俺がパーティーから追放したひよこ鑑定士が、SSSランクになって復讐しにくるらしい
「え、なに、ラウル君、復讐しに来るの?」
魔王討伐を志している俺たち、勇者パーティーは、何時ものように野営の準備をした後、焚き火を囲んで緊急会議を開いていた。
俺の前で白色の僧衣を纏った僧侶のリリーナさん、右隣でポーション作成を行っているミリア、そして俺の親友でもある戦士のルィは、同時に「困った」と言ってから大きなため息を吐いた。
「しかもですね、勇者様。勇者様が追放したあのラウル君、実は無能なんかではなく超有能だったんですよ」
金色の髪の毛と蒼色の瞳、僧侶にしてはけしからんボディをしているリリーナさんは、ゆったりとした口調で報告を行う。
「その上、勇者先輩のこと、めちゃんこ恨んでるらしくて、追跡魔法を使ってコッチに向かってるらしいっスよ。
ほら、前に一緒にパーティーを組んでたオディールさん、あの人、バラバラにされて殺されたらしーし」
自分にはまるで関係ないと言わんばかりに、薬剤の調合に集中しているミリアは、くるくるとカールしている巻き毛をご機嫌に揺らす。
「なんか知らんが、勇者のことを殺すって言いまわってるらしいぞ。あとなんかハーレムを作って、毎夜毎夜、パコパコしてるらしいしな」
女の癖に腹筋が割れているルィは、逆さまになって両足で木にぶら下がり「ふん! ふん!」と言いながら日課のトレーニングをこなし始める。
「え、ちょっと待って、タンマ発動させて。まず、なんで、俺に復讐する気になっちゃったの? そこから、解決パートに入らない?」
俺の冷静な提案に対して、リリーナさんは「むぅ」と頬を膨らませる。そろそろ、自分の年齢を思い出して欲しい。
「もぅ、勇者様、忘れたのですか? あなた様がパーティーから追い出したのですよ。ラウル君の職業が『ひよこ鑑定士』だからだって」
「いや、憶えてる憶えてる! むしろ、あんな職業、脳みそに刻み込まれとる!! どこからどうやって、ひよこ鑑定士が勇者パーティーに紛れ込んだのか、3日くらい悩んだから完璧に記憶されとるわ!!」
「つまりー、先輩があんな職業は足手まといだからって、ラウル君をパーティーから追放しちって、あの子がブチギレマックスハートに至ったっつーわけっスよ」
「当たり前!! 合理的判断!! ひよこ鑑定士を魔王城に連れ込んで、何させんだよ!? クライマックスバトルで、ひよこの雌雄判別始められたら、魔王さんに失礼ってレベルじゃないわ!!」
日に日に美男子ぶりに磨きがかかっている御尊顔を見せつけ、汗を拭き取ったルィが俺の隣に腰掛ける。
「でもよー、ラウルの野郎は、実は超有能だったんだろー? だとしたら、お前の判断ミスじゃんかよ。責任とりやがれよ、オラうりうり」
運動後のルィが寄りかかってきて、頬に肘をねじ込んでくる。非常にウザい。
「いやまぁ、仮に、仮にですよ、ひよこ鑑定士であるラウル君が超有能だったとしても、してもですよ、俺を殺す程の強い殺意には至らないのではないですかね、皆さん? ねぇ、リリーナさん?」
リリーナさんは、目を細めて「うーん」と指先を顎に当てる。
「お姉さん的には」
あんた、お姉さんって年齢、とうに過ぎてるでしょ。
「私の目線から見て……16歳の若輩少女の意見としては……」
サバ読みのえげつなさが、どう考えても16歳じゃない。
「ラウル君は、勇者様に寝取られたと思ってるんじゃないかな?」
「は? 寝取られ? ひよこと寝る趣味はありませんが?」
「勇者、ひよこ鑑定士は性癖じゃねーぞ」
「どこの『ね』を取れば、文章になるんですか?」
「謎掛けでもないスよ、先輩」
リリーナさんは、呆れたかのようにため息を吐く。
「つまりですね、勇者様。ラウル君は、勇者パーティーの誰か……十中八九、私……にホの字であって、その私が勇者様にぞっこんだと勘違いして、嫉妬心がむきの丸出しになっちゃってるんですよ」
