未来の冬
ある国に、一つ高い塔がありました。春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様が決められた期間、交替で塔に住むことになっています。そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。
ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。冬の女王様が塔に入ったままなのです。 辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。
困った王様はお触れを出しました。
「冬の女王を春の女王と交替させた者には好きな褒美を取らせよう。ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。季節を廻らせることを妨げてはならない」
お触れを見た民衆は、すぐに塔に向かった、すると、いつの間に、塔の外で、長い行列ができてしまいました。誰も褒美の為に自分の仕事を放り出して、この塔にやってきた。
普段は立ち入り禁止だったこの塔が、今人が溢れています。
女王様と呼ばれているが、まだ二十歳な女王様はとっても美しい、けれど、欲望に目をくらませた民衆は、女王様をちゃんと見みようとしないから、その美貌に心を奪われることもなかったです。
一部の民衆は女王様を罵倒しました。
「あんたのせいで、商売できなくなった、どうしてくれるんだよ」
他の民衆は女王様に愚痴を言ました。
「あたしのアイスクリームが全然売れなかったよ、もう冬何で、さっさと終わればいいのに」
猟師は女王様に銃口を向けて、殺すと脅しました。
けれど、女王様は何も言わず、顔色一つも変えず、まるで氷みたいで、この罵倒の嵐を過ごしました。誰も冬の女王様をこの塔から引き出せることができませんでした。
数日後、塔の外に、並んでいる人はもういませんでした。
困った王様は、色んな場所から人材を招いていた、商会のエリート、外交官、話術師。
「女王様、あなたさまはもう休む必要があるでしょう、商会で一流の食べ物と部屋を用意しております」
「女王様、国王陛下はこんな提案を出しました、私から見ればこれ以上のない素敵な提案です、飲んでいただきませんでしょうか? 」
「女王様、貴方様はもうご存知でしょう? 今貴方様はこの国の民に憎まれています、こんな無意味なことはやめたほうがよろしいかと思います」
けれど、彼達の言葉は、氷の如くの冬の女王様の心に、届いていませんでした。
もうこうするしかなかった、王様はある決断をしました、それは、次の冬まで女王様を軟禁すること。
王様は塔の外に兵隊を集めた。
「これが最後の機会です、儂だって、季節を司る女王様にこんなことをしたくない、でも民の為に、儂はこの季節を廻らせるんだ」
もちろん、女王様は何も言わず、何もしませんでした。
「仕方がない、進め、冬の女王様を捉えて、季節を巡らせるのだ」
突然、雪風吹が発生し、塔の扉も氷で閉ざされました。兵隊は塔に近づくことができません。風吹を突破出来る将軍様でも、塔に扉を開くことはできませんでした。
国中、もう女王様を塔から追い出せようとする人が一人もいませんでした。氷に話しかけても意味がありません、殴っても手が痛くなるだけから。
塔は昔と変わらない、訪れる人はいない、いつの間に、塔の扉に貼り付ける氷はもうなくなった、けれど、誰一人気付ける人がいなかった、このぼろ服を着ている少女以外は。
少女は塔に入り、女王様に話しをかけました。
「女王様、遂に会いました、会いたかったです、あたしはね、冬が大好きなの」
ぼろ服を着ているこの少女が冬を好きと言いましたから、女王様も少々驚きました、けれど、すぐ氷みたいな顔に戻りました。
「少女よ、ボロボロな薄い服を着ているあなたが、冬が好きなはずないじゃない」
「冬はね、誤解されやすい季節なの、春の為に、大自然を休ませる、ちょっと厳しく見えるけど、優しい季節、あたしはこんな冬が大好きなのです」
「けれど、寒くないの? 」
「寒いよ、でも、寒いこその暖かいです、温もりを感じられるのは冬だけです、暖かい物でも、夏になったらただの熱いものですから」
「けれど、春の方が暖かいよ」
「冬があるから、春が暖かく感じるのです」
「ありがとう」
女王様の笑顔と共に、雪風吹が止みました。女王様は耳を傾けないわけではありませんでした。ただ、誰一人が女王様を理解しようとしなかあっただけです。
「ほら、あなたの笑顔がこんなに暖かいもの。ねぇ、女王様、優しい冬を司るあなたが、きっと何かの理由があるから、この塔から出られなくなったと思う、その理由をあたしに教えてくれませんか? 」
「冬は、もうすぐなくなるの」
「なんですって!? 」
「温室効果のせいで、冬はもうすぐなくなる、十年後はもう冬が来ない、季節は三つになり、あたしはもう二度と、この塔に入ることができませんの、だから、春の姉様は自分の行方を隠れていたの、あたしをもっと長くここにいられる為に」
「なるほど、そういうことですか、そうですね、じゃ、あたし、一つ考えがある、女王様の協力が必要ですけど」
「ええ、わたくしが出来ることなら」
少女は女王様と塔から出て、王宮に向かいました。
塔の外で、春の女王様に出会いました。
「これでいいの? あなたが塔にいられる時間はもう長くないのよ」
「大丈夫ですよ、お姉さま、だから、春をこの国に運んでください」
王宮に着いた少女と女王様は、民衆の目線を浴びながら、王宮に入りました。
民衆は少女がどんなご褒美が欲しいのか、どんな方法で女王様を塔から引っ張り出したのかを知りたくて、二人の後ろについて行きました。
「王様、あたしは冬の女王を春の女王と交替させました、約束通り、褒美を取らせていただきます。」
「よかろう、どんな褒美が欲しいのかい」
「あたしが欲しい褒美は冬そのものです、温室効果を対抗する為の策を考えて欲しい、このままじゃ、十年後はもう冬が来なくなる」
民衆は騒ぎ出した、あと十年で冬がなくなることは誰でも予想できませんでした。
「それは本当かい? 冬の女王様」
「ええ、氷はどんどん減って行きます」
「でも、冬は以前より寒かった」
「氷が一番冷たい時は、溶けている時です」
この場にいる民衆は、全て自分の過ちだと気付いました、女王様が塔に籠ったことも、冬がなくなるかもしれませんことも、全部環境問題を考えない自分のせいだと言うこと。
なのに、女王様をのせにして、罵倒しました。
「話はわかった、温室効果対抗本部の成立をここで宣言する。こんな事態になったのは儂の責任だ、もしお触れを出す前に、ちゃんと冬の女王様に話を聞いたら、こんな長い冬にはならなかった。ところで、少女よ、ご褒美はそれだけでいいのかい? これは、この国、儂も含めて、全ての国民の責任だ、あなたのご褒美にならない、自分の為に、何か欲しと思っていないのかい? こんなぼろ薄い服を着ているのに」
「あたしはただ、女王様を応援したくて、塔に入っただけです、ご褒美何で要りません」
「よかろう、じゃ、あなたを温室効果対抗本部の部長に任命する」
「ありがとうございます」
こうして少女は温室効果対抗本部の部長になりました、この十年間、少女は冬を守る為に必死って働いた、民衆もわかっています、冬を守れるのは、女王様ではなく、科学者でもなく、王様でもなく、民衆自身だと言うこと。
この国の努力は無駄ではなかった。頑張った末に、待っているのは冷たいけど、心が暖かい冬でした。
少女は冬の女王様と共に、たくさん冬を迎いました、めでたし、めでたし。