間違いなく仲間入りしてしまうだろう。
その前にクランを、仲間を見つけないと…。
「あ〜〜!私の事をホームレスだと思ったわね」
「そ、そんな事、思ってないよ」
何だ?、この子には人の心を読む力があるのかと動揺してしまった。
「だって、顔に書いてあるもの」
「そんな訳ないだろう」
「まあ、ホームレスというのは、あながち間違いではないんだけど」
間違いじゃないんかいとツッコミたくなる。
「今だけよ、今だけ。
装備とかスキルとか買ったら、お金が無くなっちゃって、一緒にダンジョンに潜ってくれる人を探しているんだけど、なかなか見つからず、ここに住み着いているだけだから」
それをホームレスと言うのではないのか?
まずはその見た目をどうにかしないと、誰も仲間になってもらえないと思うけど、気付いているのだろうか?
「ところでミイラさんは、ここで何をやっているの?」
「ミイラさん!?」
あっ、確かに今は包帯だらけでミイラと呼べるだろうけど、なら、あんたはホームレスさんと呼んでやろうかと思ったが、それを断ち切るかのように、
『グゥ〜〜〜〜〜〜』
と僕のお腹が鳴ってしまった。
恥ずかしい!
知らない人に聞かれるなんて、思わず顔が赤くなっているのでないかと心配してしまう。
「ミイラさんは、お腹空いているの?」
「我慢してたけど、さっきから良い匂いがしてくるから」
「向こうで炊き出しやってるわよ。
一緒に食べにいかない?」
「えっ、そんなんですか?
あ、でもお腹空いてるから食べたいけど、お金にあまり余裕がないから」
「あら、大丈夫よ。炊き出しは無料だし、私なんてお金がないから毎日タダで食べてるわよ」
「毎日ですか?」
無料だからと言って毎日じゃ、ちょっと図々しいような気がする。
僕だったら流石に毎日となると気が引けるが…。
「炊き出しが行われるのは夕食だけね。
フォレストファングというクランが炊き出しを行っているんだけど、まだ駆け出しの冒険者だった頃、ここで週に1度、炊き出しをしていて、それに大分お世話になったからといって、次はお金に余裕が出てきた自分達が駆け出しの冒険者の為に炊き出しをやっているんだって、勢いのあるクランはお金を沢山持っているのね。だから、私が言うのもなんだけど遠慮しなくても大丈夫だよ」
フォレストファングと言えば、日本でも屈指のクランの1つだ。
戦力でいけば間違いなく日本でのランキング10位以内に入るだろう。
いつか入りたいクランの1つではあるが、駆け出しの冒険者が直ぐ入れるような甘いクランでは無い。
団員の顔ぶれは、流石、ランキングに入るだけはある。
名の知れた強者ばかりである。
そんな強豪クランでも、当たり前だが自分と同じように駆け出しの時があると知ると親近感が湧く。
それも食う物に困るくらい稼ぎが悪い時だってある。
そんな時代を乗り越えて今の地位を手に入れたんだ。
僕も負けないくらい強くなって肩を並べるくらいになってやると、ついつい握り拳に力が入り意気込んでしまう。
そんな事を考えていると、なかなか動かない僕をみかねてなのか、
「あれ?お腹空いてるんじゃないの?
あっ、もしかして怪我をして動けなかったのかな。
それなのに驚かしてしまって…、怪我が悪化とかしてない?