「『ホの字』とか『むきの丸出し』とか、堂々と言っちゃうセンスよ」
「あの年齢で、自分に惚れたと確信してるドヤ顔……さすがは、リリーナさんっスね」
大きな胸を張って高い鼻を更に高々と掲げ、リリーナさんは渾身のキメ顔をして俺に「うふ」と微笑みかける。
「いや、でも、それ勘違いなんですよね?」
「そ~そ~、こん中で惚れるとしたら、あたし以外にあり得ないじゃないスか~?」
「オレだろ。腹筋、割れてるしな」
「いや、腹筋は関係ない」
「上腕筋のサイズか?」
「頼むから、隅の方で三角筋とでも結婚しててくれる?」
ルィはつまらなそうな顔をして俺から離れ、黙々と指立て伏せを始める。つくづくまで、脳筋である。
「勘違いだとしても、ラウル君にとっては立派な真実なんですよ。私を寝取られた彼の心の痛み、わぁかぁるわぁかるよきみぃの気持ちぃ~!」
「なんで、急に歌いだしてんだこの人」
「先輩、声に出ちゃってまスよ。一回、泣き出したら、ヒーラーとして機能しなくなるんスからやめてください」
「聞こえてますよ!! なんですか、最低!! ラウル君から、私を寝取った癖に!!」
「都合のいい妄想は、自称年齢だけにしてもらえます?」
「僧侶を舐めないでください!! 神殿で職業変更を行っているのも、僧侶なんですからね!! 私だって、その秘事を教え込まれてるんですから、勇者様とモンスターを混ぜ込んで『ゾンビ』にでも転職させられるんですよ!!」
脅迫に具体性があって怖いよ。というか、モンスター職って、モンスターと融合させて作り出してんのかよ。最早、邪教じゃんか。
「で、結局、どうすんだ、勇者。ラウル、すげー強いんだろ? 噂によりゃー、オレらを軽く上回ってるらしいぞ」
ひよこ鑑定士から勇者パーティーを凌駕するほど強くなるとか、どういうチート使ってんだあの子。そもそも、俺が悪いのは確定なのコレ?
「全裸土下座して、足を舐めたらどうにかなんないかな?」
「先輩、自分が勇者だってこと忘れてない?」
「なら、殺すか~!」
「選択の振り幅、半端じゃねーなお前」
勝手に勘違いされて殺されても困るので、俺は人質と書いた紙をリリーナさんの額に貼り付け「ふへ?」と疑問符を浮かべる彼女に笑いかける。
「リリーナさん! 一緒に闘いましょう!!」
「え? も、もちのろん!」
「リリーナ先輩、気づいてください。ソレは大切な共闘者に向ける目じゃありません、これから出荷される家畜に向ける目です」
「大丈夫ですよ、ミリアちゃん……寝取られた者の末路として……この運命、受け入れますから……」
「悲劇のヒロインにシフトするのが早すぎる」
「でよー、噂のラウルくんは、いつ来るんだ?」
「もう来ていますよ」
思わず、バッと振り向く。
気配も音もなかった……宵闇に紛れ込んだラウル君は、くすくすと笑いながら姿を現し、身に着けた黒衣の汚れを片手で払う。
「ん……? あれ……? えーと……ラウル君……?」
「別れて半年しか経ってねーのに、もう顔を忘れてるぞコイツ」
「さすが先輩、記憶力の下賤さがクズとしての高潔さを表してる」
半年も経ったら、普通は顔くらい忘れるだろ!! とりあえず、憶えてる風を装ってご機嫌をとる!!
「久しぶりだね、ラウル君! 恋人のひよこは元気かい?」
「わぁ……一歩目で、地雷を踏み抜いてる……最早、コレは才能っしょ……」
「何度も言ってるが、僕は別にひよこを性愛の対象として見ていない!! 貴様は!! 何時もそうやってふざけて! 僕の職業をバカにしてぇ!!」
「ラウル君! 勇者様は、ホの本気で! ひよこ鑑定士は、全員、ひよこと添い遂げると思ってるんですよ!! すんごーく、バカなだけなんです!! 頭の中には、脳みその代わりにスライムが詰め込んであるだけなんですよ!!
