カミングアウト
「ちょっと聞いて欲しいんだけど」
「何だよ。改まって。
も、もしかして恋愛相談か!?
ああ、とうとうそんな年頃になったのか…
お父さんは嬉しいよ!」
「変態に育てられた覚えはねーよ。
って、そうじゃなくて!
まじで、聞け。」
「そんなに深刻な話なのか……
分かった……心配するな!
お前がどんな性癖を持っていようともお父さんは受け止めるよ!」
「お前、うぜぇ」
「………話の内容がそれとか言われたら
僕、本当、泣いちゃうよ?」
西日の差し込む放課後の教室、
クラスメイトは部活動へ行っていたり、すでに帰宅しており、ここに残っているのは僕ら帰宅部暇人2人だけだった。
「そうなる前に、話を聞け。
あのな、」
心なしか、すこし緊張しているようにも見える面持ちで、僕の親友はこちらを真っ直ぐと見た。
「俺が吸血鬼の子孫だっていったら、
どう思う?」
「え?すげぇ。」
僕の反応に彼は苦笑いで頭を抱えた。
「うん。お前が変に馬鹿正直なのは知ってたけどさ。
直感的な感想とかじゃなくて、それ以前にさ、信じる?」
「いや、だって、
こういう類のこと言って、もし僕を騙すつもりなら、多分反応を見て面白がるためでしょ?
それだったら、きっと
俺は実はお前の兄貴だったんだ……
とかの方を先に言いだすと思う。」
「なにその微妙な違い。」
「幼馴染なめんな。
付き合い長いとさ、直感的にあいつだったらこっちの方選ぶなとかわかるでしょ?
それの延長。
俺は吸血鬼だーなんて、あくまでお前自身の話じゃん。それだったら兄弟だ!みたいに巻き込む方を選ぶと思う。
あと、お前が冗談でも中二病的発言を自分からするとは思えん。」
「確かに当たってる気もする。
……きもいな」
「俺たちの友情のなせる技をきもいとか言うなよ!」
「あー、はいはい。」
彼はいつも通りの冷めた口調でそう言うと、バックを片手に立ち上がった。
「そろそろ帰るか。」
「あー、流したー。
そんなんだからいつまでたってもクラスで怖がられたままなんだよー。
僕以外にちゃんと友達いるー?」
「うるせーよ。
気ぃ使ってまで友達作りとかしたくないし。」
実際はこの冷たい態度がクールキャラとして受け入られつつあること。
というかむしろ、文武両道で顔も割と、割といいから、女子の熱狂的なファンがいたりすること(それも大量に)は癪だから教えてやらない。
「ってか、結局なんだったの?」
「…………。その様子じゃ少しは信じてくれそうだから言うぞ。」
そういえば昔から少し思うところはあった。
勉強も運動もそつなくこなし、御伽噺に出てくるような王子様の格好をしても似合ってしまうような顔立ちで、(いや、つまりはイケメンで、)まさに非の打ち所のない奴だ。
そしてそれ以上に、こいつはどこか浮世離れした独特の雰囲気があって、「普通の奴」ではないとは思っていt…
「お前は、吸血鬼の末裔だ。」
「そう……。はじめっから仮定で話したりなんてまどろっこしいことしないではっきり言いな…………ん?…え?僕?」
「お前は、吸血鬼の末裔だ。」
「……………………。」
「お前は、吸血鬼の末裔だ。」
「…………………………………………。」
「お前は、きーーーーー」
「だーー!そう何度も言わないでよ!
雰囲気が台無しじゃないか!」
「だって、わかってないみたいな顔してるから。」
「わかるかぁ!
なんで今の流れでそーなるんだよ!?」
「えー、驚かないように直接は言わずに、話の流れ考えたんだぞ。」
「おかしーーでしょ!さっきのは明らかに君が吸血鬼って流れだったじゃないか!」
やつは少し考えるような仕草をして、
説明を諦めた。
「細かいことは気にすんな。明日になりゃ分かる。」
そう言い残すとさっさと立ち上がり、返答を待ち構えていた僕を置いて、バックを掴み、教室のドアへむかう。
僕にはわかる。あいつ面倒くさがって逃げた。
「ねぇ!ちょっと、待ってよ!ねぇ!
説明してよ!ほんと意味わからんのだけどぉぉぉぉ!?」
帰り道、散々問い詰めてやっと得た返事は
「うるせー、話すと長い。」
だった。
誰か見てくれればいいぃぃぃなぁぁぁぁあああ
コメントちょーだい。
やる気をちょーだい。