プロローグ
思いつきで書き始めてますので、更新は気長にお待ち下さいm(__)m
僕の名前は、武田 陽翔。
神戸に在住、家族は両親と妹の4人暮らし。
そして、ここは近未来の世界。
そこは資本主義が発展し、引きこもりや僕みたいに外に出たがりたくない仲間達には喜ばしい世界が待っていた。
何故かというと国が最低限の生活を保証してくれる為、働かなくても毎月、国から決まった金額が振り込まれる生活となっていたからだ。
勿論、自ら率先して働けば働いた分だけ給料がもらえ、その分、裕福になれる。
それは分かっているのだが、わざわざ働かなくても最低限の生活は出来るのに、働く必要など無いだろうと僕は思っていた。
しかし、親が世間体を気にして職に就かないなら家を追い出すと言われてしまった。
最低限の生活費を国は振り込んでくるが、住む場所の家賃や光熱費は別だ。
片田舎の自給自足のような生活なら安い家かアパートを借りて生活する事は可能だろう。
でも、そうなった場合、欲しい物は買うことが出来ない。
お金の問題もあるけど、今の世の中、ネット通販で注文すれば直ぐにドローンで配達してくれる。
だけど洋服とかはこだわりたい。見て確認し試着してみないと実際見たら、「何でこんな服を...」とかサイズが合わなかったりする。
だから、どうしても買い物をしようとお店まで行くとなると、片田舎からなら何キロも出掛けなくてはならない。
かと言って都会に住もうとしたら、結局、家賃が足りずに働かなければならなくなる。
都会にも家賃無料の生活支援センターはあるが、狭い6人部屋の小さな部屋に詰め込まれ、生活する為の技術を学び、その過程で作られた物を販売して寮費に充てている。
『働いてる事と一緒じゃん』と突っ込みたくなる。
そんないろいろな事を調べてる内に、今の生活を変えたくないし、僕には選択の余地はなく、今の家で職に就き働いた方がましな事に気がついた。
今のこの世界は18歳で成人となり大人として認められていた。
だから18歳から喫煙も飲酒も許されていた。
そして僕も今年18歳、一貫校を卒業して成人、いよいよ社会人としての生活が始まろうとしていた。
勿論、僕は家で引きこもりをする予定だったから、就職先などまだ決まってない。
今から急いで探さなければならなかった。
できれば外に出なくても、家で出来る仕事が無いのかと思い探していたが、そんな楽な仕事は無かった。
今の世の中、お金もカードも免許証も必要無かった。
全て携帯型パソコンの中に集約されているからだ。
生まれた時から1人1台の携帯パソコンが国から支給される。
これが自分の身分を表示させる物で、その情報は生まれた時に身体の中に埋め込まれたチップに保存されている。
これ1台でお金の支払い、電話、生活に必要な物は全て行なわれる事になる。
大きさは今のスマホと同じくらいのサイズで、機能は今のスマホとほとんど変わらず、お金の支払いの時は翳すだけ、証明書は画面に出して見せるだけ、操作するときは身体に埋め込まれたチップにより考えるだけで操作ができ、空中に立体的な画像として写し出す事が可能、脳内部で立体的に見せているので他人に見られる心配は無い。
勿論、共有して見せる事も可能だ。
チップと携帯パソコンは連動している為、見た物を写真として携帯パソコンに保存して置く事が可能。
だけど如何わしい写真を撮るとキーワードが引っ掛かり警察に送信されたり、警察の特別捜査官が定期的にネット内を巡回しているようなので、犯罪まがいな事をすると捕まる確率が高くなる。
たまたまとか偶然とか男性ならスケベな写真を持っているのは当たり前だから、その辺りはキチンと考慮してくれているようだ。
電話の時は空中に相手の画像が立体的に写し出されて話す事が可能、端から見たら独り言のように見えるけど...。
人に聞かれたくない場合は脳内部で考えるだけで、相手の携帯パソコンに音声として飛ばす事も可能だ。
携帯パソコンで何でも出来る世の中なので、無くしたり盗まれたりすると大変だ。
セキュリティは付いていると言っても、自分の命の次に大事な物、もしくは相棒と呼べるだろう。
人工知能が搭載され普通に会話が出来る。
これさえあれば独りでも寂しくない...、そうとも言えないか、やっぱり見えない相手だから生きている人間と話した方が寂しくないだろう。
自分以外の人間が操作出来ないように、身体に埋め込められたチップがないと動作できないしプロテクトが幾つもかけられている為、自分以外の人間で操作ができるのは警察官や政府の人間くらいだろう。
やろうと思えばチップごと奪ったり、警察官とグルになったり考えられることは沢山有るが、そう言ったらきりがない。
材質も壊れないように強化素材で作られていた。
ビルの100階から落とされても、10トンの荷物を置いても、水深1000メートルの深さに沈んでも壊れない。
僕は試した事ないけど...、でも所詮は機械なので壊れる時もある。だから役所に行って定期的に交換しないといけない。
勿論、交換は無料、10年ごとの機種交換、半年ごとの定期点検は義務化されていた。
定期交換の前、自分の不注意で壊した場合は有料になる。
滅多に壊れないけど...。
あとは携帯パソコンには沢山種類があり、気に入らなければ交換している人もいるけど、この携帯パソコンはとても高価なので、余程お金に余裕がある人しか買うことも交換する事も出来ないだろう。
だから僕は壊さないように、盗まれないように、大事に扱っていた。
電波は全て衛星電波を使用、世界の何処へ行っても繋がらないということは、ほとんどない。
それに充電の必要がない。それも小型化された発電池のお陰だ。
大きさはボタン電池と同じサイズなのに、携帯パソコンくらいならこれ1つで賄える、通称、発電する電池なので発電池。