動けないなら炊き出し持って来てあげようか?」
ただ考え事をしていただけなのに親身になって心配してくれている。
驚いて転んだのは間違いないが、そんな事は大した事ではない。
僕が驚き過ぎただけなのだから。
「いや、大丈夫だから、自分で取りに行けるよ」
「それなら一緒に行こう。
ほら、早く立って」
そう言われて初めて気づいた。
驚いて転んだままだったということに。
先に早く立ち上がって『大丈夫だよ』とアピールをやるべきだったのか、でもそれだとここまで親身になって心配してくれなかったかも知れない。
この対応が良かったのか分からないが、初めて合った他人同士だけど、それなりに打ち解けあったのではないだろうか。
僕は立ち上がり付いて行く事にした。
騙されているのではないかという不安はあったが、背に腹はかえられない。
もうお腹が空きすぎて限界に近かった。
それもこれも先程から美味しそうな匂いの所為だ。
それが、炊き出しの匂いだと気付くのにそれほど時間はかからなかった。
お腹の虫が『グルルルルルルルル』とずっと唸りをあげていた。
美味しそうな匂いさえしなければ、お腹が空いている事など忘れていたのに、お腹の虫が鳴るとお腹が空いているという実感が湧いてくる。
何か食べないと…、頭の中は今まで悩んでいた事が嘘のように無くなり、今はとにかく何か食べたい。
ただそれだけだった。
付いて行くと公園の別の入口付近で炊き出しを行っていた。
何処から集まったのか、その周囲には100人程の人々が集まり、それぞれの場所で食事をしている姿が見える。
殆どが冒険者だと思われるが、中には冒険者じゃない浮浪者や子供の姿が見受けられる。
「多いですね。
これじゃ、もう炊き出しは残ってないですかね?」
「大丈夫よ。
温かいスープとかは無くなっても、パンとか干し肉とか保存食は沢山あるから、食べ損なう事はないから」
皆が食べている姿を横目に見ながら、配給場へと向かっていく。
今日のスープはシチューのようだ。
食べている姿を見ると、とても美味しそうに見える。
特に腹が減っている所為もあるけど、皆が食べているシチューが食べたい!
頭の中はシチューを食べる事で一杯だった。只々、シチューが残っている事を祈っていた。
「は〜い、こんばんは。
まだ配給残ってるかしら?」
「ああ、残っているぞ」
「やった!
ミイラさん、まだ残っているって、良かったね」
ミイラではないのだが、シチューが残っているなら、まあいいや。
とにかく今はシチューが大事だ。
「おう、なんだ、お前怪我しているのか?」
「はい、ちょっとダンジョンで失敗しちゃって」
「まあ、死なないだけマシだろう。
生きていれば次があるからな」
「そうですね」
「よし、お前には怪我が早く治るようにシチュー大盛りにしてやるから」
「あ、ありがとうございます」
「良かったね、ミイラさん」
僕達はシチューとパンを2つ、そして魔物の肉焼きをもらい、近くの空いているスペースに二人座り込み食事を始めた。
パンは少し硬いけど、タダで貰った物だし文句も言えない。
だがシチューはいろんな食材が入っている所為か、とても美味しい。
腹が減っている所為か?
いや、それでもこのシチューは絶品だと思う。
魔物の肉は少しスジがあり、なかなか噛み切れないが味はそこまで悪くない。
炊き出しだからと言って、ケチっている訳もなく、味も悪くない。
毎日通いたくなる訳が分かるような気がする。
「どう?美味しいでしょう」
「うん、美味しいよ」
「そうでしょう。他の所でも炊き出しをやっているけど、私はここが一番だと思うのよね」
その一言を聞いて、この人は炊き出しを食べ回っているのかと思った。
「他にも炊き出しをやっているんですか?」
「いろんな所でやっているわよ。
ここみたいにクランがやっている所や市や県、自治体等がやっている所があるわよ。
ミイラさんは今まで炊き出しを食べたこと無かった?」
「はい、家で食べるのが当たり前だと思ってましたから、炊き出しが行われているなんて全く知りませんでした」
「ふ〜ん、裕福な暮らしをしていたんだ」
裕福だって?
一般的な普通の家庭だと思うけど、決して金持ちじゃないが小さな家だったが一軒家だったし、周りの同級生達と変わらないくらいの生活はしていた。
それも両親が共働いているからなのか?
何もしなくても国からの支給プラス両親の稼ぎのお陰だったのか?