超絶美人で慈悲深い僧侶である私に免じて、彼を四分の三殺しくらいで許してあげてください!! 超絶美人で慈悲深い僧侶である私に免じて!!」
相変わらず、フォローに見せかけて、人を窮地に陥れるのが得意だなぁ。
「貴方が惚れていた私に免じて!!」
嬉々として自らの魅力を語り始めたリリーナさんに対して、ラウル君は童顔を歪ませて嫌悪感を露わにする。
「惚れていた? 誰が? 僕がか?
ハ、笑わせるな! 誰が、おまえのような、頭のおかしいヒーラーに惚れるもんか!! 勇者とグルになって、戦闘の度に僕を半殺しにして楽しんでいた癖に!!」
「勇者様、コイツ、殺しましょう」
「慈悲深い僧侶、どこいった?」
「ラウルさん、違うんスよ! リリーナさんは、頭のおかしいヒーラーなんかじゃない! 単に、顔の可愛い男の子が、モンスターに痛めつけられる様を長く見続けていたくて、死に至る間際まで回復しなかっただけなんスよ!!」
「つまり、頭、おかしいんじゃないか!!」
百パーセント、正論。
「ラウル君が、ショタだったのがいけないんだもん!! しね、ばーか!!」
「リリーナさん、落ち着いて! 何度も言ってるが、ヒールで人は殺せないんだ! 職業が『ゾンビ』とかならともかく!! 回復術で、普通の人間は殺せないんだ!!」
延々と殺意の籠もった回復を受け続けるラウル君は、さすがに気色悪く思ったのか、急にターゲットを変更した。
「それにオマエェ!! 筋肉バカァアア!!」
「筋肉にバカはいない」
「オマエのこと言ってるんだよぉ!! 後ろの筋肉向けてないで、目の前の筋肉で向き合えや脳筋がぁ!!」
ラウル君のことを無視して、ひたすらに背筋をいじめ抜いていたルィは、爽やかな微笑を浮かべて「へぇ、オレか」とつぶやく。
「毎夜、毎夜、毎夜ぁ!! 僕のことを呼び出して、体の良いサンドバッグにしやがってぇ!! なにが『筋肉は叩いて伸ばす』だ!! 伸びるわけないだろ、バカがぁ!! 子育てを参考にしたとか言ってたけど、ソレは『子供は褒めて伸ばす』だし、そもそも『伸ばす』の意味間違えてんだよバカがぁ!!」
「でも、お前の筋肉は喜んでた」
「喜んでないよ!! 勝手にお前が自己満足してただけだよ!! 深夜に筋肉とお喋りを始めるのはやめろ!! 寝れないんだよ!!」
「あぁ? つーか、筋肉を舐めんじゃねーっつーの。どんなにレベル差があってもよー、筋肉を研究しきったオレの筋孔術にかかれば、筋痙攣を起こして動けなくなんだぞオラ」
「ルィ先輩、そんなことしてたんスか……ラウル君、お気の毒に……こんな連中を前にしていれば、そりゃあ、復讐くらいしたくなるっしょ……」
「なに、こっち側みたいな顔してるんだ!! 一番、最悪なのはおまえだぁ!!」
「え? 最悪っていう形容詞で、あたしを指してます?」
ぽかんとした顔で自分を指差し、確認をとるかのように周囲をキョロキョロと見回すミリア……一見するとまともに視えるが、この中でも、ダントツにヤバイのは間違いなくコイツだ。
「実験と称して、僕の飲み物に、自作のポーションを混ぜ込んだだろ!? 忘れたとは言わせないぞ!! 毎日、アレを飲んでたせいで、僕の身体は……視ろ!!」
ラウル君は、黒衣を取り払い――下腹部にある謎の紋様を見せつける。どう見ても、魔術的な作用を発生させる呪いの類だ。
「コレがあるせいで、モンスターが僕に引き寄せられるようになったんだぞ!! そのせいで、まともに宿に泊まることすらできやしない!! モンスターが寄ってきて喜んだのは、おまえら狂人パーティーくらいだ!!」
