リ、座敷わらしダンジョンに潜る。
ダンジョンです!
異世界と言ったらダンジョンと言われるくらいに、憧れのダンジョン攻略です!
ヤバイですよ。
ウキウキが止まりません。
キルキスさんが作った光の球と、わたしが作った火の玉がダンジョンの周囲を照らし入っていきます。
え、火の玉って何かですか?
鬼火。
人魂。
とも呼ばれていますね。うん。
「青白い炎って何だか奇妙な感じだな」
ジーラスさんと同じ戦士系のドルンさんが、わたしの火の玉を見て怖がっていますね。
ドルンさんは太めのオジサンで、フルアーマーに大きな盾と正面からのぶつかり合いが得意だそうです。
ドワーフぽいと思っていますが、確認はしていません。
移動速度は、そのドルンさんに合わせて進みます。
ドンドン進みます。
別れ道があっても直ぐに一つの方に進みます。
ほとんど迷いが無いです。
マッピングとかのダンジョンの楽しみはなく、ただ、進みます。
余所見もせずに進みます。
大丈夫なのでしょうか?
「そうだ、此処って魔物が居るんですよね?どんな魔物が居るんですか」
「アント系はいるはずなんだが」
アント系つまりは蟻の魔物は、彼らを捕食する魔物から身を守る為。よくドラゴンの巣に住み着くみたい。食べられないのかなと言うと、食べられるそうだがドラゴンが好まない味なのか。食べられる奴は少ないらしい。
それよりも、虫系の魔物を捕食する魔物の方が危険らしく、女王蟻の様にドラゴンの世話をして多少食べられてもアント系には人気があるらしい。
「どのタイプが居るかだが、どうやらお出ましだな」
既に、五回くらい分岐を進んだ所で、ギチギチと音を立てながら現れたのは、五十センチくらいの大きな赤い蟻でした。
数は・・・・二、三十匹はいますよ!?
「赤かよ、厄介な!」
「多すぎませんか!」
「なんで今頃、入り口近くに居なかったのに」
ジーラスさんたちは戦闘態勢に入りました。
赤と呼ばれるこのアントは、体長こそ他の魔物に比べて小さいモノの、その代わり狭いダンジョンでも数で行動できるので、厄介な魔物に分類されるそうです。
炎が効くそうですが、狭いダンジョンでの炎は危険が伴う為。使用する場合、キルキスさんに確認を取ってからと言われている。
火の玉も、使用前にキルキスさんからOKを貰っています。
「これは先に潜った奴らダメかもな」
「どうかな?赤にしては数が少ない」
先に潜った冒険者たちに、ダメか大丈夫かの意見が出ます。
それを赤いアントを倒しながら話しているのですから、凄いとしか言えません。赤いアントは、数で押してくるらしく、数さえなければ個々はそれ程強くはないそうです。
毒もないので、噛まれても大丈夫なのか剣を振るっています。
「後続が来ない?」
「あぁ」
どうやら数が少ない事に、ジーラスさんたちは意見を統一したようで、ドルンさんが蟻に噛まれながらも手にした剣で潰していくのが恐ろしい。
通常、赤いアントは襲ってくる場合。百匹を超える事も少なくないそうです。それが、今は半分以下。三分の一。
確かに少なすぎです。
これは先行した冒険者たちが数を減らした可能性が高いと、ジーラスさんたちは結論を出しました。
お陰で、わたしは戦う事もなく。最初のダンジョンでの魔物との遭遇が終わってしまった。
「これ捨てて置くんですか?」
倒したアントはそのままにして、奥ヘと進みだしたので聴いてみると。この赤いアントは、利用価値が低いらしく。苦労して持って帰っても、叩かれるだけ叩かれ赤字しか生まないそうです。
「コイツらの場合は、女王蟻なら価値がある」
女王蟻の卵巣が高級な薬になるようで、それなら儲けが出るそうです。因みに、どんな薬になるか聴いてみたところ。見事に誤魔化されましたよ。
子供には飲めない薬だそうです。
ついでに女性にも関係ない薬だそうですよ。
ふ〜ん。
「効くの?」
「さぁ、バカ高いから飲んだ事は」
ジーラスさんは言いかけて、止めて、しかも怒られました。
理不尽です。
「そろそろいいか」
ドルンさんに促されて前を見れば、道が二つに別れていました。
二つと言っても、右側の道は少し穴が小さいです。
ジーラスさんとドルンさんが警戒しながら、小さい方の穴に近づいて行き。
「コッチはアントの巣だな、どっちか光をコッチの穴に入れてくれ」
ジーラスさんの言葉に、キルキスさんが光を奥に進めます。
アントが居ました!