「普通一般的な暮らしだと思っていた」
「危険地域に住んで居なかったと言うことね」
「危険地域?」
「ダンジョン近くの地域を危険地域と呼ぶの。
ダンジョンからモンスターが出ないように管理はされているけど、その周りの地域では突然変異でモンスターになる動物がいるわ。
その所為で街は破壊され、人々は襲われ、私の…」
そこで話しが途切れた。
嫌な思い出を思い出したのかも知れない。
多分、家族も襲われ誰かを亡くしたのかも知れない。
嫌な事を聞いてしまった。
聞かなければ思い出さずに済んだのかも知れないのに。
「ゴメン、嫌な事を思い出させてしまって」
「えっ!何が?」
「ん?だって家族もモンスターに襲われたんじゃないの?」
「はぁ〜?誰がそんな事言ったの?」
「だって、さっきの話しからすれば」
「ンップププ、ハッハハハハッ」
「ちょっとなんで笑うの?」
「いやいやごめんなさい。
家族は生きているわよ」
「えっ」
「あっ、家族との思い出を思い出しただけよ。
危険地域には住んでいたけど、それは税金や土地が安かったから。
だけど危険地域だから働く場所があまり無くて、両親は働いてなくて…。
国の支給だけで暮らしていたんだけど、兄弟が5人も居るから食事は質素な物だったわ。
流石に育ち盛りの私達には食事が足りなくて、しょっちゅう近くの炊き出しを食べに行っていたわ」
「だから、ここも子供達の姿が見られるのか」
「それもあるけど、ここの近くに孤児院があって本当に両親がいない子供が多いの」
気まずい話になってしまった。
それからは無言になり、食事を食べていた。
ここはダンジョンにも近い。
だから、その周りの地域ではモンスターに突然変異する動物が多い。
何故、変異するのかはまだ解明されていないから、対応の仕様がない。
他の場所に住めば良いのだろうけど、安全地域は物価が高過ぎる。
この人のように5人も兄弟姉妹が居れば両親共働きでも、余程給料が良いところでないと生活出来ないだろう。
それにダンジョンも突然、出現したりする。
それは何処かのダンジョンが消えたら、新たなダンジョンが生まれるという噂だが、その所為なのかギルドは極力、ダンジョンを壊さないように規制している。
その事から本当の事だと皆、確信を持っているようだ。
だが、その所為で突然出来たダンジョンに対しての対策としては、モンスターが入口から出て行かないように蓋をする事しか出来ない。
周りの地域でもモンスターが生まれる可能性はあるけど、長年住んでいる土地を離れる者は、ほんの僅かだろう。
住んでいる者はモンスターが現れたら冒険者達が倒してくれると考えているだろうけど、冒険者が来る前にモンスターは暴れ被害が広がってしまう。
今ではその対処の為、ギルドによってクランの住む地域が決められ、その地区を守る義務が課せられているらしいけど、子供達の食べる姿を見ていると僕も早く皆を守れる力が欲しくなった。
「うん、合格。どう?私のパートナーにならない?」
思わず、僕は食べた物を吹き出した。
いきなり何を言っているんだ?
パートナーだなんてどういう事?結婚しろと告白しているのだろうか?
まださっき会ったばかりで、お互いの事もよく分からない。
そういう事はお互い時間をかけて分かり合って、この人だと決めてから告白するものではないのか?
「あ、え〜っと、そういう事は、ほら、もっとお互いをね、なんていうのかな、性格とか、趣味が合うとか、僕はまだ恋なんてした事ないから分からないけど、ほら、そう、こうお互い燃え上がって好きになるものだろう。
なあ」
「えっ、えっ、いや、好きとか嫌いとかそういうのじゃなくて、勘違いしているようだけど、パートナーって、そういう意味じゃないのよね。
ミイラさんも冒険者でしょう。それもまだ新人の」
「なんで分かるの?」
「私と同じで冒険者としての風格というか、雰囲気がそんな感じだから」
「そんなに違うものかな」
「ええ、私が驚かした時、私が声を出すまで気付かなかったでしょう」
「考え事をしていたから…」
「ベテランの冒険者なら、どんな時も周りを警戒しているわよ。
いつモンスターに襲われるか分からない緊張の中、気を抜いたら死が待っているだけだから、どんな時も警戒を怠らないものなのよ」
確かにそうかも知れない。
モンスターだけではない。
もしこの人が僕を驚かす為ではなく、殺すつもりだったなら、間違いなく僕は殺されていただろう。
今の所は恨まれる事は…、あったな。
伸一さんと亮二さんに狙われるかも。
お金はそれほど持っていないけど、駆け出しの新人冒険者がよく狙われる話をよく聞く。
戦闘経験は少なく、装備を揃えるためにある程度お金が溜まった所を狙わるらしい。
だから、そんな連中からも守ってもらうためにもクランに入りたいのだが、なかなか上手く行かない。
「確かに、僕が甘かったのかも」
「そうでしょう、そうでしょう。
だから、お互いがお互いを守る協定をするのよ」
「それはどういう事?」
「う〜んっと、分かりやすく言うと…、う〜ん、そうね〜。
もし私が危険な目にあったら、ミイラさんが必ず助けてくれる。
逆の立場でも同じね、私が必ずミイラさんを助ける。
そういった契約」
僕からすれば願ったり叶ったりだ。
パートナーがいればダンジョンで置き去りにされる事はないだろうし、1人で無理な事でも二人なら何とか出来そうな気がするし。
一本の矢では簡単に折れるけど、三本束ねると折れないと言うし…、3人居ないけど。
だけど裏切られたら…、それが不安だった。
「どう?パートナーにならない?」
近い!