「人体改造は、さすがに、勇者パーティーの一員としてどうかと思うよ」
「でも、kawaiiっしょ?」
「人体改造をオシャレ扱いするな」
ラウル君のお腹に刻まれているあの印は、俺も過去に彫られたことがあるが、高名な呪い師を頼って解呪してもらった。
あの日から、俺は人間の善意を信じられなくなり、食べ物を勧めてきた相手には夜襲をかけるように心がけている。
「だが、お陰様で、僕は強くなった。ふふ、礼を言うよ」
「気にすんな! あたしたち、仲間だ!!」
「どんな頭してたら、そんな発言できんの?」
「僕のレベルは、おまえらを凌駕してる。それに、ひよこ鑑定士は、『一段階』目の職業だったんだ。
高位転職を繰り返して行き着いた、鑑定士の最果て、僕の今の職業……SSSランクの『天上俯瞰士』になった最強の僕に敵はいない」
「天上俯瞰士って、どこの筋肉のこと言ってんだ?」
「無理に話に入ってこなくていいから、隅の方でヒラメ筋の美味しい食べ方でも模索してなさい」
「天上俯瞰士は、ありとあらゆる物事を〝鑑定〟……つまり、見通して〝価値〟をつける……正に天上から人を見下す神の如き能力……」
「先輩、ラウル君が、説明パート入ってるっスよ。聞いてあげてください」
「なんで、この子は、ペラペラと自分の手の内を明かしてるのかしら? お姉さん、わかんな~い」
ラウル君は、自分の顔を片手で覆い――指の隙間から視える目玉が、赤色と青色の半々で分け隔てられる。
「へぇ、レベル85か。さすがは、勇者、強いね。でも、残念。おまえは、今からレベル1だ。
僕が――そう鑑定した」
唐突に、今まで装備できていた伝説の剣が重く感じて、全身の力が抜け落ちるような感覚と共に力が流れ落ちて消えていく。
間違いない、ラウル君の言ったとおり、俺のレベルが1にまで下がっているんだ。
「おまえらも! 全員! レベル1になれ!! そして、僕に跪け!!」
リリーナさんも、ミリアも、ルィも……全員が全員、俺と同じようにして、急激な衰退を覚えてその場に座り込む。
ラウル君は、高笑いを上げながら、俺たちのことを睥睨した。
「ハハハハハ!! どうだ、今の気分は!? 僕のことをパーティーから追放したおまえらが!! 自分たちを有能だと思いこんでいたおまえらが!! 僕に跪いて許しを請うなんて!!」
「いや、まだ、許しは請うてないが」
「しっ! 今、ラウル君の人生のピークなんスから!」
「ふざけてる場合じゃねーぞ、さすがにマズい……レベル1になったせいで、オレの腹筋が割れてない……」
「ルィちゃん、今一番、ふざけてるの貴女ですよ」
「ふふ……精々、今のうちにふざけておけ……おまえらは、容姿だけは良いからな……調教して、僕の性奴隷として飼ってやる……泣いても喚いても、許してなんかやらないからな……!」
愉悦じみた笑声を上げるラウル君、よくもまぁコイツらを抱く気になるもんだと思うが、性格さえどうにかなればイケるかもしれないなとも思う。
「勇者! おまえは嬲り殺しにしてやる!! 虐められていた僕を放置して、ひよこ鑑定士を蔑ろにし、パーティーから追放したおまえに!! たっぷりと地獄を味わわせてやる!!」
やれやれ、どうやら、ココで終わりらしい。全員、レベル1にされたら、どうしようもない。天上うんちゃらとかいう職業を打開できるような策はないし、ココまでレベル差が開いたら攻撃も通用しないだろう。
せめて、防御無視のヒールでも効いてくれたら……
――神殿で職業変更を行っているのも、僧侶なんですからね!!
