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座敷わらしは異世界で夢を見る。イロハ歌  作者: カラスの子
座敷わらしと悪役令嬢
3/15

ハ、座敷わらしカシム村へ

誤字修正しました。m(_ _)m

 馬車。

 馬車に揺られてユラユラ。

 そう言えば馬車なんて乗ったの初めてですね。

 牛車なら乗ったことはあります、まぁ、平安貴族が使う様な雅な牛車ではなく。農村の荷物を運ぶ牛車ですがね。

 エルフのキルキスさんの提案に乗ったフェルエナさんからミィニアの名前を貰い。

 只今、商人のガラテヤさんや護衛のジーラスさんたちと一緒に、この先のカシムという村に行くところです。

 倒したドラゴンには、荷物を無理に他の馬車に詰め込んで空に近くした馬車を一台とジーラスさんの仲間がついていますが、ガラテヤさんはカシムのフェルエナさんが住むであろう領主に館に荷物を置いて、急いでジーラスさんたちと一緒にドラゴンの所まで戻るそうです。

 そして、そのままカシムには戻らず。出立してきたメルトバの街まで戻って、ドラゴンの肉などを売りさばいて来るそうです。

 「それにしてもガラテヤさんはカシムにも行商に回っているのですか?」

 フェルエナさんの馬車には、フェルエナさん、商人のガラテヤさん、冒険者リーダーのジーラスとわたしが乗っています。

 侍女のセルルカさんは、御者台で馬車を操っています。あの時、二人だけだったのは御者をセルルカさんが務めていたからですね。

 御者台にはもう一人、エルフのキルキスさんが座っています。

 「このオッサンは人が良すぎるんだよ」

 応えたのはジーラスさんでした。

 「昔、子供の頃に父親に連れられてカシムに行っていたてだけで、今でも危険を犯して、カシムに行くんだからよ」

 「それも今回までです」

 「え、もうガラテヤさんはカシムに来られないのですか!?」

 ガラテヤさんの言葉に驚いたのは、フェルエナさんでした。当然です。フェルエナさんはカシム新領主になるそうですから。

 「いえいえ、そうではありません。ジーラスの危険を犯すと言った部分が、もう危険が無いとまでは言えませんが大きく減ったという事です」

 「では、今まで通りに来てもらえるのですか?」

 「当然です。何よりも最大の危険である地竜ズムが居なくなったのです。これまで以上に使わせてもらいますし、昔の様に最大の交易ルートに戻るでしょう」

 ガラテヤさんの話では、カシムを通るルートは王国と帝国を結ぶ最短の街道だったが地竜ズムのせいで、かなりの遠回りのルートを今まで多くの商隊が強いられていたらしく。

 地竜ズムが倒された事が知られれば、直ぐに活気が戻るだろうとのことだ。

 聞けば、迂回ルートは十日以上日程が余分に掛かるらしい。

 ガラテヤさんの話に、フェルエナさんはとても嬉しそうだ。

 「ただ、カシムの立地は考える余地は出てくるでしょうな」

 「そうですね、帝国が大人しくしてくれれば良いのですけれど」

 ガラテヤさんの言葉に、何か思いつく事があるのかフェルエナさんは少し困った顔になる。

 「今、帝国と王国は安定した同盟国だ。そこまで心配する必要もあるまい」

 ジーラスさんの意見に、二人共頷く。

 「ま、不安要素はあるがな」

 このジーラスさんの言葉に頷いたのは、ガラテヤさんだけだった。

 フェルエナさんが内容を聞こうとしたが、ジーラスさんは確定していないと話すのを避けた。

 「お嬢様、カシムの村が見えて来ました!」

 御者台からセルルカさんが声をかけて来たので窓から外を見る。

 「村?」

 高さ三メートル程の石壁が村を覆っていた。

 「元は、街の規模はあったのですよ。地竜ズムが倒せず人の流出が激しかったので、今は村の規模まで落ちただけです」

 人口流出ですか?