「やはり居たか、しかし、数が少ない」
アントたちはギチギチと音をたてて威嚇しているようですが、コチラに向かって来る気配は今のところなさそうですね。
「向かって来ませんね」
「あぁ、アイツラは巣に入らない限りは襲ってこないさ。今、見えているのは巣を守る兵隊蟻だ」
アントの生態として、餌を探す働き蟻と巣を守る兵隊蟻がいるらしく。今、見えているのはその兵隊蟻だそうですよ。
確かに、先程の蟻よりも大きく見えます。
暫く火の玉で牽制していましたが、兵隊蟻が増える様子はありません。
「兵隊蟻も少ないか、入ったのか?なぁ、どっちに行ったと思う?」
「アントが少ないのが気にはなるけれど、普通ならドラゴンの方に向かうでしょう」
ドラゴンの巣と蟻の巣、どちらに先行した冒険者たちが向かったのかとジーラスさんに問われ。キルキスさんは直ぐに答えた。
話し合いの結果、やはり向かうのならドラゴンの方だろうと結論が出て、そちらへと向かう。
因みに、足あとはアントの足あとが掻き消しているらしく判別出来なかったようだ。
しばらく進むと、今度は大きなホールに出た。
地竜ズムが寝返りを打っても大丈夫な程広い。
「これは地竜ズムの寝床だな」
「もう着いたの?」
ダンジョンて聴いていたから、こんなに早く終わるとは思っていなかったよ。
「いや、まだ奥はあるぞ。ほら、向こうに穴がある」
ジーラスさんが指差した方に確かに穴があります。
では、ここは?
「ここは最初の寝床だ。ドラゴンは成長に合わせて寝床を替えていく」
つまりは第一層目の終点て所でしょうか?
それにしてもオカシイとジーラスさんは呟く。
「あれだけアントが少ないのに、ここまで戦闘の跡がない。嫌な予感しかせんぞ」
ジーラスさんの意見に皆さん頷きますが、そうでしょうか?
座敷わらしの本能が、良い事があると告げていますよ。
「止まれ!」
別の穴に向って進んでいると、ドルンさんに止められる。
ドルンさんが警戒している方を見れば、人の脚ほどの太さのある。二メートルくらいのミミズがいました。グネグネと団子になっていました。
「ふぅ、蟻共の餌か」
「蟻の餌?」
「少なくとも地竜ズムの餌ではないね、あ、近づかないように一応は魔物だ」
あれも魔物なんですか?!
驚きです。
「さて、先を急ぐか」
再び穴へと入ろうとして、また、ドルンさんが止まります。今度は何でしょう?
「どうした」
「地質が変わっておる」
ドルンさん曰く、地表から寝床までは岩山でも柔らかい地層。その証拠にミミズの魔物やアントがいた事、ですが、ここから先は完全な岩盤層だそうだ。
「こりゃぁ、銅などの鉱物を含んでいるな」
ドルンさんは岩盤を確認して叩いたりしている。
「流石はドワーフ、良くわかるな」
あ、ヤッパリ。ドルンさんはドワーフだった様です。
しかし、銅ですかそれはフェルに報告すれば喜ばれそうですね。
「むぅ」
「まだ何かあるのか?」
「この白い筋じゃがの、これは金鉱脈じゃ」
ドルンさんの一言は、皆さんの動きを止めるのに十分な威力を持っていました。
ほら、良い事があった。