顔が直ぐ近くに迫っていた。
僕が少し動かせば、キス出来そうなくらい近距離に顔があった。
そんな事をすればセクハラで殴られ彼女は去って行くだろう。
最悪、現行犯で捕まり警察のお世話になるかも知れない。
まあ、僕にはそんな事をする度胸はないが。
僕は、顔を背けうつむいたまま考えていた。
そう言えば…、僕は大事な事に気がついた。
「名前も知らないのに?」
「あっ!そうだったわね。
私、周防《すおう] 遥、今更だけどよろしくね、ミイラさん」
「ミイラじゃない。
僕の名前は武田 ハルトだ」
「ふ〜ん、で、何才なの?」
「なんでそんな事、言わないといけないんだよ」
「お互いの事、よ〜〜〜く知らないといけないから」
まだパートナーになるとは言っていないんだが、彼女の中ではもう既にパートナーになっているのだろうか?
「18だよ」
「えっ、意外〜、同じ歳なんだ」
なんだよ、意外とは?
僕が老けていると言いたいのか?
だったらお前はどうなんだ?
汚れているから見た目で判断出来ない。
「同じ歳で悪かったな、そういう自分はどうだ?
汚れて男性か女性か分からないようになっているじゃないが。
もう少し女性なら綺麗にしたらどうなんだ?」
「あら、ちょっと怒った?」
「怒ってない!」
「汚くしているのはわざとよ。
いつも公園で寝泊まりしているから、襲われないように汚して男性の格好しているの」
相手が女性だと言う事を忘れていた。
僕なら何の心配をせずに公園でも野宿出来るかも知れないけど、女性となれば別だろう。
皆が皆、常識ある人間だと思いたいが、中には常識のない奴もいる。
特に冒険者は力がある分、とても厄介だ。
何でも自分の思い通りにいくと思っている人達がいるからだ。
警察やギルドでも把握できていない新人狩りや様々な犯罪が有るのも確かだ。
それを回避する為の手段だったのか。
「あっ、ゴメン、言い過ぎた」
「確かに汚いもの」
自分で自分の臭いをクンクンと嗅いでいた。
「うん、臭いわね」
「公園に泊まらず、ギルドに泊まれば良いんじゃないのか?」
「だからお金が無くて、ギルドに泊まるお金も無いのよね」
「どうしてギルドに泊まるお金も無いの?
そのくらいとっておくものじゃないのか?」
「それは本を正せば、入ったクランが悪かったの。
初心者だから何も知らないと思って、装備やスキルを買わて、挙げ句の果ては、お前は戦力外だと言ってクランから追い出したのよ!
あ〜も、思い出しただけでも腹立つ!」
僕とは違うけど、同じようにクランから追い出されてしまったのか。
それでお金を使い込んでしまって、今の生活をしていると言う事か…。
少し自分と同じ境遇にあった事に同情し、可哀想に思えてくる。
「それでこの公園に住んでいるの?」
「ええ、今だけよ。
クランは信用出来ないから、自分の信頼出来るパートナーを探していたのよ」
「あったばかりで、信用出来るの?」
「う〜〜ん、分からないわ」
分からないんかいと心の中でつっこんでいた。
「ただ、私と同じような感じがしたから、試しにこの人かなって。
勿論、暫くパートナーになってみて、合わなければ即解散よ」
「なるほど、ただ、僕は傷が治ったらクランに入る事に予定だけど」
「良いわよ、パートナーだもん。
私もまたクランに入る予定だったし…、だけど次からは話し合って決めましょうね」
クランに追い出されたから、もうクランに入らないのかと思ったが、そういう訳ではなかった。
いつの間にかパートナーに決まったようだが、僕も相手の事をあまりよく知らないし、取り敢えずパートナーとして組んでも良いか。
これからの事を食事しながら二人で話し合った。
いつも読んで頂きありがとうございます。
予定としては5000文字を目安に投稿していこうと思ってます。
投稿時期は2週間置き。
1週間で書き終わりますが、残り1週間で訂正や書き直しをやるつもりです。
で、気付いたら8000文字まで増えてました。