家庭用は少し大きく、ハンドバックの大きさで家一軒分の電力を充分に賄える。
それもこれも突然現れたダンジョンのお陰だった。
ダンジョンが突如現れたのは30年前の大災害が起きてからだ。
30年前のあの日、ついに富士山の大噴火と関東一帯を襲う都市直下型地震が発生した。
噴火が引き金で地震が起きたのか、それとも地震が引き金で噴火が起きたのか分からないが、同時に起きてしまった最悪な災害だった。
富士山の大噴火では、周囲100キロにも及ぶ地域に噴石を撒き散らし、噴煙と巻き上げられた土埃により1ヶ月以上、1メートル先も見えない暗黒の世界が続いた。
都市では液状化現象により建物が沈み、3分の1が海の侵食を受け水没した。
都市は壊滅的ダメージを受けていた。
都市を復興するよりも移転した方が良いのではという意見も出されていた。
立候補地は、大阪、名古屋、福岡だ。
だが政府は世界の復興支援寄付金もあり、東京都をもう一度復興させようとして出来たのがウォーターフロント東京。
場所は元東京都、だがほとんどが海へと沈んでしまったので、海の侵入を防ぐ為に、かろうじて残っていた元東京都部分を取り囲むように防波堤が設置され、その見た目は海に浮かぶ水上城塞。
唯一、行き来できるのは海上にかけられた3本の橋と2本地下道路、4本の地下鉄環状線だけだった。
大災害から1ヶ月が過ぎた頃、ようやく富士山の噴火による暗黒の世界が終わり、噴火による状況が分かり始めていた。
周囲200キロ内では、草木は枯れ、火山灰が降り積もりまさに地獄。
土石流の跡や溶岩流の跡、至る所に噴火によって飛ばされた直径10メートルはある岩石がゴロゴロ、火山灰と土砂が塵積もっていた。
そして噴火口と思われる巨大な穴が1つ。
直径100キロは有りそうな巨大な穴、深さはかなり深そうで太陽の光が底まで届かず暗くて見えない。
もしかしたら地球の中心まで届いているのではないかと思えるくらい深い。
調査隊が結成され、何度か探索に向かったが誰一人として戻って来る者は居なかった。
暫く経った頃、穴から誰かが這い上がって来たというニュースが全国放送で流れていた。
調査隊の誰かが戻って来たという事で、話題となり全国の誰もがテレビに釘付けだったろう。
固唾を飲み込んで、生存者の安否を気遣って今か今かと待ち望んでいた。
だが、穴から這い上がって来たのは人では無かった。
人の姿をしているが、明らかに小柄、子供かとも思ったが、子供がこんな穴を登れる訳ない。
近づいて来て分かったが、よくゲームとか幻想物語で出てくるゴブリンにそっくりだった。
土埃で汚れている為、近くで見ないとよく分からなかったが、特徴的な怪しく光る大きな目、それがテレビに写し出された時は既に遅かった。
穴から這い出たゴブリンはカメラマンを襲い、カメラだけが映像を映しながら奈落の底へと落ちていく。
その途中で映し出されていたのは、壁を這い上がって来る多くのゴブリン達。
人々は恐怖した。
多分、あの現場に居た者は全員生きてはいないだろう。
政府も黙って見てる訳では無かった。
直ぐに自衛隊が派遣され、モンスター退治に出撃した。
Fー35、Fー15、Fー4、Fー2戦闘機が空を飛び交い、地上では、74式戦車、90式戦車、10式戦車、75式自走155mmりゅう弾砲、203mm自走りゅう弾砲、99式自走155mmりゅう弾砲、装甲車等が日本全国から集結していた。
だがこれだけの火力が有りながらも、モンスター達を押し返す事が出来ずにいた。
それは穴の一定範囲内にバリヤのような物がはられ、自衛隊の攻撃を防いでいたからだ。
アメリカ軍も撃退には協力していたが、バリヤを突破する事は出来ずにバリヤから出てくるモンスターをそれ以上進行しないように食い止めるのが精一杯だった。
だが、その内モンスターは違う場所から現れ、自衛隊とアメリカ軍は背後から襲われ始めた。
これにより自衛隊とアメリカの共同軍は、前と後ろとの挟み撃ちを受け混乱状態となり撤退を余儀なくされた。
どうやら富士の樹海の地下道と巨大な穴が繋がっているようで、至る所からモンスターが出没するようになっていた。
共同軍は後退して範囲網を作ったがモンスターは予想を遥かに超えて溢れだし、日本中に、更には世界へと広がる可能性があった。
そして政府は苦渋の決断に、迫られる事になる。
現在の最高火力で溢れ出す穴に蓋をするかどうか...、いわゆる核攻撃だ。
このままでは被害が広がるばかり、それならば一層の事、核攻撃した方が最小限に留まるのではと淡い期待感が膨らむ。
その議論は日本政府は承認し国連に委ねられる。
そして被害を重く見た国連は、核攻撃を許可することになる。
直ぐ様、巨大な穴に向けて大陸間弾道ミサイルが発射された。
これで全て終わるだろう、核による汚染は残るが数年後には元に戻るだろう、そう確信していた。
核ミサイルは狙い通り巨大な穴に命中したかと思われた。
だが核ミサイルは爆発しなかった。
核ミサイルはそのまま巨大な穴のバリヤを通り抜け吸い込まれるように深い穴の中に消えて行った。
失敗なのか、不発弾なのか?そんなはずはない。
最新技術がてんこ盛りの最新兵器がまずそんな事はあり得ない。
それに万が一、自動で爆発しなくても手動でも爆発出来るようになっているはず、何故?世界は驚きを隠せなかった。
2回、3回と試したが結果は同じだった。
現状最大火力の武器である核攻撃が効かないのだ。
モンスターに蹂躙されていくしかないのだろうか。
世界は日本を犠牲にしてモンスターを閉じ込めれば良いのではないかという考え方に変わってきていた。
どの国も自分の国に大事だからだろうけど、それはあんまりじゃないか?