 何処かで聴いたような話です。

 馬車はゆっくりと近づきます。

 門の周囲には、一つの人影もありませんが、馬車が止まるとバタバタと兵士さんが出てきました。

 「おぉ、ガラテヤさん、ジーラスさん久しぶりです!!よく来てくださいました」

 出てきた兵士さんは思っていた以上に若いです。

 「ゲルニア、久しぶり」

 「キルキスさんも相変わらず綺麗ですね」

 「ゲルニア、キルキスを口説くな。メシルに怒られるぞ」

 ジーラスさんの言葉に、若いゲルニアさんは照れ笑いを浮かべる。

 「それよりも朗報だ、地竜ズムが倒された」

 「え、ほ、本当ですか!?」

 「嘘を言ってどうする。証拠は後ろの馬車にある。来い」

 ジーラスさんは、フェルエナさんの馬車を降りゲルニアさんと後ろの馬車に向う。

 少しして聞こえてきたのは、ゲルニアさんの悲鳴だった。

 一先ず街の人に報告する為、頭だけ切り取って積んできたのだ。

 「ははは、やった。これで街も生き返る!!」

 戻って来たゲルニアさんは興奮気味だ。

 「ゲルニア、興奮するのもいいが仕事をしろ」

 「は、はい!!」

 ジーラスさんに注意されても、ゲルニアさんの興奮は収まらないようだ。

 「そういえばコチラの馬車は?ガラテヤさんの馬車にしては、行商に使う様な馬車ではないですよね」

 「ようやくか、まぁいい。フェルエナさま」

 ジーラスさんに呼ばれ、フェルエナさんは馬車を下りる。

 「これはまた、ガラテヤさんの妾さんですか?」

 「ゲルニア、流石にそれは失礼だ。ま、今迄が今迄だからな」

 フェルエナさんは一歩前に出る。

 「この度、カシムの村を含むイリス地方の領主を拝命しましたグランデア・フェルエナと言います。貴方は兵士長さんですか?」

 「フェルエナさま、このカシムに兵士長なんて居ません。村出身の兵士が数人居るだけです」

 「え、数人?」

 ありえないでしょうと、わたしでも思うがそれがココの現実らしい。

 「繁栄していた頃に、戦対策で頑丈な壁を造っていたので地竜ズムも流石に街には手をだ出ませんでした」

 でも、それだけです。

 と、ゲルニアさんは悔しそうに呟く。

 「それも変わるさ、それよりも新領主さまを館に案内してくれ」

 「あ、はい。ところで新領主とは何でしょうか?」

 「領主は、領主だろう?」

 「いや、領主なんて居なかったから、それに前の領主に見捨てられたと思っている人も多いです。では、ご案内します」

 カシムの街は、確かにレンガ造りの建物が並んでいて、村というよりも街の様相を見せてはいるが、人通りはほとんど見当たらない。

 ゴーストタウン化してる。

 人がいないわけではないけれど、建物が意外に綺麗に残っているだけに逆に寂しく見える。

 流れていく街並みを見ながら、フェルエナさんの表情は固くなっていく。

 「大丈夫?」

 そっとフェルエナさんの手を取る。

 「大丈夫よ、やるべき事があるのは良い事だわ。新領主として頑張らないと」

 「そういえばの領主とはいえ、立場的にはどうなるんだ?」

 立場的?

 「立場的には、私はグランデア家を離れ、新しくグランアブール家を設立します。ですのでグランデア家の支援は受けづらいですね」

 街道がいかに早く商隊が行き来するようになるかが、コレから最大の関心事だとフェルエナさんは話す。

 そうしないと資金がなく、様々な整備が出来ないらしい。

 お金か。

 手元には使う意味もないお金がある。

 妖怪には必要もないお金だ。

 ま、後で話すかな。

 今はまず領主の館を見ようと、窓の外を眺めた。



 おぉう。

 「幽霊館?」

 ゲルニアさんに案内された館は、街が以外に綺麗なのに対してボロボロだった。

 「一応、雨漏りなどはないはずです。窓や扉のガタつきはあると思いますが、隙間風なども問題ないはずです」

 「庭の雑草などは後にして、先ずは館内ですね」

 雑草を掻き分け館の玄関にたどり着く。ゲルニアさんの同僚が持ってきた鍵で玄関を開くが。

 ギィヤヤヤァァァ。

 不気味な悲鳴と共に扉は開く。

 「おぉ、何もねぇ」

 館は二階建てのレンガ造りで、確かに雨漏りなどの形跡はなく。只々、埃が溜まっていた。

 「ガラテヤさん、荷物は玄関でもよろしいですか?」

 「玄関ですが良いのですか?」

 「えぇ、誇りやチリだらけですが」

 「いえ、構いません」

 フェルエナさんの提案に、ガラテヤさんは直ぐに荷物を玄関に運び出す。

 人の行き来と、ジーラスさんたちが剣で雑草を刈った為に門から玄関に道が出来ていく。

 その間に、フェルエナさんとセルルカさんと一緒に部屋を見て回るが、見事に殆どの物がない。

 呆然としているフェルエナさんたちを置いて、わたしはガラテヤさんの元に走る。

 「おや、どうしました?」

 「ガラテヤさんは一度向こうの街に行くのですよね?でしたら、帰り荷が軽くなる」

 多くのドラゴンの部位を売ってくると言っていた。頭などの高価な部位は、王国ではなく高く売れる帝国に運ぶらしい。

 「その通りですね。何か考えが?」

 「分かっていると思いますが、ここには何もないです。ですので、ガラテヤさんやジーラスさんが見て必要と思った物を買って来てください。お金は」

 ガラテヤさんから貰ったドラゴンの代金を見せる。

 ガラテヤさんは袋から硬貨を一枚だけ取り出し、良い物を揃えて来ますよと笑った。

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