どうにか……なるんだ……が……
――勇者様とモンスターを混ぜ込んで、モンスター職である『ゾンビ』にでも転職させられるんですよ!!
アレ? どうにかなっちゃうんじゃない?
「よし、先ずは、おまえの両手両足をゆっくりと切り刻んでやる!! 覚悟しろ!! アハハハハ!!」
俺たちの攻撃が、自分に通用しないことを知っている彼は、己が完全に勝利したと思い込んでいて、それが故に大きな隙が生まれ――俺が指示を出した瞬間、間隙をついたルィは、彼の全身の筋肉に指先を叩き込んでいた。
「ハッ」
避けようと思えば、避けられただろう。だが、敢えて、ラウル君は躱さなかった。当たり前だ。受けたところで、無傷なんだから。
――どんなにレベル差があってもよー、筋肉を研究しきったオレの筋孔術にかかれば、筋痙攣を起こして動けなくなんだぞオラ
無傷ではあるが――変調は訪れる。
「な……身体が……!」
筋肉を知り尽くしたルィの筋孔術によって、ダメージこそ受けなかったものの、全身の筋肉が〝攣った〟ラウル君の動作が停止する。
だが、彼は、その傲慢さと余裕を崩そうとはしなかった。
「無駄だ! どうせ、おまえらの攻撃は、僕には通用しない!! 勇者パーティーなんだから、今の僕の防御力くらい、予想がつくだろう!?」
「ソイツは、どうかな……ミリア!」
自分のなすべきことがわかっているかのように、ミリアは半開きになっているラウル君の口にポーションを流し込み……『モンスター引き寄せの呪い』が強まった彼の下に、怒涛の如く魔物たちが押し寄せてくる。
「くどいぞ、無駄だと言っているんだ!! この程度の量のモンスター、僕がさばききれないとでも――」
「リリーナさん」
既に〝秘事〟の準備を整えていたリリーナさんは、ニッコリと笑って〝職業変更〟のための祝詞を唱え始め――ようやく、ラウル君は、俺の狙いを察知して顔を真っ青にする。
「ま、待て!! 身体がまだ動かな……や、やめ……やめてください!! が、頑張ったのに!! せっかく頑張ってココまで……り、リリーナさん!! た、たすけ! や、やめ!!」
「ラウル君」
全身をガクガクと震わせて、必死に命乞いをするラウル君を見つめて、リリーナさんはニッコリと微笑む。
「くたばれ♡」
「嫌だぁああああああああああああああああああああああ!!」
「汝、『ゾンビ』に至りし者と任じる!」
ラウル君を中心として、反時計回りに渦巻きが生じる。
あっという間に、彼めがけて押し寄せてきたモンスターが吸い込まれていき、白目を向きながら痙攣し始めた彼の肌が腐り始め……数秒後には、敏捷力が底辺として有名なゾンビと化していた。
そんな哀れな彼を見つめ、リリーナさんは満面の笑顔で杖を振る。
「えーい、ヒール♡ もういっちょ♡ うふふ、ひ・い・る♡」
「ぁあ!! ぐぎゃぁ!! おぼぇ!!」
「ひ、酷ぇ……人間の所業じゃねー……」
「ま、まー、でも、ゾンビ化してもまだレベル差が生じてるし、ラウル君の防御力を貫けるのは、リリーナさんのヒールだけだから」
「MP回復ポーションは、ほぼ無限にあるからな。リリーナさんの愉悦TIMEは、まだまだ続くだろ。
さすがに殺しはしないだろうし、拷問が終わった後にひよこ鑑定士に戻してあげれば、万事解決でおしまいだ」
ようやく、大騒動を片付けた俺は、その気持ちよさから伸びをして――あるひとつの真実に気がついてしまう。
「……ラウル君じゃなくて、お前らを追放すれば、こんなことは起きなかったんじゃ」
「復讐、しますよ?」
「復讐、するっスよ?」
「復讐、すんぞ?」
悪魔のような三人に囲まれて、俺はため息を吐き――
「もう、追放はこりごりだよ」
誰かをパーティーから追放するのは、もうやめようと誓った。