だがそうは問屋が卸さないのは、モンスターの方だった。
まずは核攻撃を仕掛けて来た国へ巨大な穴から、大きな黒い塊が飛んでいった。
大きな黒い塊は核ミサイルが発射された場所に着くとそこに富士の穴ほどではないが巨大な穴を作り、そこからモンスターが現れ初めたのだ。
そう黒い塊はモンスターの脅威を他の国へにも飛び火させたのだ。
更に大小、大きさは違うが黒い塊は世界の至る所に飛んでいった。
まるで蜂の分蜂のように、住みかを増やし仲間を増やしているように思えた。
そして穴の周辺でも、生態系に被害が及んでいた。
モンスターの侵略に依るものか分からないが周囲にいる動物達に異変が起きていた。
凶暴化したり、強力な動物に変化したり、その影響は人間にも起きていた。
筋力が桁外れに強くなったり、特別な能力を持ったり。
その内、分蜂が終わったのかモンスターの進行は自然と沈静化していった。
そしていろいろな調査や研究が行なわれモンスターが出てきた穴がダンジョンと分かり、モンスターを倒した時にドロップする魔石から色々な物を作り出す事に成功した。
資源の乏しい日本にとっては喜ばしい事だった。
その1つが発電池、発電機と蓄電池を一緒にする事ができ、それを小型化する事に成功、そのお陰で発電所や電気を送る為の電線等が不要となり、世界は発展していく。
そして出来たのが携帯型パソコン、これ1台で何でも出来る優れ物だ。
モンスターと戦う内に自分の能力が分かるアプリが開発者されたり、ゲームで良く見るモンスターを倒して稼ぐ冒険者が現れたりと少しずつ生活は落ち着きを取り戻していった。
そして現在、最初に出来た穴を地名から富士の穴、または最初に出来た穴だから原初の穴と呼ばれ、時折、出現する巨大なモンスターの危険度から穴の淵に高さ20メートルの巨大な壁を建設して進行を防いでいた。
ただ、それも気休め程度しかなく、それ以上進行してくる事はないとは言い切れなかった。
巨大で強力なモンスターが現れたら、壁など破壊されてしまう可能性がある。
そうなる前に討伐する役割があるのが冒険者。
モンスターを討伐した時にドロップする魔石や材料に使える部位を売って稼いでいたが、個人で稼ぐには高が知れている。
自然とパーティーを組むようになり、更に集まり集団となってクランと呼ばれる存在となった。
僕は一攫千金を狙ってで冒険者になることに決めた。
それは僕の好きなゲームみたいだからという事もあったが、ベテランの冒険者者は1年間で一生遊んで暮らせる大金を稼ぐ事が出来るらしい。
だから、僕も大金を手に入れて優雅な引きこもりを満喫したいと考えていた。
それは甘い考えてだと言われそうだけど、冒険者の道に進もうと思う。
他の職に付けなかっただけじゃないの?とか冒険者って職業なの?とか言われそうだけどモンスターを倒して魔石を集め、売って稼いでいるから一応、職業だと思う。
確かに危険かも知れない。
だけどクランに入れば1人よりは安全だし、ある程度レベルが上がるまでは、面倒見てくれるとネットでは書いてあった。
何よりテレビでよくモンスター討伐の場面が映し出される。
モンスター討伐チャンネルが有るほど人気が高い。
中にはグロいという人もいるけど、モンスター討伐しているお陰で、僕達は安心して暮らしていけている。
その姿が格好良かったからかも知れない。
もしくは憧れなのかも知れない。
僕もあんな風に格好良くやりたかった。
そして僕は冒険者になる為の準備を始めた。